AIエージェンティックコマース(AI Agentic Commerce) とは?(AIコマースとオンラインペイメント第1部 第3回目)

2026年10月2日8:15

和田 文明

プロフィール

キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材

AIコマースとオンラインペイメント (第1部)の3回目は、“AIエージェンティックコマース(AI Agentic Commerce)とは何か”について、さらに掘り下げて説明してみたい。

AIコマースとオンラインペイメント 第1部(9月~10月)

AIコマースとオンラインペイメント 第2部(11月~12月)

Index(目次)
1、AIコマースとVisa
2、AIコマースとMastercard
3、VisaとMastercardのAIコマース戦略の比較
4、AIコマースとStripe
5、AIコマースにおけるデジタル財布の機能と役割

エージェンティックコマース(Agentic Commerce)

エージェンティックコマース(Agentic Commerce)とは、消費者がECサイトを検索して商品を選ぶ従来の形態を超え、高度な自律性を持つAIエージェント(AI Agents)が、ユーザーの意図を汲み取って商品の検索・比較・価格交渉・決済・購入後の管理までを自律的に代行する次世代の取引形態のことである。

従来のAIコマースが、人間に対するレコメンデーション(おすすめ提案)やチャットボットによる購買サポートに留まっていたのに対し、エージェンティックコマース(Agentic Commerce)は意思決定と実行の主体が“人間”から“AIエージェント”へと移行するという点で、ECの歴史における最も劇的なパラダイムシフトと位置づけられている。

2025年末から2026年にかけて、OpenAIやStripe、Visa、Mastercardなどのグローバルテック・金融企業が本格的なインフラ(Agentic Commerce Suiteなど)をリリースしたことで、概念の実装化が大きく進んでいる。

エージェンティックコマース(Agentic Commerce)のテクノロジー的アーキテクチャ

エージェンティックコマース(Agentic Commerce)は、単一のLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)だけでなく、(表)の4つのレイヤーからなる高度なコンポーネントによって駆動する。

(表) 4つのレイヤー

ペルソナ&プロファイル(記憶・文脈)層

・ユーザーの購買傾向、予算、サイズ、アレルギー情報、過去のブランド嗜好に加え、スマートウォッチなどから得られる現在の健康状態やライフスタイルといったリアルタイムのコンテキスト(文脈)を保持・解析する

プランニング

(推論・計画)層

・LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)をベースに、ユーザーの曖昧な要求から具体的な購買タスクをブレイクダウンし、スマートカジュアルな服を一式揃えてという指示に対し、訪問先の天気予報を調べ、TPO(時(Time)、場所(Place)、場合(Occasion))を定義し、必要なアイテム(服装など)のリストを自律的に作成する

ツール・API利用

(外部連携)層

・AI(人工知能)がインターネット上のWebサイト、ECプラットフォームのAPI(Application Programming Interface)、価格比較エンジン、レビューサイトに自律的にアクセスし、構造化・非構造化データを収集・評価する

アクション

(決済・実行)層

・あらかじめユーザーから付与された権限と予算の範囲内で、FinTechプラットフォームと連携し、トークン化されたセキュアなM2M決済(マシン・ツー・マシン決済)を実行する

B2C・B2Bビジネスにおける劇的な変革

こうしたエージェンティックコマース(Agentic Commerce)のテクノロジーは、売り手(リテール企業)と買い手(消費者・企業)の関係性を根本から変えつつある。