「今は障害だとは思っていなくて、個性が強い子だと受け入れています。自分は自分で気持ちが強くなったなと思いますね。悩んでも何も変わらないので、考えついたのが本人のやりたいことのサポートをするということでした。たとえば絵なら好きなだけ描かせますし、最低限人に害を加えないことを理解してくれていたらいいかなと思っています」

愛川さん親子にとって、関係のキーは“受容”と“愛情”なのだろう。今では噛みつきなどの症状も落ち着き、家族でのコミュニケーションも増えてきている。そんな中で愛川さんは、息子の障害をオープンにすることを大切にしている。それは自身がサポートを受けるためだけでなく、その発信で救われる人がいると信じているからだ。

「自分が悩んでいる時、自閉症について発信している人や明るい情報がなかったのが不安を大きくさせました。だから私たち親子の日常を、明るい情報として発信できたらいいのかなと思います。療育センターの予約が全然取れない状況を見ても、悩んでいる人はたくさんいると思うんです。同じ境遇の親御さんには、まずは目の前の子どもを可愛いと思って、愛情を注いでほしいですね」

不安や葛藤があるからこそ、人は大きく成長することができる。それは親子関係も同じなのかもしれない。ありったけの愛で結ばれた愛川さん親子の成長は、世の中の悩める親子にとって道標となり得るだろう。

「普通」とは何か、愛情の注ぎ方とはいったい――。自閉症である5歳の息子と向き合い、成長を続けるひとりの母親がいる。