
AIスタートアップ、アンソロピックが2026年5月28日に650億ドルの資金調達を実施し、企業価値が約154兆円に達したことを受けて、同社の創業者7人全員が世界の長者番付トップ500入りを果たしました。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、1社から1日で7人が新たに加わるのは同指数の歴史上初めてのことです。
今回の資金調達は「シリーズH」ラウンドと呼ばれるもので、アルティメーター・キャピタル、ドラゴニア、グリーンオークス、セコイア・キャピタルが主導しました。ポストマネー評価額(調達直後の企業価値)は9650億ドル(約154兆円)に達し、2026年2月時点の評価額3800億ドルからわずか3カ月で約2.5倍に拡大しました。
アンソロピックのCEOを務めるダリオ・アモデイ氏とダニエラ・アモデイ氏のきょうだいが創業者グループを率いており、他にもトム・ブラウン氏、ジャック・クラーク氏、ジャレッド・カプラン氏、サム・マッキャンドリッシュ氏、クリストファー・オラー氏の計7人が初めてブルームバーグの長者番付に加わりました。各創業者の持ち株比率は1%未満ながら、それぞれの持ち分の価値は約80億ドルに達したとされています。
アンソロピックは2021年、AIの将来の方向性をめぐる方針対立からOpenAIを離れた元従業員らが設立しました。チャットボット「Claude(クロード)」や企業向けツールで知られ、急速な成長を続けています。同社によれば、今月初め時点の売上高に基づくと年間売上高は470億ドルを超える規模になるとしており、前四半期からの大幅な拡大が見込まれています。
今回の資金調達によって、アンソロピックの企業価値は初めてOpenAIを上回りました。OpenAIの企業価値は2026年3月の資金調達後に8520億ドルと評価されており、これをアンソロピックが超えた形です。AI業界では、アンソロピックとOpenAIがともに今秋にも上場する見通しとも伝えられており、IPO競争に注目が集まっています。
AIブームが生み出す富は急膨張を続けており、AI向け半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOの資産は1770億ドルを超え、世界8位に位置しています。またブルームバーグは今月、今月上場したセレブラス・システムズの創業者や資産130億ドルとなったサージ・ラボのエドウィン・チェン氏らを含む19人のAI長者を新たに特定し、資産総額は590億ドルに達すると報告しています。
富の集中に警鐘、創業者7人全員が資産の80%を慈善活動へ
アンソロピック創業者らの資産の大半は、いまだ現金化していない株式価値です。注目すべきは、アモデイ氏をはじめとする7人の創業者全員が、資産の80%を慈善活動に寄付することを誓約している点です。今回の資金調達ラウンドにより、その誓約の総額は392億ドル(約6兆円)規模に達しました。
ダリオ・アモデイ氏は2026年1月のエッセイで「懸念すべきなのは、社会を崩壊させかねないレベルの富の集中だ。AIによる経済的繁栄の最前線にいる者たちは、自らの富だけでなく権力も手放す意思を持つべきだ」と主張し、AI業界が生み出す富の集中が税制や民主主義、政治的影響力に及ぼす影響を懸念する立場を公言しています。AIが生み出す莫大な富をいかに社会全体に分配するかという問いは、業界全体に突きつけられた課題となっています。