Google DeepMindの最高経営責任者(CEO)デミス・ハサビスは、最新モデル「Gemini 3.5 Flash」のコーディング能力について意欲的に語った。大規模なコードベースの変換から、複雑なバグの発見と修正、さらにはOS全体をゼロからつくることまで──このモデルは、高度なエージェント型コーディング作業を行なえるよう訓練されているという。
だがハサビスは、こうした進化がソフトウェア開発者の終焉を意味するとは考えていないと語る。「なぜみんな、そんなことを確信したように語っているのか、わたしにはまったくわかりません」
ハサビスは、5月19日(米国時間)に開催されたグーグルの開発者会議「Google I/O 2026」での新モデル発表を前に、『WIRED』の取材に応じた。
「そうしたメッセージを広めることには、何らかの別の狙いがあるのかもしれません。資金調達だとか、そういう目的です」とハサビスは続けた。「わたしやDeepMind、そしてグーグルの立場からすれば、もしエンジニアの生産性が3倍、4倍になるのであれば、単純に3倍、4倍のことをやりたいだけです」
AIによる人員削減は「想像力の欠如」
最新AIモデルが見せる驚異的なコーディング能力によって、人工知能(AI)がプログラマー職や、そのほかのホワイトカラー職を将来的に不要にしてしまうのではないかという不安が広がっている。
実際、一部のAI企業幹部は、大規模な雇用喪失が起きる可能性に言及しているほか、アマゾンやセールスフォース、Blockなど主要テック企業の一部は、最近の人員削減について、AI活用の影響を理由に挙げている。
ハサビスは、グーグルなど複数の企業を傘下にもつアルファベットには、ソフトウェア生産性の革命を最大限に活用できる強みがあると考えている。「創薬研究からゲーム開発まで、まだやりたいことが山ほどあります」とハサビスは語った。「だから、そうした(新規)プロジェクトに振り向けられるエンジニアが増えるなら、大歓迎です」
一方で、AIによって開発者を置き換えようとしている企業は、大きな間違いを犯している可能性があるともハサビスは指摘する。「それは想像力の欠如です。そして、これから本当に起きることを理解できていないということでもあります」
AIコーディング競争で巻き返せるか
グーグルは今年の年次開発者会議で、AI関連の発表を相次いで行なった。なかでも「Google Antigravity」と呼ばれるコーディングツールを通じて提供されるGemini 3.5 Flashについて、グーグルは、最先端のコーディング能力と推論性能を備えながら、競合製品より高速かつ低コストだとアピールしている。さらに、主力モデルの強化版となる「Gemini 3.5 Pro」も来月公開予定だ。
AIコーディング分野においてグーグルは、依然として巻き返しを迫られている。この分野は、最新AIモデルにとって極めて重要かつ収益性の高い用途として急速に存在感を増しているためだ。プログラマー向けQ&Aサイト「Stack Overflow」の調査(2025年版)によると、開発者コミュニティーでの普及では、Anthropicの「Claude」とOpenAIの「Codex」が先行している。
グーグルはこのほか、Google Cloud上で動作し、同社アプリにもアクセス可能なエージェント型アシスタント「Gemini Spark」も披露した。グーグルによると、この設計は、個人データへのアクセス範囲を限定しているため、オープンソースの自律型AIエージェント「OpenClaw」のようなシステムより安全性が高いという。