身代わり忠臣蔵

監督/河合 勇人(かわい はやと)
俺物語!!(15)
チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜(17)
総理の夫(21)

全裸監督(19)Netflix

出演
ムロツヨシ
永山瑛太
川口春奈
林遣都
森崎ウィン
北村 一輝(きたむら かずき)
柄本明

森七菜(ナレーション)

原作者の土橋 章宏(どばし あきひろ)が脚本に手掛けている
土橋 章宏(どばし あきひろ)といえば、
「超高速!参勤交代(14)」
「超高速!参勤交代 リターンズ(16)」
「サムライマラソン(19)」
「引っ越し大名!(19)」
など江戸時代の史実をコミカルなフィクション小説の原作や映画化脚本の経験があるため
今作でもその才能を見事に発揮しており、忠臣蔵を知っていれば、知っているほどこの作品の
フィクションでありながらも、「忠臣蔵」に着地させる展開は見事!としか言えない展開になっている

「忠臣蔵」といえば「仇討ち」の代名詞にもなっているほどの知られる物語だが、
三国志で言えば「三国志演義」の立場にあたる

実際は「赤穂事件(あこうじけん)」といわれているもので
浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)が、江戸城松之大廊下で、吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)に斬りかかった理由などは明確になっていない…とされている
浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)は即切腹を命じられたといわれている。

「忠臣蔵」では浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり)が吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)から賄賂を要求されたが拒否した事で吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)から嫌がらせをうけていた…となっている
この時点で、フィクションというか、脚色がなされている物語であることをふまえておくことが大切かもしれない

この忠臣蔵は過去にも様々な形で映画化されている
自分が観た限りでも

忠臣蔵(58)
 市川雷蔵も出演している作品
 を皮切りに
四十七人の刺客(94)
最後の忠臣蔵(10)
決算!忠臣蔵(19)
などを観てきているが、歌舞伎などではなんども舞台化されているし、TVドラマでも年末になるとOAされる定番コンテンツでもあるので、過去作もぜひ観てみると、面白さは増すかもしれない。

story
嫌われ者の殿・吉良上野介(ムロツヨシ)が江戸城内で斬られ、あの世行き!
斬った赤穂藩主は当然切腹。だが、殿を失った吉良家も幕府の謀略によって、お家存亡の危機に!! そんな一族の大ピンチを切り抜けるべく、上野介にそっくりな弟の坊主・孝証(ムロツヨシ)が身代わりとなって幕府をダマす、前代未聞の【身代わりミッション】に挑む!
さらに、敵だったはずの赤穂藩家老・大石内蔵助(永山瑛太)と共謀して討ち入りを阻止するというまさかの事態に発展!? 幕府に吉良家に赤穂藩も入り乱れ、バレてはならない正体が…遂に!?

ムロツヨシ主演映画にハズレ無し…
と個人的に思うのだがどうだろうか?
福田雄一監督作品には欠かせない俳優であり、コメディ俳優のイメージを持っている人も多いかもしれないが、
実際にはかなりの演技派俳優だとも言える

彼の演技のコミカルさは天才的であり、面白さにかけては申し分ない映画であるものの、
この
「身代わり忠臣蔵」は バディ映画であり、成長物語であり、感動作でもあるという、見事なシナリオ展開とムロツヨシ、永山瑛太の見事な演技力によって完成度が高い1本となっている

そして永山瑛太だが、
予告編では、やる気がないダメ家老のような字幕などもあったが、この作品では「忠臣蔵」と「史実の」中間のポジションというかお家復興派と仇討ち派の間を取り持つ中間管理職的立場に苦悩する部分を見せてくれる
そのコミカルさあふれる冒頭の昼行灯から、部下たちをたしなめ苦労する中盤からからの演技のメリハリは見事

永山瑛太の演技の巧さは昨年公開された 
「アンダーカレント」のダメもと夫役でも観ることができるし、同じく昨年話題となった「怪物」でも観ることができる

そして出演シーンが多くないのに印象的なのが若手の2人
林遣都と川口春奈

林遣都は近年メキメキと知られる映画に出得しているが
今作でもとても良いポジションで出演している。
演技力もしっかりと身についてきていて、主役でも脇役でもこなせる、映画界には欠かせない俳優なのではないだろうか?

川口春奈もポイントポイントで出演だが、柔らかな存在あふれる役どころを見事に演じている

映画としては「忠臣蔵」をどれだけ知っているか?で評価が上下するかもしれないが、
それを抜きにしても、ムロツヨシの演技力ですべて持っていく部分もある

そうでありながらも、立場からの僻み根性全開だった吉良孝証(たかあき/ムロツヨシ)が、殿様という組織のトップになったことで、人として成長する部分もしっかりと描かれている

さらに大石内蔵助(永山瑛太)との友情物語も組み込むなど、見どころポイントは多岐にわたっている
これだけ多岐にわたれば、一歩間違えればぐちゃぐちゃになりかねないシナリオを見事にまとめているし、それぞれのキャラクターの色合いが強すぎるのに、ぶつかることも少なくうまく混ぜ込んでいるのは見事

さらに
柄本明が演じた柳沢 吉保(やなぎさわ よしやす)のいやらしさ、腹黒さのうまさが、ムロツヨシのコミカル演技のあとに入ったりすることで、バキっとスクリーンを締める効果は絶大である。

そして思いの外良かったのが、ナレーションの森七菜
こういった歴史を舞台にした映画の場合、説明が必要なのだが、状況や環境をわかり易く説明をナレーションでしてくれるのが、淡々と語る彼女の声質は、観る側にとって聞き取りやすく、わかりやすいナレーションだった。

クライマックスの町中での、あのスポーツをベースにした展開は賛否が出るところだと思うが、それを差し引いても
コメディー映画として楽しめる中に、ほろりとするバディ展開に満足の1本である