AIが起こすESG革命 | 日経ESG

人工知能(AI)が、環境、社会、ガバナンスの分野でも革命を起こしている。この先、AI活用の巧拙がESG経営の勝敗を左右する。

 ロボットアームが使用済み家電を丸ごと分解して修理・リサイクルに回す。従業員の「士気」という見えない価値を把握し、生産性向上を実現する。投資家との対話内容を分析し、投資家の隠れた本音をあぶり出す。循環経済や人的資本、投資家向け広報(IR)といったESGの取り組みで人工知能(AI)を活用する企業が増えている。

2300問から回答を生成

 例えばG(ガバナンス)の分野では、6月にピークを迎える株主総会でAIの出番が増えてきそうだ。東急は2025年6月に開催した株主総会で、株主への質問への回答を即時に支援するシステムを導入した。人が作成した約2300問もの想定問答を事前にAIに読み込ませておき、実際に株主から出た質問をシステムに入力すると約7秒で回答案を生成する。想定外の質問に対しても、想定問答から最適な回答を組み合わせて回答例を提示するという。

東急が2025年6月に開催した定時株主総会。生成AIが株主質問への回答案を生成し、回答者の席の前にあるモニターに映し出す(写真=東急提供)

東急が2025年6月に開催した定時株主総会。生成AIが株主質問への回答案を生成し、回答者の席の前にあるモニターに映し出す(写真=東急提供)

 品質不正や会計不正などが頻発する中、AIを使って不正の兆候を捉える企業も登場している。SOMPOリスクマネジメントは、不正防止サービスのスタートアップ、NaLaLys(ナラリス、東京・港)と連携して不正行為の検出を支援する。膨大なメールやチャットの中から、不正リスクが高いと考えられるやり取りを抽出し、リスクをスコア化する。1時間で10万件以上のメールやチャットをチェックできるという。

 人間の限界を超える膨大なデータを処理できるAIが普及する一方、人間はAIにできない付加価値の提供に注力する必要性が高まっている。AIに何を任せ人間は何に注力すべきか、企業は自らに問い始めた。奮闘する現場に迫ると、その答えが見えてくる。

写真= InfiniteFlow/stock.adobe.com

写真= InfiniteFlow/stock.adobe.com

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5月8日発行の「日経ESG」の最新号(2026年6月号)では、パナソニックや三井化学、東急、トリドールホールディングス、ユニ・チャームなど、ESGの分野でAIを活用する企業の事例を紹介しています。株主総会対応や不正検出、離職防止といった経営課題の解決に役立つ8つのAI活用術をお読みいただけます。