北九州市の武内和久市長が下馬評を覆して当選、市長に就任してから20日で1年。就任直後に決定したのが、北九州空港の滑走路の3000メートル延伸でした。「悲願」とされてきた延伸がなぜすぐ決まったのか、その背景と今後の課題を取材しました。

◆“北九州空港大作戦”打ち出す市長
北九州市 武内和久市長「“北九州空港大作戦”ということで、北九州空港の持っている底力・ポテンシャルを最大限発揮していく」

就任から1年の20日、「北九州空港大作戦」を掲げ、空港の稼ぐ力を高め、ヒトとモノをもっと呼び込み発展をけん引していく考えを示した武内市長。RKBの取材に対し、この1年の成果として第一に挙げたのが、北九州空港滑走路の3000メートル延伸の決定です。

武内市長「この1年間の大きな成果の一つ目が、まず北九州空港の滑走路3000m化を決定して着工したということです」

“九州で唯一の24時間空港”として運用されている北九州空港。現在2500メートルの滑走路が3000メートルになれば、大型機での北米やヨーロッパとの長距離運航が可能になることから、延伸は長年の悲願とされてきました。

◆就任1か月後に国は延伸を決定 その訳は
国土交通省が3000メートル延伸を決めたのは、武内市長の就任から1か月後でした。なぜこのタイミングだったのでしょうか? 自民党の関係者は、「市長選で肩入れした出身官僚が敗北したことを受けて、国土交通省が考慮した」との見方を示しています。

1年前の市長選で自民党や立憲民主党など与野党が相乗りで担いだのは、国土交通省の元官僚、津森洋介氏でした。

北九州市 北橋健治市長(当時)「空港の問題、物流は津森さんが得意のフィールドであります」

その元官僚、「滑走路の延伸をできるのは自分だ」と主張していました。

津森洋介氏(2023年1月)「空港の3000メートル化、港湾環境の整備。交通インフラの整備を国土交通省、国にあってしっかりやっていかなきゃいけないと思っています。これができるのが私、津森洋介です」

応援する自民党の北九州市議らも、滑走路延伸をスピーディーにできるのは国交省の元官僚しかいないなどと声高に宣伝していましたが、不利だとする大半の見方を覆し、武内氏が7区全てで勝利して当選しました。

北橋前市長が1年あまり会っていなかった国土交通大臣に、就任4日後に面会した武内市長。滑走路の延伸決定は「官僚時代から培ってきた人脈などが功を奏した」と話します。

北九州市 武内和久市長「選挙中から、当然私が市長になったら、いの一番に空港の滑走路をやるぞという思いでおりましたし、その思いで就任してすぐ動いた。国土交通省に行ってみると、『選挙は選挙、しっかり未来に向かって一緒に北九州市と国とやっていこう』と。かつての官僚時代の仲間が今幹部になっていたので、皆からあたたかいエールを一杯いただいて、すぐ大臣にも会わせていただいた」

◆流通関係者「かなり期待」
滑走路の延伸工事は去年12月に着工し、供用開始は2027年8月の予定です。貨物専用機の就航も決まっている北九州空港。滑走路延伸に期待の声も上がっています。北九州空港に隣接する倉庫に、輸出する半導体関連の貨物約500トンを梱包して保管している物流業者。滑走路の3000メートル延伸で貨物専用機が多く就航し、「取り扱う貨物の量は増える」と期待しています。

福岡トランス 小海衛常務「24間空港というのも珍しいし、北九州市は非常に航空・海上・鉄道とコンパクトにまとまった街なので、使い勝手は当然いいと思います。そういう意味ではかなり期待しています」

◆アクセス強化でバス増便へ
一方で、改善すべき課題がアクセスの問題です。

北九州市民「便も少ないと聞くので、そこまで北九州空港ではなくても。小倉まで出るのもちょっと距離があるので、そこを考えると北九州空港じゃなくてもいいかな」
「(バスが)集中することがある。乗る時間で増えればいいかな」

新年度予算案に、北九州空港と最寄りの朽網駅や小倉駅をつなぐエアポートバスを増便する費用などを盛り込んだ武内市長。空港へのアクセス強化などに「スピード感を持って取り組む」としています。

北九州市 武内和久市長「北九州空港という宝を存分に生かしていく。そのためにアクセスの強化、空港島・空港施設の機能強化、路線の誘致、この3本柱で進めていきたいと思います」

「稼げるまち」の実現に向けて突き進む武内市長が、北九州市を再び飛躍させることができるのか。北九州空港を活用できるかが、そのカギの一つとなりそうです。