暖冬の今年は冬眠明けのクマが早くも餌(えさ)を求めて人里に近付いているようです。クマの目撃情報が急増する町では生ごみをあさるクマの親子が現れ、警察が出動する騒ぎになりました。

■冬眠明け…親子グマが“エサ探し”

 冬眠から明けた親子のクマ。木に登って子グマが母グマに甘えています。以前、福島市の山の中で植物を食べている姿を鮮明に捉えた貴重な映像です。

 ツキノワグマは、通常12月から4月まで冬眠するとされていて、巣穴から出てくるのは暖かくなった春です。ところが今年は、すでに各地でクマの出没が相次いでいます。

■冬眠明け?クマが“生ごみあさり”

 取材班は今年度、クマの目撃が7倍以上に急増している町へ。新潟市に隣接する新発田市です。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん(75)
「何だか、そこら辺にいたみたい。すごかった。バケツが2つあったが私が片付けた」

 渋谷笑子さんの自宅の畑に7日の朝、クマが出没したといいます。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「(Q.バケツがひっくり返っていた?)こことここ、ひっくり返された」

 まだ雪が、うっすらと積もる畑にバケツが置かれています。ところが…。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「こうなっていました」

 この場所にクマがいるのを近所の人が目撃していました。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「『ねえ、お母さんクマがいたよ』って。え?警察官が2人来てカメラで撮って、雪の所を見たら『2頭いるみたい』と。親子か分からないけど」

■親子グマと遭遇…“恐怖の瞬間”

 早朝に犬を散歩中、親子のクマとみられる2頭を目撃した男性が恐怖の一部始終を語ってくれました。

クマを目撃 近隣住民
「午前5時半、薄暗い時に家の前に出たら20メートル先に大きい物体が横切って走っていった。ずさーん、ずさーんと雪を踏む音で走ってきた。私、身長が1メートル80センチくらいあるが、それくらい大きいのが走っていったように見えた」

 母グマでしょうか。近くには子グマの姿も…。

クマを目撃 近隣住民
「警察に電話して(クマに)近付いていったらクマがごみを食べていた、散らかして。小さかった。明らかにはっきりと見た。子グマなのかな、体長1メートルぐらい。その横でやぶが揺れていたので、親グマがいたのかと思うと、今考えると怖い」

■冬眠明け?親子グマ“生ごみあさり”

 クマはバケツをあさり、生ごみを食べていたといいます。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「今までこんなことなかったから、びっくりした。食べるものがないから(人里に)下がってきたのかなと」

 バケツが置かれていた場所には、土の中にカボチャやサツマイモなどが埋まっています。家庭で出た野菜くずを畑の養分にするためバケツの中に入れ、処理していました。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「土を掛けてビニールを掛けて石を置くと(野菜くずが)土になる。ダイコンの皮、ニンジン、タマネギの皮、あとキャベツ、ハクサイ」

 畑の近くにはクマが潜むことができる竹やぶや移動することができる川が流れています。生息する山間部から人里に下りてきたとみられます。

自宅にクマが出没 渋谷笑子さん
「そっちの方も竹林。川まで、ずっとあそこまで。私またクマが来るかと思って。おっかなくて」

 1月にはクマの足跡があった住宅を取材中、緊迫の事態に。目の前の道路を子グマが横切っていくのを運転手が目撃していました。

 新発田市では昨年度、クマの目撃情報は4月から8月までの19件で、9月以降はゼロでした。ところが今年度、4月から12月までで128件。今年に入り、目撃がなかったのは2月だけで、合計136件です。

 クマ出没マップで見ると、その差は一目瞭然。今年度は実に7倍以上にも上っていて、住民たちは厳戒態勢です。

近隣住民
「やっぱり怖いですね。朝とか晩になるべく出ないようにしている。近所の人に声を掛けて、なるべく早く家に帰るように」

■人里に次々…冬眠明けのクマ目撃

 なぜ、この時期にクマが人里に出没しているのでしょうか。その謎を解く鍵は映像の中に隠されていました。

 福島市の山の中で親子のクマが食事している姿を捉えた貴重な映像。撮影したのは35年以上クマの観察を続ける猟師の丹野一好さんです。クマは木に登って何を食べているのでしょうか。

クマを35年観察 丹野一好さん
「4月ごろになると“ネコヤナギの芽”が出る。クマが冬眠から明けてネコヤナギの新芽、葉っぱを一番最初に食べる」

 クマは冬眠中に出産し、その後、親子で巣穴から出てきた後、春に芽吹くヤナギやブナの新芽などを食べるといいます。

クマを35年観察 丹野一好さん
「4月から5月にかけて(子グマが)ある程度、大きくなってから“越冬穴”から出て、親の後をついて親が食べているものを学習する」

 母グマのすぐ近くで子グマが上手に木を登っています。子グマは母グマの行動を見て木登りの方法や餌となる食べ物を学んでいるとみられます。ところが、今年は暖冬の影響などで冬眠から目覚める時期が早まっているとされるなか、山にはクマが食べるものがまだ少ないといいます。

クマを35年観察 丹野一好さん
「もう少し経たないと、3月末にならないとネコヤナギの芽は出てこない。餌不足で人間の食べ物を探しているのでは」

 今後も食べ物を求めてクマが人里に出没する恐れがあり、注意を呼び掛けています。

クマを35年観察 丹野一好さん
「お互いの距離を取っていれば襲ってくることはない。やぶには近寄らない。近くにクマの痕跡があれば近寄らない。後ろ向きで走って逃げない。後ろ向きだと襲ってくる。間違いなく」
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