OpenAIの直接のライバルであるAnthropicが昨日、かなり話題を呼んだ研究ブログ記事を公開した。同社のモデルClaude Mythos Previewが、2年間の人間によるレビューでは発見できなかったポスト量子署名スキーム「HAWK」の脆弱性を、わずか60時間で見つけ出したという。
ポスト量子暗号とは、将来の量子コンピュータに対して耐性を持つよう設計された新しいアルゴリズム群のことだ。量子コンピュータは、いつの日か現行の暗号の一部を破ってしまう可能性がある。米国の標準化機関であるNISTは、こうした標準を策定するための公開コンペを長年にわたって開催しており、HAWKはデジタル署名(メッセージが確かに本人から送られたことを証明する仕組み)の部門で第3ラウンドに進んでいる。
ただし、AIが実際に破ったのはHAWK-256、つまり研究者たちが攻撃するために用意されたチャレンジ用のパラメータであり、実用を想定したHAWK-512やHAWK-1024ではない。この攻撃により、鍵の復元にかかるコストが2の64乗から2の38乗演算まで下がることになるが、それはどこにもデプロイされていないスキームにおける実効鍵長を半分にするだけの話だ。

もう一つの成果として挙げられているのが、7ラウンドに削減したAES-128に対して、従来の最良手法より200〜800倍高速な攻撃だ。AESは世界で最も広く使われている暗号方式で、ブラウザ通信やバックアップ、ハードディスクの保護にも使われている。
「ラウンド」とはデータの撹拌処理を一回行うことで、AES-128はそれを10回繰り返す。暗号研究者たちは昔から、本物の暗号の安全マージンを測るために意図的に短縮したバージョンを攻撃してきた。つまり7ラウンドというのは、あくまで学術的な演習に過ぎない。
その弱体化バージョンに対してすら、この攻撃には攻撃者が選んだ約2の105乗件ものメッセージを暗号化させる必要があり、そんな量のデータを誰も集められるはずがない。Anthropicも明記している通り、本番稼働中のシステムへの影響はゼロだ。
本質はそこではない。モデルが「メビウスの橋」と命名したAESへの攻撃手法は、約10万ドルの計算コストをかけてほぼ自律的に3日間作業した末に生まれたものだ。その後、人間の研究者たちが数百時間かけて検証を行い、攻撃が正しく成立していることを確認した。この確認作業ができるのは人間だけだった。
なお、Anthropicは6月の時点でHAWKの作者たちに報告済みで、NISTとも連携して公開タイミングを調整している。暗号管理を専門とするKeyfactorは、これを評価プロセスがきちんと機能している証拠と見ており、標準が世界中に普及してしまってからよりも、今のうちに弱点を発見できた方がずっと良いと述べている。
AIが単独で暗号の脆弱性を発見するのは、正直なところ本当に印象的だ。でも「世界の暗号が終わった」みたいな煽り見出しは、まったくそうじゃない。
ソース:
Anthropic
この記事にはAIで生成された画像が含まれている場合があります。どの記事にも細心の注意を払っていますが、もし間違いを見つけたら、ぜひ教えてくださいね!