新型コロナウイルスの感染爆発に見舞われているインド。とうとう、1日あたりの感染者数は世界最多となる40万人を突破してしまった。感染力が強いとされる「二重変異株」が猛威を振るう中、新たな変異株の発見がインド国内に激震が走っている。

 問題となっているのは、インドの細胞分子生物学研究所(CCMB)が発見した「N440K変異株」だ。最初に確認されたインド南東部アーンドラ・プラデーシュ州の頭文字を取って、「AP変異株」とも呼ばれている。

■潜伏期間が短く、3~4日で重症化

 衝撃なのが、その感染力の強さだ。地元の英字日刊紙「ザ・ヒンドゥー」(4日付)は〈AP変異株は初期の変異株より、少なくとも15倍も毒性が強い〉と報じ、ヤフーニュース(英語版)も〈二重変異株より強毒かもしれない〉と、危機感をあらわにしている。特徴としては潜伏期間が短く、感染すると3~4日で重症化する恐れがあるということだ。

 N440K変異株は、二重変異株や英国型に取って代わられつつあるが、現地の専門家が先月30日に公開した論文(査読前)からも感染力の強さがうかがえる。ハーバード大学院卒で医学博士の左門新氏(元WHO専門委員)が論文を読んだ上で、こう解説する。

 「N440K変異株が人に感染しやすいかどうか、ウイルスの『複製力』と『感染力』の2つの指標で論じています。実験ではN440K変異株の感染力が、それ以前の株に比べ10~1000倍高い。ただし、この数字がそのまま人の感染に当てはまるわけではありません。およそ1年前は複製力の強いウイルスが席巻していたが、その後、感染力の強い変異株に取って代わられたことが論文から分かります。N440K変異株は複製力が弱い一方、感染力は強いとみられます」

 ウイルス量が少なくても、感染力が強ければ感染しやすい。複製力と感染力は必ずしも比例しないわけだが、この2つの“能力”に秀でた変異株が出てきたら厄介だ。

 「この先、心配されるのが、世界で接種が進むワクチンが効かない変異株の出現です。新たな変異株に対応したワクチンに作り変えるのは簡単ですが、認可までに時間を要します。それだけ集団免疫の獲得に手間取るわけです」

 次は一体、どんな変異株が出てくるのか。