OpenAI がCPC広告を導入。効果測定の責任者採用で見せる本気度 | DIGIDAY[日本版]

記事のポイント

OpenAIはChatGPTでCPC広告を開始し、単価下落が続く従来のモデル(CPM)から、より収益性の高い広告事業への転換を急いでいる。

同社では独自の強みを数値化するため、統計手法を広告主への説得力に変える「広告マーケティングサイエンス責任者」の公募を開始した。

Uberなどの先行事例を上回る異例の速さで測定体制を整えており、Googleの牙城であるパフォーマンス広告予算の獲得を本格的に狙っている。

AIチャットボットが成果を生み出すことを証明できるプラットフォームは、これまで存在しなかった新たな予算カテゴリを切り開くことになるだろう。OpenAIは、その境界線を越えるための大きな一歩を踏み出した。ChatGPT内でクリック課金型(CPC)広告の配信を開始したのだ。そして現在、同社は初の広告マーケティングサイエンス責任者を募集している。

CPC広告は、これら2つの動きの中でより即効性のある重要な動きといえる。なぜなら、現在そこで広告テストを行っているマーケターは、1000回の表示ごとに料金を支払うのではなく、実際にクリックされたときに料金を支払うオプションを選択できるからだ。

Digidayに提供され、その後検証した広告マネージャーのスクリーンショットによると、広告主はクリック単価を3ドルから5ドル(約480円から約800円)のあいだで設定することが可能だ。

「OpenAIが広告費の増額を目指すなかで、これは広告主がOpenAIでの成果をほかの主要な広告プラットフォームと直接比較し、広告費の管理に便利だ」と、ガートナー(Gartner)のバイスプレジデント兼アナリストであるニコール・グリーン氏は述べる。「AI技術や消費者の行動様式によってあらゆるものが変化している世界において、こうした一貫した測定データは、広告主がOpenAIへの予算配分を正当化する上で役立つだろう」。

CPC導入で加速する広告主の予算管理とプラットフォーム比較

問題は、OpenAIがその方向へ動き出すかどうかではなく、いつ動き出すかだった。そして、OpenAIは当初CPMモデルで広告を開始したわけだが、それは運用コストが比較的低かったためだ。これならば、クリック追跡のインフラが不要であり、測定機能が限られている新プラットフォームであれば、ブランド広告主の導入も比較的容易になる。

しかし、CPMにも限界がある。オンライン広告費の大部分はパフォーマンス広告主が占めており、彼らはインプレッションではなくクリックに対して支払うことを好む。それらを無期限にインプレッションモデルに留めておくことは、現実的な選択肢ではなかった。OpenAIが広告マネージャーのテストを開始し、その初期ビルドでCPCが明確に表示された時点で、この展開は明らかだった。

エンダーズアナリシス(Enders Analysis)のシニアリサーチアナリスト、クレア・ホルボウスキー氏は、「OpenAIによるCPCの試験導入は、主に需要の伸びを維持し、広告主との信頼関係を構築する必要性から進められているが、CPMの低下やパイロット事業の拡大も要因となっている」と述べる。

言い換えるなら、ChatGPTでの広告掲載料はすでに下がってきている。広告主が1000ユーザーにリーチするために支払う単価は、10週間前のサービス開始時の60ドル(約9580円)から、現在では場合によっては25ドル(約3990円)まで下落しており、その傾向はさらに加速している。

インプレッション単価が下がると、1インプレッションあたりの収益も減少する。CPCの導入は、インプレッション単価の維持に依存しない形で、OpenAIが広告収益を拡大する手段となる。

インプレッション単価下落を補うパフォーマンス広告への転換

より根本的な課題は、OpenAIが何を基準に自社の成果を評価しているかという点にある。CPCはGoogleの得意分野であり、Googleは長年を費やして、現在もっとも洗練されているシステムを構築してきた。

同社の入札技術は、ユーザーの検索意図を示すシグナル、品質スコア、オークションの競争状況、リターゲティングデータに基づいて、クリックに対する入札価格を決定している。CPCとGoogle検索は、四半期ごとに増加し続けている。つまり、広告主は、広告費に見合う価値があるという証拠を次々と得ているわけだ。

OpenAIは同様の主張を展開しなければならないが、簡単ではない。難しいのは、一律ではないクリックの価値をどのように定義するかという点だ。たとえば、デジタル広告エージェンシーのアドセナ(Adthena)によると、メタ(Meta)のCPCはGoogle検索に比べて3倍から5倍も安価だが、これは必ずしもインベントリー(在庫)が劣っているからではなく、そのクリックの背後にある意図が異なるためだ。

ソーシャルメディアのユーザーはただ閲覧しているだけだが、検索エンジンのユーザーは特定の情報を探している。この意図の差こそが、Googleが高額な広告単価を提示できる理由であり、OpenAIがこの市場のどこに位置づけられるかによって、そのクリックの実際の価値が決まることになる。

「LLMがそのギャップを埋め始めている。プロンプトを通じたやりとりのなかで意図が形成されるからだ」と、ChatGPT上で広告テストを行う複数のクライアントを抱えるアドセナで、最高マーケティング責任者(CMO)を務めるアシュリー・フレッチャー氏は述べる。

測定戦略をゼロから主導するマーケティングサイエンス責任者の役割

OpenAIにとって初の広告マーケティングサイエンス責任者の選定は、言うまでもなく、急務となっている。

求人情報からその業務の広さがうかがえる。採用された担当者は、OpenAIの広告主向け測定戦略をゼロから主導することになる。

具体的には、レポートがアトリビューションモデル、インクリメンタリティテスト、メディアミックスモデリング、および地域別実験とどのように連携するかを定義する役割を担う。彼らはマーケティングサイエンスそのものを構築し、まずは個人として貢献し、その後、その基盤を土台にチームと運営モデルを拡大していくことになる。

この職務の重要な部分は対外的業務だ。広告主との測定に関する協議を主導し、経営陣への報告会に出席し、統計的手法(因果推論、アトリビューションモデル、実験デザインなど)を、実際のキャンペーンの意思決定に役立つ言葉へと翻訳する人物という立場になる。

また、この職務には、サードパーティーの測定パートナー、クリーンルームプロバイダー、業界団体と連携し、広告主がOpenAIをほかのメディア購入案件と比較評価する際の障壁を低減することも含まれる。

異例のスピードで進む組織構築とプライバシー保護への対応

社内では、彼らはプロダクトおよびエンジニアリング部門と連携し、測定手法を堅固なツールやレポート基盤へと発展させていく役割を担う。プライバシー保護については、これまでの経緯を考えれば当然かもしれないが、当初から要件に組み込まれている。この点においては、法務およびプライバシー担当チームと連携し、集計データに基づく測定およびコンバージョン分析の手法を確立することが求められる。

この求人情報は、OpenAIの事業が驚異的なスピードで拡大していることを示す最新の兆候だ。比較すると、ウーバー(Uber)の広告部門は、広告事業を開始してから約3年後の2025年になってようやく、初代測定責任者であるエドウィン・ウォン氏を採用した。Netflixでさえ、広告事業を開始してから約1年後の2023年になってようやく測定チームの構築を始めたほどだ。

Digidayはこの件に関しOpenAIにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

[原文:OpenAI turns on cost-per-click ads inside ChatGPT]

Krystal Scanlon and Seb Joseph(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:京岡栄作)