スペースXがAI事業向けデータセンターの電源確保のため、過去数カ月で28億ドル(約4,300億円)超をガスタービンの購入に投じていることが、5月20日に提出されたIPO関連書類で明らかになった。
スペースXによるガスタービンの使用は、すでに苦情や訴訟、さらに環境規制違反や炭素排出による大気汚染の可能性を巡る調査を招いている。こうした巨額投資は、イーロン・マスクがガスタービンへの依存をさらに深めていることを示している。
AIブームが招く電力不足
米国で急速に拡大する大規模AIデータセンター建設では、電力不足が最大の制約となっている。こうした状況のなかで、電力網からの供給なしで稼働できる移動式ガスタービンは、より安定した電源が整うまでの一時的な解決策とみなされている。
スペースXはロケット打ち上げや衛星インターネット事業に加え、イーロン・マスクのAI企業「xAI」も傘下に置いており、同社はチャットボット「Grok」を開発している。チャットボットやそのほかのAI開発を支えるため、xAIはテネシー州メンフィスの「Colossus 1」とミシシッピ州サウスヘイブンの「Colossus 2」という2つのデータセンターを運用している。スペースXは、AIチャットボット「Claude」を開発するスタートアップAnthropicに対し、Colossusデータセンター内の一部サーバーへのアクセスを年間150億ドル(約2兆3,200億円)規模で提供している。マスクは今後、さらに追加契約を結ぶ予定でもあると述べている。
スペースXのエネルギー支出に関する新たな詳細は、投資家に同社の財務状況や長期的リスクを理解させることを目的として作成された、新規株式公開(IPO)に向けた目論見書に含まれる一連の開示情報の一部として明らかになっている。スペースXは今後数週間以内にナスダック市場への上場を目指している。
環境規制と訴訟
IPO関連の書類によると、3月にスペースXは2029年までに8億500万ドル(約1,200億円)相当のガスタービンを匿名企業から購入する契約を結んでいる。さらに4月下旬には、同社は20億ドル(約3,100億円)規模の移動式ガスタービンおよび関連機器を別の供給業者から取得する契約を締結したが、この取引はまだ確定していない。
『WIRED』は5月中旬、過去2カ月でColossus 2に19基の移動式ガスタービンが追加され、総数が46基に達したと報じた。米国の環境規制では、移動式ガスタービンは最長1年間、「大気排出許可(air permit)」なしで運転することが可能とされており、この規定がスペースXに有利に働いているとされる。一部のタービンは、NAACPなどの市民団体がxAIを提訴した後に追加された。この訴訟では、同社が適切な許可なしに27基のガスタービンを運用し、公衆衛生および気候へのリスクをもたらしていると主張されている。
3月時点で、スペースXはふたつのデータセンター全体で、米国の大都市ひとつ分に匹敵する約1ギガワットの電力を消費しうる規模のサーバーを運用していた。しかし同社は今後も成長を続ける見込みであり、それに伴い電力需要も増加する。
20日のIPO関連の書類によれば、スペースXは稼働前のデータセンター設備を含め、140億ドル(約2兆1,700億円)以上の建設プロジェクトを抱えている。
(Originally published on wired.com, translated by Miranda Remington, edited by Mamiko Nakano)
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