OpenAI が直面するジレンマとは? 広告ビジネス拡大に潜む最初の壁 | DIGIDAY[日本版]

記事のポイント

OpenAIはIPOを見据えて広告事業の拡大を急ぐ一方で、広告在庫の不足や配信体制の制約など、主要デジタル広告プラットフォームが通ってきた成長初期の課題に直面している。

AI検索では従来のSEOとは異なる評価基準が形成されつつあり、ブランドの発見可能性はコンテンツの構造化やLLMへの最適化によって左右される時代へ移行している。

OpenAIは2030年に広告売上1020億ドルを目指す強気な計画を掲げるが、足元ではChatGPT利用時間の減少も見られており、今後は会話ごとの収益化をどこまで拡大できるかが成長のカギを握る。

OpenAIは、早ければ9月にも株式公開を果たす方向で進めていると報じられている。この上場により、同社の時価総額は約1兆ドル(約158兆円)に達する可能性がある。しかしながら、現在の同社は、広告ビジネスをどのように運営すべきかをいまだに学んでいる最中である。

ChatGPTにおける広告のパイロット版がはじまってからわずか15週間しか経っていないが、同プラットフォームは、これまでに誕生したあらゆる主要なデジタル広告プラットフォームが例外なく直面してきた、多くのジレンマに早くも直面している。それは、「規模と安全性」「自動化とコントロール」そして「広告主の期待とプロダクトの現実」である。

Digidayは、OpenAIの広告ビジネスの背後にある可能性と、初期段階の緊張関係について紐解いていく。

AI検索が変えるブランド発見のルール

従来の検索と、AI主導の「ディスカバリー」とのあいだには、明確な分岐点が存在する。そして、特定のブランドの一群が、通常のブランド名検索よりも、AI検索の結果においてはるかにもっとも目立つかたちで浮上してくることが明らかになっている。

この事実は、ブランドにとってAI検索への対応がもはや単なる「選択肢」ではないことを明確に物語っている。

シミラーウェブ(Similarweb)の「2026年生成AIブランド視認性インデックス(Generative AI Brand Visibility Index)」はその実態をはっきりと示している。AI検索で際立つブランドをほかから分けているのは、彼らの情報がいかに構造化され、表面化されているかという点だ。

つまり、LLMがコンテンツを抽出し、解釈しやすいようにページが設計されているのである。現在、ChatGPTにおいて複数の市場で広告が統合され、その展開が拡大し続けるなか、この同じ原則こそが、誰が検索結果に表示され、誰が取り残されるかを決定づける要因になっている。実質的に、AI環境における発見は、従来の検索ランキングから構造的に分離されつつある。

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好転するChatGPT広告への世論

米国時間2月9日にChatGPT広告のパイロット版がはじまって以来、それに対する世間の意見は、紆余曲折を経ながらもプラスの軌道をたどっている。

パルサー(Pulsar)によると、一般の反応は「反発から受容へ」の曲線をたどった。ローンチ時にはマイナス17.9%だった支持率が、4月中旬までには49.3%へと上昇し、67.2%の増加を記録した。

これは驚くべきことではない。初期の段階は、OpenAIのスーパーボウル(Super Bowl)広告や、アンソロピック(Anthropic)のポジショニングとの比較をめぐる広範な議論に特徴づけられていた。また、OpenAIが米国国防総省(ペンタゴン)と契約を結んだ一方で、アンソロピックがそれを拒否したことも影響していた。

パルサーのシニアマーケティングイノベーションリードを務めるダヘ氏は、「議論がAIの核心的なユーザーを超えて広がるにつれ、マーケティングやビジネスのコミュニティがもっとも強い好意的な声を発するようになった。彼らは広告をプラットフォームの衰退ではなく、成熟の兆候として捉え直した」と語る。

しかし、センチメントが向上したからといって、パイロット版に参加している広告主の実体験がすぐに変わるわけではない。認識は楽観論へとシフトしているものの、初期の実行フェーズにおいては、依然として配信不足(インベントリ未消化)、限定的な広告枠、そして初期段階のインフラの制約に悩まされている。OpenAIは、広告ビジネスの初期構築において、規模の拡大よりも慎重さを優先しているからだ。この「認識と実行のギャップ」が、広告展開における初期の緊張の核となっている。

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同時に、ChatGPTの利用時間は減少している

これら広告側の動きとは裏腹に、ChatGPTのエンゲージメントレベルは、広告ビジネスを拡大させるうえで期待されるような方向には動いていない。少なくとも、現時点ではそうである。

アップトピア(Apptopia)のデータによると、ChatGPTがプラットフォームに広告を導入した直後の数週間、ユーザーあたりの平均滞在時間は概ね安定していたが、時間が経つにつれてより明確なトレンドが浮き彫りになってきた。

3月2日から5月11日のあいだに、1日あたりのDAUが費やす1日あたりの時間は、25.2分から20.6分へと18.3%減少した。エンゲージメントの上位10%を占めるコアユーザー(パワーユーザー)でさえ、同期間に滞在時間が14.5%減少している。

このデータは、広告の表示と利用時間の減少に直接的な因果関係があることを示唆しているわけではない。しかし、パイロット版の初期展開の期間において、エンゲージメントのパターンに広範な変化が起きていることを示している。総合すると、ユーザーのエンゲージメントは、同社が抱くマネタイズの野心や期待ほどには、まだ加速していないのが現状である。

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OpenAIの強気な収益目標:2030年に1020億ドルという壮大なロードマップ

こうした初期のシグナルにもかかわらず、マネタイズに対する同社の期待は極めて積極的なままである。

OpenAIはこれまでのところ、今後数年以内に広告を重要な収益源にする自社の能力に自信を示してきた。

4月の報道によると、OpenAIは2026年末までに20億ドル(約3160億円)の広告収入を達成し、2030年までに1020億ドル(約16兆1160億円)に達すると予測している。エンダーズ・アナリシス(Enders Analysis)も、その成長予測をチャート化している。同社は今後2年間で、OpenAIがChatGPTの消費者向け広告で約255億ドル(約4兆290億円)を記録すると予測しており、これは現在の水準から1150%の増加となる。

この数字は2029年に2倍以上の530億ドル(約8兆3740億円)に達し、2030年には再び倍増して1020億ドルに達する見とおしだ。これらの予測の規模は、現在のパイロット版で見られる初期段階の制約や、現在のエンゲージメントの減少トレンドとは、激しい対比をなしている。

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収益化はどこにかかっているか

最終的に、OpenAIがこれらの数字に到達するためには、時間の経過とともにより積極的に、1回ごとのインタラクションのマネタイズを強化していかなければならない。

会話型検索が成熟するにつれ、イーマーケター(eMarketer)は、高価値な商業的インタラクションの増加や、ChatGPTの回答内における広告表示密度の向上により、1クエリあたりの収益が2026年の0.002ドル(約0.32円)から、2030年までに0.041ドル(約6.48円)に上昇すると予想している。同様に、イーマーケターは年間ARPU(ユーザーあたり平均売上高)が2026年の3.50ドル(約553円)から2030年までに60ドル(約9480円)に増加すると予測している。

もはや問題は「ChatGPTに広告を掲載できるか」ではなく、「個々の会話をどのようにして大規模に収益化するか」に移っている。

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[原文:In Graphic Detail: Why OpenAI’s ad business is still a work in progress]

Krystal Scanlon(翻訳・編集:杉本結美)