ピザハットのAI導入で「159億円の損害」と加盟店が提訴。効率化のはずが「冷え切ったピザの量産」に陥った理由 | Business Insider Japan

A Pizza Hut logo appears on a smartphone in front of an illuminated AI chip.ピザハットのAIシステムが「連鎖的な業務崩壊と顧客の不満」を引き起こし、1億ドル(約159億円)の損害をもたらしたとして、大手フランチャイズ加盟店が同社を提訴した。Illustration by Budrul Chukrut/SOPA Images/LightRocket via Getty Imagesピザハットのフランチャイズ加盟店大手が、同チェーンのAIシステムがビジネスに損害を与えたとして訴訟を起こした。訴状によると、このシステムは100店舗以上で配達の遅延と売り上げの急落を引き起こしたという。提訴したフランチャイズ加盟店は、1億ドル(約159億円)を超える損害賠償を求めている。

ピザハット(Pizza Hut)の大手フランチャイズ加盟店は、同チェーンがAI(人工知能)配達システムを導入したことで、かつて迅速だったピザの配達が「冷め切って遅れて届く」混乱を引き起こし、フランチャイズ網のほぼすべての加盟店を上回る業績を上げていた自社のビジネスが崩壊したと訴えている。

急速に進化するAIは問題も引き起こす…企業は導入とリスクのバランスを見極め始めている | Business Insider Japan

急速に進化するAIは問題も引き起こす…企業は導入とリスクのバランスを見極め始めている | Business Insider Japan

何が原因で遅延が起きたのか

このフランチャイズ加盟店、チャアク・ピザ・ノースイースト(Chaac Pizza Northeast)は5月6日、テキサス州のビジネス裁判所に提訴した。訴状によると、ピザハットはチャアク社のビジネスモデルと明らかに相容れないにもかかわらず、各店舗に「ドラゴンテール(Dragontail)」の導入を強要したという。ドラゴンテールとは、ピザハットがAIを使ってフードデリバリーを「最適化」すると謳っている配達管理プラットフォームだ。

チャアク社は、ニューヨーク、ニュージャージー、メリーランド、ワシントンD.C.、ペンシルベニアの各州で約111店舗のピザハットを運営。ドラゴンテールがドアダッシュ(DoorDash)のドライバーに対し、厨房の作業状況や注文のタイミングをリアルタイムで可視化した結果、「連鎖的な業務崩壊と顧客の不満」を引き起こしたと主張している。

同社によれば、その影響で失われたビジネス機会と企業価値の損害は1億ドル(約159億円、1ドル=159円)を上回るという。

「ドラゴンテール」導入後に起きたこと

ドラゴンテール導入前、チャアク社は配達の90%以上を30分以内に届けており、売り上げは2桁成長を続けており、顧客満足度のスコアもチェーン全体の平均を上回っていた。ところが、ピザハットが2024年にドラゴンテールを導入して以降、配達のパフォーマンスは急激に悪化したという。

訴状によれば、ドアダッシュのドライバーが厨房システムの状況を仮想的に把握できるようになったため、ピザがいつオーブンから出てくるかを把握できるようになった。その結果、複数の注文をまとめて運ぼうと待機するようになったという。

そして、完成した注文を持ってすぐ店を出る代わりに、追加の配達分を待つために「最大15分」も待機するドライバーが現れた。これによって、焼き上がったピザがオーブンのラックから取り出されてから配達に出発するまでの時間が、大幅に延びてしまうことになった。それが配達スピードの低下につながり、顧客を失望させたうえに、売り上げの急落を招いたとしている。

さらに、訴状では、ドアダッシュのドライバー(Dashers)がチップの金額や現金払いかどうかといった支払い方法まで確認できるようになったため、一部のドライバーが特定の配達を敬遠しやすくなったとも指摘している。

「効率と顧客サービスの向上を意図したにもかかわらず、ドラゴンテールはまったく正反対の結果をもたらした」と、同社は厳しく批判。「大規模な遅延を引き起こし、消費者の満足度を打ち砕いた」と主張している。

適切な研修もサポートもなかった

チャアク社は、ピザハット側は店舗運営者に対するシステムの適切な研修を怠ったうえに、運営者側からのサポート要請も拒否。主要市場で売り上げが急落し始めてからも、悪化する配達指標を無視し続けたと説明。ニューヨーク市における前年同期比の売上成長率は、ドラゴンテール導入前のプラス10.19%から、導入後はマイナス9.78%に転落したという。

同社は訴状で、ピザハットが「合理的な経営判断」を欠いたまま、ドアダッシュのドライバーに依存しているチャアク社の事情に合わせてシステムを修正することもなく、ソフトウェアの継続使用を義務づけたことは、フランチャイズ契約違反にあたると主張している。

チャアク社は1億ドル(約159億円)超の損害賠償に加え、弁護士費用やその他の救済も求めている。

ピザハットの広報担当者はBusiness Insiderに対するメールで、同社は訴状の主張内容を精査中であり「適切な法的手続きを通じて」対応するとし、それ以上のコメントを控えた。

ドアダッシュとチャアク社の代理人弁護士は、Business Insiderのコメント要請に対して直ちに応じなかった。

今回の訴訟は、ピザハットがアメリカ国内の事業全体でかつてない圧力に直面しているさなかに起こった。親会社のヤム・ブランズ(Yum! Brands)は2025年、ピザハットが7四半期連続(その後、8四半期連続となった)で既存店売上高の減少を記録したことを受け、同ブランドの売却を含む戦略的選択肢を検討していると発表していた。

ヤム・ブランズは2026年2月の決算説明会で、2026年上半期中にアメリカ国内のピザハット店舗250店を閉鎖する計画を明らかにしている。

同社経営陣は、ドミノ・ピザ(Domino’s Pizza)やリトルシーザーズ(Little Caesars)といった競合他社が、低価格路線のキャンペーンや配達に関する提携を強力に推し進めているとして、競争がますます激化する市場のなかで同ブランドの競争力維持に苦戦していると説明している。

AIがもたらす時間節約効果のほぼ40%が、確認作業で失われている…最新の調査で明らかに | Business Insider Japan

AIがもたらす時間節約効果のほぼ40%が、確認作業で失われている…最新の調査で明らかに | Business Insider Japan