Google Cloudの最新AIがアニメ制作を革新、もうAIは「クリエイターの敵」ではない。東南アジア最大級のメディアの“人間中心”のAI制作術とは? | DXマガジン

東南アジアのメディア大手が、生成AIで制作工程を刷新する取り組みを前進させました。Googleは、PT Elang Mahkota Teknologi Tbkのメディアおよびエンターテインメント部門に向け、Google CloudのAI活用を広げる連携拡大を発表しました。発表はラスベガスで開催されたGoogle Cloud Next ’26で行われ、同社の「Studio of the Future」ビジョンの中核に位置づけられています。プロフェッショナルの創造性を尊重しつつ、生成AIで反復作業を減らし、ストーリーテリングに時間を振り向ける狙いが明確に示されています。背景には、AI支援のアニメ制作で成果を上げた実績があり、制作品質と効率の両面での効果が強調されています。両社は、制作から配信、業務生産性までを贯くAI活用で、視聴者価値の最大化を目指しています。

VidioGenが牽引する制作革新と効果検証

連携の中心は、Vidioの技術チームがGoogle CloudのGemini Enterprise Agent PlatformやVeo、Imagen、各種Geminiモデルを活用してカスタム構築した制作向けAIプラットフォーム「VidioGen」です。Emtekはこれまでにも、テレビ広告の収益最適化やセマンティック検索などでGoogle Cloud AIを導入し、収益拡大と視聴体験の向上を実現してきました。コンテンツ需要の増加を受け、VidioGenは概念実証段階を終えてグループ全体へ展開されます。経営陣は、人間中心の創造性を核に据えつつ、AIを補助線として活用する姿勢を明確にしています。発言では、作家や監督、俳優など人の専門性を基盤に、テクノロジーが生産効率と表現の質を高める役割を担うことが示されました。文化的な本物らしさを守りながら、AIが新しい可能性を開くという方向性が示されています。

ヒット作「New Keluarga Somat」で示された定量的インパクト

VidioGenの有効性は、アニメシリーズ「New Keluarga Somat」で定量的に示されています。作品は、2013年に初放送された人気シリーズを再開発したもので、都市化と相互協力の精神という社会的テーマを描きます。制作では、生成メディア機能を用いながらも物語とアートの中核は人間主導で維持されました。Mentari TVは、アセット生成やショット構図の効率化により、再開発の時間とコストを30パーセント削減しています。2026年2月の初放送以降、同作はMentari TVで毎日放送され、ラマダン期の地元アニメ枠で首位を獲得しました。無料放送のプライムタイム枠とサフルTV枠で、視聴者シェアは前年同期比でそれぞれ74パーセントと90パーセント増を記録しています。初シーズンはVidioで配信中で、Mentari TVのYouTubeチャンネルでハイライトも視聴可能です。

生成AIツール群でワークフローを高速化し一貫性を担保

VidioGenは、ショーランナーや制作スペシャリスト向けの支援AIツール群を提供し、アイデア検証から画づくりまでの反復を加速します。アウトペインティングでは、VeoとImagenを用いてフレーム外の要素を補完し、クローズアップをパノラマへと拡張することで、物理や予算の制約を補います。インペインティングでは、Gemini 3 Pro Imageによりテクスチャや小道具、照明などの調整を即時に行い、再描きや再撮影を最小化します。長い文脈を保持できるモデル特性を活用し、制作バイブルに基づく一貫したスタイルを維持して「ビジュアルドリフト」を回避しています。さらに、Gemini搭載の文字起こし、字幕、吹き替え機能の追加で、言語のニュアンスを保った国際展開を支援します。Viviは、長尺映像から短時間でプロモーション用アセットを自動生成し、重要プロットや感情の山場を抽出してエンゲージメント向上に寄与します。

業務のエージェント化とAI CoEで広がる適用領域

制作現場にとどまらず、社内業務でもエージェント型AIの導入が進みます。Google Workspace Studioにより、GmailやDrive、Chatを横断して日常タスクを自動化するノーコードのAIエージェントを短時間で作成できます。Gemini Enterpriseアプリケーションを介して、Google提供の認可済みエージェントやVidioGen、サードパーティのエージェントに横断アクセスし、生産性と創造性、ビジネス成果の同時向上を狙います。さらに、EmtekはAIセンター・オブ・エクセレンスを設立し、Google Cloudと連携して次世代の高価値ユースケースを検証しています。スポーツ映像の解析によるほぼリアルタイムのコンテンツ生成や、スクリプト作成を支援するエンタープライズナレッジグラフの活用が進みます。ゲーム分野では、よりインタラクティブな体験を提供するカスタムAIエージェントの検討も行われています。責任ある利用と権利保護の枠組みを前提に、AIのフルスタックで制作と配信の地平が広がっています。

詳しくは「Google」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部