
アメリカ政府は2022年から中国への高性能チップの輸出を規制しており、2026年1月には特定のチップを中国に輸出する場合は個別の審査を行うことを取り決める新規則を発表しました。そんな中、タイの国家AI戦略を支える主要AI企業がNVIDIA製チップを搭載した数十億ドル(数千億円)規模のサーバーを中国へ密輸するのを手助けした疑いが報じられています。
US Said to Suspect Nvidia Chips Smuggled to Alibaba Via Thailand – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-05-08/us-said-to-suspect-nvidia-chips-smuggled-to-alibaba-via-thailand
US suspects Nvidia chips smuggled to Alibaba via Thailand, Bloomberg News reports | Reuters
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/us-suspects-nvidia-chips-smuggled-alibaba-via-thailand-bloomberg-news-reports-2026-05-08/
Super Micro earnings put cash burn in focus | SMCI – TheStreet
https://www.thestreet.com/investing/stocks/super-micro-earnings-put-cash-burn-in-focus
中国が高性能チップをAI搭載兵器やサイバー攻撃ツールなどに軍事転用することへの懸念から、アメリカ政府はNVIDIAなどの半導体メーカーに対し、中国への高性能チップ輸出を規制しています。しかし、中国国内の一部の研究機関や大学ではNVIDIA製チップが搭載されたDellやGigabyte、Supermicro製のサーバーを再販業者から仕入れることでこの規制を回避していることが指摘されていました。また、2025年3月にはアメリカの輸出規制を回避して中国にNVIDIA製チップを持ち込むために密輸を行った密輸容疑者をシンガポール警察が逮捕したことも報じられています。
NVIDIA製チップの密輸容疑者がシンガポールで逮捕される – GIGAZINE

さらにアメリカの検察当局は2026年3月に、NVIDIA製のサーバーを数十億ドル相当中国に密輸したとしてSupermicroの共同創業者であるイー・シャン・ウォーリー・リアウ被告を起訴しました。
2026年3月に公開された裁判資料では、リアウ被告は東南アジアの「会社1」に対して中国へ転売する意図でサーバーを販売していたと告発されていました。検察によると、アメリカで組み立てられたサーバーは台湾にあるSupermicroの施設に送られ、そこから「会社1」に配送された後に第三者の仲介業者を通じて中国の購入者に転送されていたとのこと。
裁判資料では詳細が明かされていなかった「会社1」について、タイのバンコクに拠点を置く「OBON」という企業であると匿名の関係者がBloombergに明かしました。
OBONはテクノロジー業界以外ではあまり知られていませんが、タイの主権クラウド推進企業である「Siam AI」の設立に携わっており、タイの国家AI開発計画を支える主要企業とされています。Siam AIはタイで初めてNVIDIAの公式クラウドパートナーを獲得し、AIに関するイベントでNVIDIAのジェンセン・フアンCEOを招いたこともあります。

BloombergはOBONにコメントを求めましたが、OBONのウェブサイトに掲載されている連絡先電話番号は既に使われておらず、メールアドレスに送ったメールには返信がなかったとのこと。また、記者がバンコクにある本社を訪れたところ、ビル管理の従業員に入館を拒否された上で連絡先情報も提供してもらえなかったそうです。
また、タイのタクシン・シナワット元首相の甥であるラタナポン氏は、2024年5月までOBONのCEOを務めていました。Bloombergが2026年5月6日にラタナポン氏に電話インタビューをしたところ、ラタナポン氏は「私はSiam AIを立ち上げた際にOBONを退社したため、OBONが中国にチップを密輸したという疑惑についてはコメントできません。Siam AIに関してのみお答えしますが、当社はこの件には一切関与していません」と語りました。
カリフォルニア州サンノゼに本社を置くSupermicroはNVIDIAの最先端部品を搭載したAIサーバーの大手組立メーカーであり、NVIDIAの売上高の約9%を占めているとも言われています。Supermicroは2026年5月に四半期決算を発表し、売上高が前年比で2倍以上とAI関連で大きな成長を示しました。一方で、輸出規制に反した密輸に関与した疑いが大きなリスク要因とも考えられており、Supermicroは「起訴状において被告として名前が挙げられていない」と説明し関与を否定した上で、従業員2名を休職処分とするなど社内調査を実施し政府の捜査に協力していることをアピールしました。
Supermicroの広報担当者は「当社は強固なコンプライアンスプログラムを有しており、適用されるすべてのアメリカの輸出および再輸出管理法規を完全に遵守することに尽力しています。当社は、米国連邦検事局の起訴状に記載されている人物らが企てた巧妙な計画に対し、断固たる措置を講じました。今後も自社の技術が最高レベルの倫理的および法的精査の下で取り扱われるよう、対策を講じていきます」と述べています。なお、関係者によるとOBONはSupermicroの11番目に取引高が多い企業であるそうですが、SupermicroはOBONとの関係についてコメントを控えました。
関係者によると、OBONに販売された25億ドル(約3900億円)相当のサーバーの一部は中国のAI大手であるAlibabaに渡った可能性があるそうです。Alibabaの広報担当者はBloombergの問い合わせに対し「Alibabaは、Supermicro、OBON、または当該起訴状に記載されている可能性のある第三者ブローカーとは一切取引関係がなく、疑惑の密輸行為には一切関与していません。当社は現在、データセンターで禁止されているNVIDIA製チップを使用しておらず、過去にも使用したことはありません」と疑惑を否定しました。
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