日本人は知らない大坂なおみの3つの側面「日本国籍はむしろプラス」「起業・投資に興味津々」

日本人とアメリカ人どちらだと思っていますか?」「このあともカツ丼を食べますか?」「もうちょっと笑える?」 記者たちの質問がつくりだす喧騒をものともせず、彼女はラケットを振り続ける。最後には人差し指を口に近づけて、静かにするよう指示する。

 そしてキャッチコピーの登場。「世界を変える。自分を変えずに。」。年間1,000万ドル契約と噂されるNikeキャンペーンは、国際社会における大坂なおみのイメージを見事に捉えた映像だ。

賞賛を呼んだライバルへの返信

「大坂なおみの自信と謙虚さの絶妙なるバランスは、多くの大人には決して真似できない代物だ」(Vogue)

大坂なおみはアメリカでも非常に人気のあるテニス選手だ。知名度が上昇したきっかけは、もちろん2018年全米オープン決勝戦。対戦相手セリーナ・ウィリアムズと審判のあいだで激しい口論が起きたためブーイングに包まれるグランドスラム初優勝となったが、そこで冷静さと礼節をもって対処した姿にも注目が集まったのだ。

 ウィリアムズの謝罪メールへの哲学的な返信も賞賛を呼ぶ(ウィリアムズの審判への抗議について、「人々は強さを怒りと誤解することがある。2つの区別がつけられないから」と返信し、慰めていた)。こうして瞬く間に尊敬を集めた大坂は、アメリカの人気TV番組や一流雑誌からひっぱりだこな新星スターとなった。同試合で使用したラケットは1.5倍も全米売上をのばしたそうだ。

日本人の知らない側面1:静かで謙虚なスーパースター

「ネクスト・セリーナ」と見立てるメディアもあったが、両者は正反対のキャラクターと言えるだろう。北米において、黒人女性差別問題にも果敢に取り組むウィリアムズは偉人然としたスーパースターだ。

一方、大坂なおみは、静かで謙虚な人物として受け止められている。TIME誌が「謝りすぎるほど謝る」と書いたこともあったし、英Telegraphに至っては「風変わりな新種スター──学園映画で例えるなら、食堂の端っこに1人で座っているオタク生徒、だが我が道を行くために独特の敬意を払われている」と評している。

 同時に今どきの若者らしい親しみやすさもはずせない魅力だ。グランドスラム優勝後もゲームやジョークを楽しむその姿は、ソーシャルメディアで若者を中心とするファン層を形成している。

「正直で礼儀正しく謙遜的な大坂なおみほど、グローバルで多文化な未来を象徴するテニス・チャンピオンはいません」(クリス・エバート、TIME100への寄稿文)

日本人の知らない側面2:多様なルーツにマーケターが大喜び

 2019年10月には日本国籍を選択したが、そのことがアメリカでネガティブに働く可能性は低いだろう。日本を含める多様なルーツこそ、人気の要因になっているからだ。ハイチのルーツを持ち大阪で生まれ幼少期より米国で育った大坂なおみの多文化的な側面は、主要メディアにおいて「次世代の象徴」として賞賛されることが多い。

欧米メディアが大坂なおみを評す際のもう一つの決まり文句は「マーケターが大喜びする存在」といったもの。多様なルーツを持つ大坂は、日米ハイチのみならずさまざまな地域で支持を獲得できるポテンシャルがある。マーケティング業界からすれば「さまざまな地域で収益を見込めるスター」となるわけだ。

 事実、彼女をグローバル・ブランドアンバサダーに起用したMastercardは、契約に際して「日本のみならず世界中の若き人々にインスピレーションを授ける選手」と讃えている。大坂本人は、ルーツについて問われても「私は私」と返しているのだが、その姿勢も、複雑なアイデンティティを生きる若者やマイノリティ層からリスペクトを得る要因だろう。
「私のような人が頂点に立つのは見たことがない」
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