第2回 松本潤(嵐) 同世代の女優陣と切磋琢磨しながら大河俳優に成長
  この連載は、たのきんトリオからSixTONES、Snow Manまで、歴代のジャニーズ事務所所属者(または元所属者)が映画やテレビドラマで共演した女性アイドルの傾向や歴史的意味合いなどを分析していくものである。つまり、男性アイドルを語りつつ、“その共演者”という視点で女性アイドルの歴史も併せて紐解く内容だ。
 なお、女性アイドルの定義はアバウトなものとするが、データの膨大化を避けるために年齢制限を設け、対象作品を原則的に男性アイドルが25歳までに出演した映画、テレビドラマに限定する。
 連載第2回は、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』に徳川家康役で主演することが決まり、さらに主演ドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系)の映画化が発表されるなど、嵐活動休止後の俳優活動が順調な松本潤と、その2009年8月までの共演女性アイドルを取り上げたい。
初遭遇女性アイドルは深田恭子と加藤あい
 松本潤の初主演作は、ジャニーズJr.時代の1998年に公開された松竹系映画『新宿少年探偵団』である。この作品は、当時、同じくジャニーズJr.のメンバーだった相葉雅紀(のちに嵐)、横山裕紀(のちに関ジャニ∞)とのトリプル主演という名目だった。
 90年代後期のジャニーズ事務所にはCDデビュー済みのグループ数が少なかったこともあり(少年隊、SMAP、TOKIO、V6、KinKi Kidsのみ)、ジャニーズJr.のメディア露出は今より格段に多く、主演映画の全国公開も自然な流れだった。
 この作品で松本らと共演したのが、ドラマ『神様、もう少しだけ』(1998年/フジテレビ系)に出演直前の深田恭子と、「docomo」のポケベルCMでブレイクする前夜の加藤あいだ。同い年で同時期にアイドルとして人気を得る両者だが、決定的な違いがある。
深田は1999年に『最後の果実』という曲でCDデビューしているが、加藤は歌手経験ゼロなのだ。つまり、90年代の終り頃から、音楽活動がアイドルの必修科目ではなくなっていたのだ。
 嵐が結成されたのは1999年のこと。以後の松本は積極的な俳優活動を展開していく。2001年には、KinKi Kidsの堂本剛より『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)の主人公・金田一一役をバトンタッチされた。そして、相手役の七瀬美雪を演じたのは、ドラマ『青い鳥』(1997年/TBS系)などの出演実績があった鈴木杏だ。
 以後の松本は、『ごくせん』(2002年/日本テレビ系)で仲間由紀恵、『きみはペット』(2003年/TBS系)で小雪と年上女優との共演が続く。ただし、『きみはペット』には、元カノという設定の登場人物がいた。演じたのは、前年の「ホリプロタレントスカウトキャラバン」グランプリを受賞者である石原さとみだ。のちのトップ女優は、これがテレビドラマ初出演作だった。
若き松潤の共演アイドルの多くは現在も第一線で活躍中
 20代前半の松本にとって代表作といえるのが、道明寺司を演じた『花より男子』(2005年/TBS系)だろう。続編や劇場版も制作されたこのシリーズでは、主人公・牧野つくしを演じた井上真央との共演が人気を集める。
 子役出身の井上は、『花男』の成功で大きくランクアップを遂げ、2011年にはNHK連続テレビ小説『おひさま』のヒロイン、同年末の「NHK紅白歌合戦」で紅組司会を担当。さらに2015年にはNHK大河ドラマ『花燃ゆ』に主演した。
 男女問わずアイドルにとって、“何歳まで高校生を演じるか?”というのは大きなテーマで、当連載でもそれを度々ネタにすることになるだろう。松本の場合は、23歳で公開された映画『僕は妹に恋をする』(2007年)が実質最後の機会だった。
この作品で相手役を努めたのは、雑誌『Seventeen』(集英社)の人気モデルだった榮倉奈々だ。その榮倉も翌年にNHK連続テレビ小説『瞳』のヒロインに抜擢されるなど、松本との共演を飛躍のきっかけにした。
 松本はまた、黒澤明監督作品『隠し砦の三悪人』(1958年)のリメイク作『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008年)で長澤まさみと、25歳の春の主演ドラマ『スマイル』(2009年/TBS系)で新垣結衣と共演している。
 こうして振り返ると、松本の共演者には、10代でアイドル的な人気を得て、30代になった現在も第一線で活躍する女優が多い。深田、石原、榮倉とは互いに年齢と経験を重ねた上で再共演を果たしているが、まだ主役以外のキャストが発表されていない『どうする家康』でも、そうした過去の共演ヒロインとの再会があるかもしれない。