TBPNの番組は分割画面の形式を採用しており、マイクを付けた司会のジョン・クーガン(John Coogan)と通常はスーツ姿のジョルディ・ヘイズ(Jordi Hays)が、株価の一覧やテック関連のニュース見出し、企業ロゴなどが画面に並んで表示される中で映し出される構成になっている。平日は毎日3時間配信されており、番組ではメタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)やOpenAIのCEOサム・アルトマン(Sam Altman)など、著名なゲストを継続的に招いている。番組を編集したたハイライト動画はソーシャルメディア上で広く拡散されている。
「シリコンバレーでは、見ておくべき番組として事実上定着している」と語るのは、デジタル分野(SNS・動画配信)に特化したエージェンシーであるアンダースコア・タレント(Underscore Talent)のパートナー、レザ・イザド(Reza Izad)だ。「TBPNの司会を務める2人は、自ら仕掛ける力があり、カメラ映りも良い」と評価している。
あらゆるメディア戦略と同じように、うまくいけば誰もがそれを真似をするものだ。模倣は最大の賛辞とも言える。そもそもTBPNの形式自体も、大手スポーツ専門テレビ局ESPNの番組「スポーツセンター(SportsCenter)」をアレンジしたものだ。
「TBPNは繰り返し展開できるフォーマットだ」とソーシャルメディア向けのエンタメ企業ジムネイジアム(Gymnasium)の共同創業者アダム・フェイズ(Adam Faze)は言う。ライブのトーク番組自体は新しいものではないが、新しい形式によって大きく変わる段階に来ているとフェイズは指摘している。
「競争はこれからさらに激しくなっていくだろう」
レイン・メーカー・グループ(Reign Maker Group)のジョナサン・チャンティ(Jonathan Chanti)CEOは、テック系クリエイター向けの新たなマネジメント会社を立ち上げ、他の分野への展開も模索している。その戦略の大きな柱の一つは、クリエイターたちがTBPNのような形式の番組を制作するのを支援していくことだという。
「本物であること、自分の意見に根拠を持たせること、そして複雑な内容を分かりやすく伝えられることが必要だ」と彼は述べている。
こうした動きを見せているのは彼だけではない。
ヨーロッパのテック業界に特化した配信番組「ETN」や、テック系メディアが手がける番組「TITV」など、競合する番組も多く存在する。さらにTBPNは2025年の夏、韓国にもTBPNに似た番組があると自ら紹介している。
一方で、TBPNのスタイルを応用し、さまざまな業界で存在感を示そうとする動きも広がっている。広告業界では「ブレイキング・アンド・エンタリング」が、エンタメ業界ではミーム投稿で人気のアカウントが番組化した「AvAライブ(AvA Live)」が、そして政治に関心の高い人たちに向けてまもなく「ノーバディ・ノウズ・エニシング(Nobody Knows Anything)」といった番組が登場する見込みだ。
ライブ配信はニッチな分野に広がっている
YouTubeやTikTokなどのアルゴリズムが視聴者一人ひとりの好みに合わせたコンテンツを表示するようになったことで、特定の分野に絞ってビジネスを築く機会は広がっている。
「こうしたものは今後ますます増えていくだろう」とウェスターカンプは語る。
「アルゴリズムは進化を続けており、個々の関心に合ったコンテンツを的確に届けられるようになっている。そのため、分野は細かく、さらに細かく分かれていく」
AvAライブの司会者で番組を立ち上げた人物でもあるワーナー・ベイリー(Warner Bailey)は、新番組を構想する中で、TBPNのことを、「いくつかあるライブ番組の中でも特に参考にした存在の一つ」だと語っている。
ベイリーによると、自身の番組は見た目(オフィス風の区切られたデスク空間を演出したセットを含む)や構成、配信時間は異なるものの、TBPNと同様にライブ配信で行うという。なお、広告会社デイジョブ(DayJob)の共同創業者で、TBPNのブランディングに関わったリオン・ハーモン(Rion Harmon)は、番組にあふれる多数のロゴについて、「意図的なものであり、F1レーシングカーへのオマージュだ」と以前Business Insiderに語っている。
「ライブ配信の利点は、コンテンツがあふれ、多くが作り込まれた動画ばかりになっている今の環境の中で、より自然でリアルな雰囲気を前面に出せる点にある」とベイリーは語った。
だが、模倣した番組が一時的に注目を集めることはあっても、それが長く続くとは限らない。
「特にポッドキャストの世界は信じられないほど競争が激しい」とベイリーは続ける。
「長く価値を生み続けるコンテンツやブランドを築く必要がある。他と明確に差別化していかなければならない」
その番組のフォーマットを真似ることができても、誰もがTBPNのように収益を上げられるわけではない。
「この流れの先で、質の低いコンテンツが大量に出てくるのではないかと懸念している」とフェイズは語った。
「問題はTBPNそのものではなく、TBPNのような番組制作が簡単だと思い込み、自分たちも1億ドル(約159億円)規模で買収されると見込んで参入してくる人々だ」

サム・アルトマン率いるOpenAIは非課金ユーザーに対して、広告表示による収益化を進めている | Business Insider Japan
