【生成AI事件簿】日本は最強AIを使わせてもらえるのか…サイバー、バイオ、計算資源で囲い込みを図る米国の思惑
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小林 啓倫
経営コンサルタント
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2026.5.3(日)
Mythosへのアクセスを要求するインド、しかし米国は利用者拡大を懸念(筆者がChatGPTで生成)
2026年4月末、強力なサイバー攻撃能力を持つとして注目を集めるAnthropicのAIモデル「Claude Mythos Preview」を巡り、わずか3日間に3つの象徴的な出来事が並行して起きた。
4月28日、インド政府が同モデルへのアクセス権を米政府およびAnthropicに正式に要求していることが報じられた。翌29日にはAnthropicが生命情報学ベンチマーク「BioMysteryBench」での評価結果を公開。人間の専門家パネルが解けなかった問題の30%をMythosが解いたと発表した。そして30日、米ホワイトハウスがAnthropicに対してMythosの利用者拡大に反対する姿勢を伝えたことが、ウォール・ストリート・ジャーナル、ブルームバーグなどによって相次いで報じられた。
これらの出来事は、いまや先端AIモデルが「誰がアクセスできるか」を巡り、核兵器並みの政治的駆け引きの対象になりつつあるという新しい地政学的現実を浮かび上がらせている。
Mythosは2026年4月7日にAnthropicが発表した最新の汎用大規模言語モデルで、ゼロデイ脆弱性(開発元すら気づいていない、修正パッチも存在しないシステムの穴)の自律的な発見・悪用能力が際立って高い。その危険性ゆえに一般公開は見送られ、「Project Glasswing」と名付けられた限定枠で、Apple、Google、Microsoft、JPMorgan Chaseなど約40の組織にのみ提供されている。
インド政府はこの構図に正面から異議を唱えた格好だ。
4月28日、インドの電子情報技術省(MeitY)と財務省を中心に、米政府およびAnthropic、そしてMythosの初期テストに関わる企業との高位協議が開始された。 MeitYのクリシュナン次官は同日、米当局と「ロジスティクス」を詰めていることを公に認めている。
財務大臣ニルマラ・シタラマンは、これに先立ちインド準備銀行(RBI)と主要銀行を集めた緊急会合を招集し、 Mythosを「前例のない」脅威と表現したと報じられている。インド政府はあわせて、インド・コンピューター緊急対応チーム(CERT-In)と国家重要情報インフラ防護センター(NCIIPC)に対し、電力網・通信網・銀行決済システムなど重要インフラの防護を急ぐよう指示した。
ここで注目すべきは、少なくとも表向きは、インドが単に「我が国を守りたい」という論理でアクセスを要求しているわけではない点だ。