「ゲーマーのためのNVIDIA」は死んだのか、ファンや制作現場から漏れ出す不信の正体
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2026.5.15(金)
韓国の「GeForce Gamer Festival」で講演するジェンスン・フアンCEO(2025年10月30日、写真:Matrix Images/アフロ)
米エヌビディア(NVIDIA)が、AI分野への急速な傾斜を強めている。その一方で、長年の成長を支えてきたゲーミング市場との間に深刻な溝が生じている。
米CNBCは先ごろ、「エヌビディアがAI向け製品を優先するあまり、ゲーマーを『置き去り』にしているとの批判が表面化した」と報じた。
AI優先の戦略と供給体制のひずみ
かつてエヌビディアは、高性能なグラフィックス処理を求めるゲーマーとともに歩んできた。
1999年に初のGPU(画像処理半導体)「GeForce(ジーフォース)256」を発売した際、同社は倒産寸前の状況にあったが、熱狂的なゲーマーの支持によって危機を脱した歴史を持つ。
しかし、現在の収益構造は一変している。
データセンター部門の売上高は全体の91.5%に達し、同社を世界で最も価値のある企業へと押し上げた。かつての原動力だったゲーミング部門の存在感は、経営指標の上で相対的に低下しているのが実情だ。
同社に対する批判の背景にあるのは、メモリー供給の世界的な逼迫だ。
AI半導体に採用されるHBM(高帯域幅メモリー)は、製造時に通常のメモリーの約4倍のシリコンウエハーを消費するとされる。
同社がHBMの増産を優先したことで、主力のゲーミング用ブランドであるGeForce向けメモリーの供給が滞った。
アナリストは、2026年は過去30年間で初めて、GeForceシリーズの最新世代が発売されない年になる可能性が高いとみる。
AIデータセンター向けGPU「Blackwell(ブラックウェル)」などへのリソース集中が、既存ファンへの供給体制に大きなひずみをもたらしている。
メモリー価格の高騰はパソコン市場全体に波及している。
調査会社の米ガートナーは、今年のパソコン価格が17%上昇し、出荷台数は10%以上減少すると予測する。高騰するデバイス価格の影響で、エントリー層のゲーマーが市場から淘汰される、との懸念も強まる。
生成AI技術を巡る表現の論争
技術的な方向性についても、ユーザーとの間に乖離(かいり)が見られる。3月の技術イベント「GTC 2026」で発表された描画技術「DLSS(Deep Learning Super Sampling)5」が論争の的となっている。
同技術は生成AIを用いて映像を補完するが、これが開発者の意図した「アート」を改変するとの懸念を呼んだ。
デモ映像では、人気ゲーム作品のキャラクターが生成AIによって、実写さながらの質感へ作り変えられる様子が披露された。
これに対し、一部のクリエーターは、AIによる自動生成が作者の創意工夫や「指紋」を消し去り、表現を均質化させるものだとして、強い拒絶反応を示している。
ジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は「AIがコンピューター・グラフィックスを革命的に変える」と主張する。
ビデオゲーム業界全体でレイオフ(一時解雇)やスタジオ閉鎖が相次ぐ中、AIによる自動化が開発者の職域を奪うとの懸念が、一連の反発を強める要因となっている。