📖 この記事で分かること
MCP Appsが何で、なぜ初の公式拡張なのか
Claudeに統合された9つのアプリと使える操作
開発者がUIを返せる仕組みとセキュリティ設計
「対応AIならどこでも動く」共通規格としての意味
💡 知っておきたい用語
MCP(モデルコンテキストプロトコル):AIと外部ツールをつなぐ「USB-C」のような共通規格。一度作れば対応AIならどこでも動きます。
最終更新日: 2026年5月11日
MCP Appsとは何か
MCP Appsは、ツールがチャット内に対話可能なUIを返せるようにする、MCPの初の公式拡張です。テキストの応答だけでなく、ダッシュボード、フォーム、可視化、複数ステップのワークフローなどを会話の中に直接描画できるようになりました。
従来のMCPはAIと外部データ・ツールを接続するための仕組みでしたが、ユーザーが見たい情報や操作したい対象を、テキストの往復だけで完結させるには無理がありました。MCP Appsはこの「文脈のギャップ」を埋める拡張です。発表は2026年1月26日で、AnthropicとOpenAI、そしてMCP-UIプロジェクトが連携して仕様化を進めてきた成果になります。
具体的なユースケースとして、以下が想定されています。
データ探索:営業分析ツールがインタラクティブなダッシュボードを返し、地域でフィルタしたり特定アカウントを掘り下げたりできる
設定ウィザード:依存関係のあるフォームで、選択肢に応じて表示が動的に変わる
ドキュメントレビュー:PDFをインライン表示し、条項を承認・フラグ付けできる
リアルタイム監視:サーバーの状態を再実行なしで継続表示する
Claudeに統合された9つのアプリ
ローンチ時点でClaudeに統合されたのは9つのワークプレイスツールで、ユーザーは画面遷移なしに見て・編集して・操作できます。Salesforce関連(Agentforce、Data 360、Customer 360)は後日対応予定です。
アプリ
主な用途
Slack
メッセージのドラフト作成・整形・投稿
Asana
プロジェクトとタスクのタイムライン管理
Figma
FigJamで図表を編集
Canva
プレゼン資料の作成・調整
Box
クラウドファイルの検索・プレビュー
Hex
データ分析とインタラクティブなチャート
Amplitude
分析パラメータを動かしてトレンドを探索
monday.com
プロジェクト管理
Clay
データ操作
たとえばSlackアプリでは、Claudeが下書きしたメッセージをチャット内で直接編集してから投稿できます。Figmaでは、データフロー図をその場で編集してClaudeのチャットに返せます。これらは外部アプリの「ミニ版」ではなく、ログイン状態が引き継がれた本物のインタフェースが描画される設計です。
提供範囲はWebとデスクトップで、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランが対象。無料プランでは利用できません。有効化は claude.ai/directory から行います。Claude Cowork(Anthropicが直前にローンチした汎用エージェント)への統合は「近日対応」とされています。
AnthropicがAdobe・Blenderなど主要ツールとの連携を発表した背景には、こうしたMCPベースの統合戦略があります:
仕組みとセキュリティ設計
MCP Appsの中身は、ツール定義に「UIリソースへのポインタ」を1つ追加するというシンプルな設計です。ホスト側は受け取ったリソースをサンドボックス化したiframeで描画し、JSON-RPC over postMessageで双方向通信します。
ツール定義側には _meta.ui.resourceUri が付与され、ui:// スキームのリソースとしてHTML/JavaScriptが配信されます。開発者は @modelcontextprotocol/ext-apps パッケージの App クラスを使い、ツール結果の受信、サーバーツールの呼び出し、モデルコンテキストの更新などを実装できます。
セキュリティは以下の多層防御で構成されています。
iframeサンドボックス化:UIコンテンツは制限された権限下で実行
事前宣言テンプレート:ホストがレンダリング前にHTMLを検査可能
監査可能なメッセージ:UI-ホスト間の通信はすべてJSON-RPCで記録
