エヌビディア(Nvidia)が市場を独占してきたGPU(画像処理装置)だけでなく、タスクの調整やシステム全体の制御を担うCPU(中央処理装置)、データの書き込みや読み出しに不可欠なメモリチップへと需要の広がりが顕在化し、それらを設計・製造する企業に投資家の熱視線が注がれるようになったことが株価上昇の要因です。
しかし、先週はそうした半導体株がけん引する上昇相場に急ブレーキがかかっています。
イラン戦争の長期化とその影響による原油価格の高止まりに加え、4月の米雇用統計および米消費者物価指数の中身を受け、市場が年内の利上げを織り込み始めたことから、10年物米国債利回りなどが急上昇。特にデュレーション(キャッシュフローの回収期間)の長いAI関連テック株は大きな打撃を受けました。
10年物米国債利回りの直近10カ月間の推移。グレー部分はイラン戦争開戦後を示す。Joe Ciolli/Business Insider
相反する複数のシナリオ、複数の潜在的な(株価を左右する)材料が入り混じるなか、AIトレードは重大な岐路に差しかかっているようです。
そんななか、マグニフィセント・セブンの二巨頭、時価総額世界首位の座をめぐって緊迫した攻防を繰り広げているアルファベットとエヌビディアが、それぞれ重要なイベントを控えています。
今日(米国時間)からの数日間に起きること、明らかになることが、市場全体の方向性を左右する可能性も否定できません。

アマゾンの自社開発AIチップは「エヌビディアへの反旗」から「隷属回避への保険」に移行した | Business Insider Japan
「Google I/O 2026」開催(5月19〜20日)
アルファベット史上最もAI色の濃い開発者向けカンファレンスになるでしょう。「Gemini」モデルをチャットボットやアプリ単体としての機能から、アンドロイド(Android)OSやグーグル検索、クローム(Chrome)ブラウザを横断して接続するレイヤーへと発展させる方向性が示されると予想されています。
グーグルはAI機能を既存の製品・サービスに埋め込むフェーズから、AIをすべてのオペレーティングシステムと位置づけるフェーズへと移行できるのかが、投資家の注目するポイントです。
アナリストの投資判断:バイ(買い)67人、ホールド(中立)8人、セル(売り)0人。アナリストの12カ月後株価目標(5月15日時点):8%上昇株価動向(同):年初来27%上昇、直近1年間142%上昇
アルファベット(Alphabet)の直近1年間の株価推移。Joe Ciolli/Business Insiderエヌビディア決算(5月20日)
現行世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」および次世代「Rubin(ルービン)」プラットフォームへの需要動向に加え、2025〜27年のデータセンター累計売上高1兆ドルとの見通しを修正するかどうかに投資家は注目しています。
さらに、利益率やAIインフラ投資に絡む供給制約に関して情報アップデートがあるかどうか。また、AIエージェントの台頭などを背景に推論需要が高まるなか、CPUはじめGPU以外の事業領域(拡大)について何らかのガイダンスがあるかどうかも、投資家の主要な関心事の一つです。
アナリストの投資判断:バイ(買い)76人、ホールド(中立)3人、セル(売り)1人。
アナリストの12カ月後株価目標(5月15日時点):22%上昇
株価動向(同):年初来21%上昇、直近1年間67%上昇
エヌビディア(Nvidia)の直近1年間の株価推移。Joe Ciolli/Business Insider
そんなわけで、今週の二大イベントがAIトレードひいては株式市場の行き先を左右する緊迫した状況ではありますが、仮に上昇軌道に復帰した場合、投資家の関心を惹きつけそうな(正確に言えば、すでに惹きつけ始めている)テーマが見えてきています。
以下に、ナオミ・ブキャナン記者の取材内容を紹介しましょう。
なお、本記事はBusiness Insiderが毎日お届けする有料会員向けニュースレター「Cutting Edge(カッティングエッジ)」からの一部転載です。
気になる動き:AI投資の次なる最前線は「光学」か
コーニング(Corning)ら光学技術を手がける企業の株価が急上昇している。Rafael Henrique/SOPA Images/Si via Reuters Connect
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の記録的上昇を足元で支える最も熱いテーマがメモリチップであることに議論の余地はありません。それが一段落したらどうなる?
投資家はすでに次なる株価上昇の原動力となる新たなフロンティアを見つけ出しているのかもしれません。第2四半期(4〜6月)の株価上昇率上位銘柄の中で、メモリ関連以外に共通性が確認できるテーマは「光学(オプティクス)」です。
シリコンバレーで数十年にわたって半導体業界に関わってきた専門家で、現在は半導体スタートアップへのアーリーステージ投資やアドバイスを手がけるワイズマインド(WyzeMind)のディネッシュ・タイアギ最高経営責任者(CEO)に、光学技術に投資家の注目が集まる理由を聞きました。
AIブームはここまで計算資源(の基盤であるチップ)の不足にけん引されてきましたが、それに次ぐ新たなボトルネックとして、メモリチップやネットワーク機器の供給不足が浮上しており、光学技術は後者に関係しているとのこと。
データセンターに設置されたサーバーラック内で、GPU同士のデータ通信は従来銅線を使った電気伝送が主流でしたが、近ごろは「交通渋滞」が発生しており、光伝送の導入はその解決策になると考えられているようです。今後数年かけて技術が進歩すれば、ボトルネックの完全解消も期待できると、タイアギ氏は指摘します。
S&P500種構成銘柄の年初来上昇率ランキング(SlickChartsデータより作成)。Naomi Buchanan/Business Insider
投資家たちはそうしたボトルネックの存在に機会を見出し、メモリチップと並んで光学技術関連企業に資金を投じ始めており、S&P500種構成銘柄の年初来上昇率ランキングを見ると、サンディスク(Sandisk)やインテル(Intel)を光学関連株が猛追している状況です。
代表的な銘柄とも言えるルーメンタム(Lumentum)やシエナ(Ciena)、コーニング(Corning)は上記ランキングの上位10銘柄に名を連ね、株価は年初来で倍増以上を記録しています。
例えば、特殊ガラスメーカーでiPhoneやApple Watchのカバーガラス供給元として知られるコーニングは、近ごろエヌビディアとの提携を発表。データセンター向け光ファイバー製品の供給拡大に向けて生産能力を増強する計画を打ち出し、提携発表の5月6日だけで10%の株価上昇を記録しました。
なお、光学および光関連技術を手がける銘柄に分散投資する上場投資信託「コーギー・リソグラフィー・アンド・セミコンダクター・フォトニクスETF(Corgi Lithography & Semiconductor Photonics ETF)」も5月6日に取引開始されています。