AnthropicとOpenAIがコーディングツール開発にこだわる本当の理由。顧客囲い込み戦略は奥が深い | Business Insider Japan

AI開発の今後の展望と、それが私たちのような一般ユーザーにどんな変化や影響を及ぼすのか、コルヴィン氏に直接話を聞く機会がありました。その内容をぜひ読者の皆さんに共有させてください。

【Q1】アンスロピックやオープンAIなどトップ研究開発企業との協業のなかで、戦略の変化あるいは進化をどう見ている?

1年前、両社にとって最大の関心事は売上高でした。とにかく自社モデルを使って推論処理を実行してもらえれば何でも良かったわけです。

けれども、新規株式公開(IPO)を目指すとなれば話は別で、利益率が非常に重要になってきます。そして、利益率を改善する必要があるのなら、モデルの性能や品質だけで競争するのは得策ではありません。

なぜなら、最高のモデルをトレーニングするために莫大な資金を投じる必要があるだけでなく、大枚をはたいて完成させたそのモデルを使った推論処理を、今度はなるべく安く提供せねばならないというパラドクス(逆説)があるからです。

そんなわけで、両社はいまモデルの品質とは無関係な形で顧客を囲い込むことに全力を注いでいます。コーディングツールの『Claude Code』や『Codex』のような製品はそうした文脈に位置づけられるものです。

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【Q2】オープンAIとアンスロピックはモデルの性能や品質に依らない形で、どんな成功を目指している?

Claude CodeもCodexも、月額200ドルの「Pro」プランを契約したユーザーが、実際には数千ドル相当の推論タスクを実行できるようになっている仕組みは明白。市場シェアを拡大して、とにかく多くのユーザーを獲得するのが狙いなのでしょう。

もしかしたら、もっと深い計算があるのかもしれません。顧客企業が(AI生成の)巨大なコードベースを抱えると人間の手では管理できなくなりますが、むしろそれが目指すところなのかなと。

つまり、AIに一晩で2万行のコードを生成したとして、AIモデルならそのバグ修正にも対応できますが、人間にはもはやメンテナンス不可能な分量なので、結果としてアンスロピックやオープンAIのコーディングを使い続けざるを得なくなる。それが狙いで、顧客企業がツールから逃れられなくなったところで価格を引き上げる可能性もあります。

【Q3】アンスロピックとオープンAIのコーディングツールは今後どう変化していくと思いますか?

個人的な予想ですが、両社は間もなくこう言い出すと思います。

「企業向けサブスクリプションでご利用の場合、従来のコード生成機能やコーディングエージェント機能をお使いになれるだけでなく、コード生成時のあらゆる(人間とモデルの)やり取りの履歴を保存します」

そうなれば、コードが生成された時点での意図をあらゆる行について参照できるデータベースが手に入ることになります。非常に便利で、コーディングエージェントの作業精度も向上します、そうアンスロピックとオープンAIは主張するでしょう。

そして、次に来るのはこうです。履歴保存機能は無償で提供しますが、データのエクスポートはできません、と。そうなったら、もう会社全体が囲い込まれたのと一緒です。

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【Q4】流れをもう少し詳しく教えてください。

あるソフトウェアのバグを想像してみてください。コードの一部でどうやら不具合が起きている。その場合、人間であれAIであれ、その部分のコードを書いた開発者が意図を説明するコメントを残してくれていれば非常に助かるわけです。

ただ、コード1行に対してそれぞれ5行もコメントがあったら多すぎてそれはそれで読めなくなってしまいます。しかし、もしコードの問題ある部分をクリックするだけで、コードを生成する際に同僚の誰かがAIとやり取りした履歴、つまりモデルによる推論過程から人間の入力、そのコードが書かれた背景などを何もかも見られるとしたらどうでしょう。

コードベースの背後にある意図をはるかに深く理解できるようになるので、問題のある行を修正する際のリスクも低下します。誰が何を意図して書いたか、それが本当にバグなのか、それとも一定程度意図された動作なのかを把握・理解できるようになるからです。

履歴や経緯を保存してデータベースとして提供するこのアイデアは魅力的で、価値のあるものだと思います。魅力のあるものに価値があるとは必ずしも限りませんが、今回のケースに限っては、両者の共存が可能ではないでしょうか。

コルヴィン氏の見立ては非常に説得力のあるものですが、一方で顧客企業が求める展開は逆方向という現実もあります。

米小売り大手ウォルマート(Walmart)が自社開発したコーディングツール「コードパピー(Code Puppy)」は、特定のプロバイダーへの依存を回避し、コードベースを自社制御できるよう設計されていて、複数のモデルを自動的に切り替えてワークロードを実行するなど、コスト削減とベンダーロックインに重要な役割を果たしているそうです。

コードパピーのツールとしての詳細は別の記事に譲るとして、踏まえておくべき重要な論点は、企業顧客が柔軟に運用できるコストパフォーマンスに優れたツールを必要としているのに対し、アンスロピックとオープンAIは顧客企業を自社のエコシステム内にロックインできて、なおかつ収益率の高いツールを目指しており、そこに困難な緊張関係が存在していること。

AI市場における次の勝ち組は、そうした対立構造を最も巧みに乗り越える企業かもしれない、とバー記者は指摘します。

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