【記者コラム:高木 恵】羽生結弦が夢をかなえるシーズンに
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北京五輪シーズンが始まった。気になるのは羽生結弦の今だ。
 コロナ禍前が懐かしい。夏のトロントでの公開練習で新プログラムが明らかになり、オータムクラシックで新衣装がお披露目になる。心の準備に若干の余裕があった。
 昨季初戦は12月の全日本選手権。10か月ぶりの競技会での姿だった。そこで目にし、耳にするすべてが新情報だった。ショートプログラムは「レット・ミー・エンターテイン・ユー」、フリーは「天と地と」。シーズン初戦で圧倒的な滑りを見せ、優勝。演技に驚き、試合後に明かした苦悩にまた驚いた。
 コロナ禍で拠点のカナダに戻れずコーチ不在、一人での練習が続いた。「どん底まで落ちた。自分がやっていることが無駄に思えた」。「そもそも4回転アクセルって跳べるのか?」と自問自答もした。「一人だけ暗闇の底に落ちていく感覚の時があった」。入ってくる他の選手の情報に焦りを覚え、取り残されている気になったという。
Video: https://youtu.be/Hd80xB4Z4Rg