メタの外部委託先でAIモデル改良に従事する700人超、職を失う可能性 | WIRED.jp

メタ・プラットフォームズによる大規模な人員削減が進むなか、アイルランドでAIモデルの精度向上に従事する何百人もの労働者が、職を失う可能性があると知らされていたことが『WIRED』が入手した文書で明らかになった。

対象となったのは、メタ向けのコンテンツモデレーションやデータラベリングを請け負うダブリン拠点の企業、Covalenの従業員だ。

従業員のひとりであるニック・ベネットによると、4月27日(米国時間)、対象者たちは短時間のビデオ会議で一方的にレイオフを言い渡され、質問は一切認められなかったという。「(会議の前から)嫌な予感はしていました。こういうことは、これまでもあったからです」とベネットは話した。

職を失う可能性がある労働者は700人以上にのぼる。そのうち約500人はデータアノテーターと呼ばれる、メタの人工知能(AI)モデルが生成したコンテンツを審査し、危険・違法な表現が含まれていないかを社内ルールに基づいて判定する役割を担う人々だ。

匿名を条件に語った従業員は作業内容についてこう説明した。「要するに、AIに自分たちの仕事を奪わせるための訓練をしているようなものです。わたしたちは、AIが真似するための正解を与えているのです」

データアノテーターの仕事には、AIの安全対策をすり抜けるような巧妙なプロンプトを考案する作業が含まれることもある。例えば、児童への性的虐待や自殺に関する出力を防ぐガードレールを破れるかどうかを、あえて試すのだという。「かなり過酷な仕事です」とベネットは話す。「自殺願望のある人や小児性愛者になりきって、連日考えなければならないこともありました」

昨年11月に続き、2度目の人員削減

4月下旬、メタは効率化を目的とした大規模な人員削減の一環として、全従業員の約10人に1人を削減する計画を発表した。社内で共有されたメモによると、今回の削減は事業の他分野への支出を増やす必要性が背景にあるという。

メモではAIについて直接の言及はなかったが、同社はこの分野への投資をほぼ倍増させる方針を示している。1月には、最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグが「2026年は、AIが働き方を劇的に変え始める年になる」と語っていた。一方で、『WIRED』が確認したメールでは、Covalenの従業員に対し、今回の人員削減は「需要の減少と業務上の要件」によるものだとだけ説明されていた。

メタの広報担当エリカ・サッキンは声明で、次のように説明した。「3月にお伝えしたとおり、今後数年にわたり、より高度なAIシステムを導入し、コンテンツ管理や運用のあり方を刷新していきます。ユーザーが期待する安全性と保護を実現するためです。その過程で、外部委託への依存を減らし、社内システムの強化を進めていきます」

今回の人員削減は、Covalenにとってここ数カ月で2度目となる。昨年11月には、同社は(約400人規模とされる)削減計画を発表し、労働者によるストライキに発展した。

Covalenの従業員の一部も参加しているアイルランドの通信労働者組合(CWU)によると、今回と前回の削減によって、Covalenのダブリン拠点の従業員数はほぼ半減する見通しだという。

影響を受けるCovalenの従業員は、再就職にも制約を受ける見込みだ。メタと競合する委託先に応募できない6カ月の「クールダウン期間」が設けられているとCWUは主張する。匿名を条件に取材に応じた従業員は、「無礼で、尊厳を欠く扱いです」と語った。

Covalenはコメント要請に対し、現時点で回答していない。

労働組合、「使い捨てのよう」だと批判

影響を受ける従業員を代表する労働組合のいくつかはCovalenに対し、退職条件を巡る交渉に応じるよう求めている。あわせて、AIが国内の労働者に与える影響について、アイルランド政府との協議も模索している。