ユーザー同意:UI起点のツール呼び出しに明示的な承認を要求できる
ホストは怪しい挙動をレンダリング前にブロックできます。とはいえ「書いていないコードを自分のホスト内で動かす」性質上、ユーザー側でMCPサーバーをよく確認してから接続する姿勢は引き続き必要です。Team・Enterprise管理者は、組織内で使えるMCPサーバーを制御できます。
「Claudeだけ」ではない、共通規格としての意味
ここが重要な点で、MCP AppsはAnthropic独自仕様ではなく、MCP対応クライアントなら横断して動く共通規格です。ローンチ時点の対応状況は以下の通りです。
Claude(Web・デスクトップ)
Goose(Block社のリファレンス実装)
Visual Studio Code(Insiders版)
ChatGPT(同週内に対応)
つまり開発者が一度MCP Appsとして作れば、クライアントごとに書き分ける必要がありません。MCPは2024年にAnthropicが発表後、OpenAI、Google、Microsoftが相次いで採用し、その後Linux Foundation傘下の組織に寄贈されています。MCP-UIプロジェクトとOpenAI Apps SDKが先行してパターンを確立し、それを公式拡張として標準化したのがMCP Appsという位置づけです。
業界各社からのコメントでは、AWSのClare Liguori氏が「動的なインタフェースを会話に直接描画できることが、MCPサーバーの能力を実用的に活かす上で必要だった」と指摘。JetBrainsのDenis Shiryaev氏は「セキュリティが初日から組み込まれている点」を評価しています。
なお、対応クライアントが増える一方で、AIアシスタントが各種SaaSの「上に立つ層」になる構図には議論もあります。チャットUIが業務の入口になれば、Slackなどのアプリ側はインタフェースの主導権をAI側に譲る形になるためです。導入企業にとっては利便性の一方で、運用ポリシーや権限設計を見直す必要が出てくるでしょう。
よくある質問
Q: MCP AppsはClaude専用の機能ですか?
A: いいえ。MCPの公式拡張なので、対応する任意のAIクライアント(Goose、VS Code、ChatGPTなど)で動きます。開発者は1度実装すれば複数クライアントで利用できます。
Q: 無料プランでも使えますか?
A: 使えません。Claudeでの提供対象はPro、Max、Team、Enterpriseの各プランです。有効化は claude.ai/directory から行います。
Q: 既存のMCP-UIで作ったアプリは動かなくなりますか?
A: 引き続き利用可能です。MCP-UIのSDKはMCP Appsのパターンに対応しており、移行は段階的に行えます。準備ができたタイミングで公式拡張へ移行する形が推奨されています。
まとめ
MCP Appsは、AIチャットを「テキストの応答装置」から「対話可能なUIを内包する作業環境」へと拡張する公式拡張です。Claudeでは9つのワークプレイスツールが先行統合され、Slackのメッセージ作成からFigmaの図編集までチャット内で完結します。技術的には _meta.ui.resourceUri とサンドボックス化iframeというシンプルな設計で、共通規格として複数クライアントを横断する点が大きな特徴です。AIアシスタントが業務SaaSの「ハブ」として機能する未来像が、具体的なかたちで動き始めています。
【用語解説】
MCP【エムシーピー】: モデルコンテキストプロトコル。AIアプリと外部ツール・データソースをつなぐオープン規格。2024年にAnthropicが発表しました。
iframe【アイフレーム】: Webページ内に別のWebページを埋め込むための仕組み。MCP Appsではサンドボックス化された状態で使われ、安全性が担保されます。
JSON-RPC【ジェイソンアールピーシー】: JSONを使った遠隔手続き呼び出しの規格。MCP AppsではUIとホスト間の通信に使われます。
postMessage【ポストメッセージ】: 異なるオリジン間で安全にメッセージをやり取りするためのブラウザ標準API。
免責事項: 本記事の情報は執筆時点のものです。AI技術は急速に進歩しているため、機能や制限は予告なく変更される場合があります。
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