日本をはじめ世界各国の防衛政策に及ぼす影響は甚大
![]()
著者フォロー
フォロー中
2026.4.29(水)
イランのアラグチ外相(2月25日撮影の資料写真、AP/アフロ)
イランの対米基本戦略は非対称戦
イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相は「我々の東西隣接地域における米国の敗北を20年かけて研究してきた。そして、それに応じて教訓を取り入れてきた」と、3月1日の自身のX(旧ツイッター)で表明した。
その上で「(米国とイスラエルによる)首都(テヘラン)での爆撃は、我々の戦争遂行能力に何ら影響を与えない」と述べた。
この発言は、アフガニスタンとイラクでの米軍の軍事的行き詰まりや撤退などをつぶさに研究し、自国の安全保障・防衛の教訓として取り入れたことを意味しているとみられる。
その教訓を踏まえた答えが、世界最大の軍事力を有する米国に対する「非対称戦(asymmetric warfare)」戦略の採用である。それは、決して付随的なものではなく、イラン戦略の中核をなす構想である。
非対称戦は、戦略・戦術、軍事力・兵器等において、交戦する両者の間に大幅な違いがある戦いにおいて、相手との違いを活用し戦いを優位に導く方策のこと。
敵の強みを回避し弱点・脆弱性を突く戦い方で、いわゆる弱者が強者を倒す戦法といわれる。
一般的には、相手の弱点となる異種の兵器技術を活用する。例えば空母に対する潜水艦・機雷(水中戦)、対艦ミサイルなどである。
また、戦略や戦術、戦争継続期間においても相手の弱点を突いた戦い方をする。例えば相手の機動戦に対しては消耗戦・陣地戦で挑み、通常戦に対してはゲリラやテロなどの特殊戦を活用し、短期決戦に対しては長期持久戦などの非対称性を活用する。
イランの軍事力は、核保有国で大規模かつ最も先進的兵器システムを備えた米国やイスラエルより明らかに劣っている。
軍事バランスが著しく不均衡であることから、同じ土俵で戦っても勝ち目は薄い。そこで、イランとしては相手の脆弱性を見つけたらそこを集中的に攻撃していく戦法を取らざるを得ない。
それは軍事面にとどまらない。米国など民主主義国の意思決定プロセスや民意、法的・倫理的な規制も対象となる。
また、軍事面でも相手の高額な精密誘導兵器システム、兵站などに潜む弱点や脆弱性を突く非通常型の戦い方で最大の戦果を狙う。
ベトナム戦争における北ベトナムの戦い方を見れば明らかなように、弱者にとって非対称戦を挑むのは、やむを得ない選択であると同時に、的確な戦略的判断に基づいているのだ。
その具体的な方策は、ミサイル・ドローンやサイバー戦重視、消耗戦・長期戦の強要、代理勢力ネットワークの活用、抗堪性(resilience)ある防衛体制、経済・金融戦争などである。