新型コロナウィルスの感染拡大による「心の問題」について

【前書き】
新型コロナウィルスの感染拡大により、首都封鎖も現実味が帯びてきました。
このような緊急事態においては、不安や疲れやすさなど心身に不調をきたす人が増えます。
今の緊急事態は災害時のものと似ており、災害時の心的変化については、これまでに多くの研究や報告がされており、その対処法についても分かっていますので、これまでの知見を活かしつつ、これから我々が取るべき対応について説明したいと思います。

【気をつけるべき症状】
 新型コロナウィルスの感染拡大、連日の報道、仕事がなくなるのではないかという不安やストレスによって、心身の疲れを感じている人が多くいると思います。
 ストレスを感じ続けることによって、うつ病にも似た症状、いわゆる「うつ状態」になることが知られています。

・イライラしたり、落ち着かない。怒りっぽくなる
・悲しみ、空虚感、絶望感を感じること
・楽しみや興味がなくなる。普段のように楽しめない
・自分のことを無価値に感じてしまう
・罪悪感を感じる(もっと自分は働けるのではないか、頑張れるのではないか…など)
・考えがまとまらない。もしくは、考えられない
・集中力が続かない、意欲がわかない
・決断ができない
・食事がとれない、もしくは食べ過ぎてしまう。吐き気
・眠れない、途中で何度も起きる、もしくは寝てばかりいる
・悪夢がつづく
・いっそ死んでしまいたいと思う

など多彩ですが、『普段と違い、調子が変だ』と理解してもらえれば、良いと思います。

 特に食事睡眠、希死念慮については注意が必要です。
 精神科受診をお勧めします。周りにそのような人がいたら、精神科受診を勧めてください。

【誰にでも起きる、正常反応である】
 このような状態は誰にでも起きる、正常なものです。心が弱い、甘えている、というのも関係がありません。僕は昔、自衛隊に所属していましたが、訓練や任務に臨む前には、何度もこのようなこと知識を事前に伝えられていました。
 なので、自分一人で抱えず、周りと協力しましょう。

【特に注意をすべき人】
#コロナ陽性で回復した人、風邪の人
被害者でありながら「自分が加害者である」という思いで、苦しんでいることが多いです。周囲の言葉も耳に入らないことが多いです。

#リーダー職、自営業、支援職の人
 緊急事態の時には、やらなくてはならない仕事が無限に湧き出てきます。
 強いプレッシャーの中、休むことを忘れて、仕事をしてしまいがちです。
 もしくは、仕事が手につかず、自分を責めることもあります。
 周囲から責められることもあります。
 きちんとチームを組み、個人に責任と仕事が集中しないようにしましょう。
 業務が多くなりすぎないように、互いに注意喚起しましょう。
 まずは自分の身を守ることを優先させましょう

#子供
 物事を正しく理解したり、判断する力の弱い子供は、大人がしっかりフォローしたり、分かりやすく説明することが重要です。
 ストレスを感じた子供同士はいじめに発展しやすいため、大人が注意深く観察することが重要です。

#高齢者
 心身の体力が落ちている高齢者は、うつ状態になりやすく、注意が必要です。
 もともと仕事もないため、孤立しやすく、うつを悪化させやすいです。
 離れたところに住む家族は、しっかり連絡をとり続けましょう

【どうすればよいか】

#心身の不調・罪悪感に気をつける
 これから誰にでも起きる、心身の不調について、注意を払いましょう。
 自分自身の調子が悪いとき、自分を責めるのは辞めましょう。
 これは誰が悪いわけでもなく、正常な反応なのです
 特に罪悪感については、自分で自分を傷つける行為であり、それによってさらに心身の不調を呼び、それが新たな罪悪感を生む…というループ現象を生んでしまいます。なので、罪悪感にも注意を払いましょう

#チームを編成しましょう
 仕事の業務や責任が個人に依存しないよう、チームで分担しましょう。
 大きな組織であれば、メンタルケアチームを編成するのも良いでしょう。
 互いに心身の不調について、注意喚起しましょう。
 緊急事態時には、無意識的に個人への非難に発展したり、いじめが生まれやすくなってしまいます。これは誰が悪いというものではなく、人間の正常な反応です。
 反対に、他の人を援助したり、協同的な働きをしましょう。相手のためのみならず、自分自身のストレス解消にも役立ちます

#正しい情報を受け、デマを避けましょう
 これらのストレスや不安は現実的な危険から生じるものでもありますが、正しい知識の欠如やデマによって増強されてしまいます。
 正しい情報を受け取り、デマを信じないようにしましょう

#長期戦の覚悟
 新型コロナウィルスの猛威は、ワクチンや治療薬が開発されるまで続く可能性があります。1年以上続く可能性もあり、心構えをしておくことも重要です

【参考】
ストレス・災害時こころの情報支援センター(2020/3/30)

早稲田メンタルクリニック院長として働く、現役精神科医益田裕介があなたの疑問に答えます!

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