MetaはLLM「Avocado」とマルチメディア生成モデル「Mango」の開発を進めており、そのオープンソース版を「eventually(いずれ)」公開する計画だとAxiosが2026年4月6日に報じた。ただしオープンソース化されるのはフラッグシップ版の派生モデルに限られる見込みで、核心部分はクローズドのまま保持されると言う。CEOのMark Zuckerberg氏が2024年7月に「オープンソースこそ正道」と宣言してから2年足らず、Metaはその言葉と矛盾するように見える「ハイブリッド戦略」へと舵を切った。リリースは当初2026年3月を予定していたが、内部テストで主要競合に及ばないことが判明し、少なくとも2026年5月以降に延期されている。MetaはこのAI開発に720億ドル(2025年設備投資額)を投じており、同社の戦略転換が持つ意味は軽くない。
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フラッグシップは非公開、オープンソース版は「派生型」だけ
なぜ今、オープンソース版を出すのか:DeepSeekショックとブランド防衛
遅延と苦境:内部テストで競合に及ばなかった現実
2026年の正念場:「オープン」の定義をMetaが書き換えられるか
フラッグシップは非公開、オープンソース版は「派生型」だけ
報道によると、MetaがAvocadoおよびMangoで採用しようとしているのは、フラッグシップモデルをプロプライエタリとして維持しながら、機能を削減した派生版のみをオープンソースとして公開するという二層構造だ。オープンソース版ではパラメータの削減や特定機能の除外が行われる可能性がある。
Avocadoはコーディングと推論能力の強化に重点を置いたLLMで、MangoはOpenAIのSoraと競合する位置づけで画像・動画生成に特化したモデルだ。両モデルとも、オープン版と非公開版の間には機能面で差が設けられる構造になる見込みで、Mangoについては動画生成領域での公開範囲がどう設定されるかが今後の焦点になる。
Llama 3まで、Metaはフルスペックモデルをオープンソースとして公開し続けてきた。今回の方針は、その路線からの静かだが明確な転換だ。
なぜ今、オープンソース版を出すのか:DeepSeekショックとブランド防衛
MetaがオープンソースAIを公開する判断の背景には、DeepSeekの台頭という構造的な問題がある。中国のDeepSeekはLlamaのアーキテクチャを基盤として、低コストで高性能なモデルを開発・公開したとされる。MetaがオープンソースにしたLlamaが、競合となるモデルの開発に活用されたかたちだ。
DeepSeekショックは、「オープンソース=普及」という方程式が必ずしもMetaの優位性に繋がらないことを明示した。フルスペックをオープン化すれば、競合が同じ基盤の上で追い越しを図ることができる。その現実に直面したMetaが選んだのが、「一部だけオープン」という妥協点だ。
一方でオープンソース版の公開を完全に止めれば、研究者・開発者コミュニティとの関係が損なわれる。OpenAIも2025年8月に初のオープンソースモデルを公開しており、AIエコシステムにおける「オープン性」はブランドの信頼性と不可分になっている。MetaはDeepSeekへの反省とブランド防衛を同時に果たすために、フラッグシップのクローズド化とオープン版の並行公開という二重構造を選んだと読める。
Zuckerberg氏は2024年7月、「オープンソースこそ正道」と宣言した。今回の方針はその言葉を完全に否定するものではないが、「オープンにする」の定義を大きく書き換えるものだ。
遅延と苦境:内部テストで競合に及ばなかった現実
Avocadoは当初2026年3月のリリースが予定されていたが、内部テストにおいてGoogle、OpenAI、Anthropicといった主要競合のモデルに及ばないことが確認され、少なくとも2026年5月以降への延期が決定された。報道によると、内部評価では複数の能力指標で競合を下回る結果が出ていた。
モデル開発を担う社内研究組織「TBD Lab」を率いるのは、元Scale AI CEOのAlexandr Wang氏(29歳)だ。元GitHub CEOのNat Friedman氏やChatGPT共同開発者のShengjia Zhao氏も加わり、OpenAIからは20名以上の研究者が移籍した。
加えて、Llama 4の発表時にはベンチマーク不正の疑惑も浮上した(現時点では未解決)。性能面の遅延と透明性への疑問が重なった状況が、Metaの現在地を示している。
2025年の設備投資720億ドルという規模は、GoogleやMicrosoftと肩を並べる水準だ。資金投下の規模においてMetaはトップ層に位置するが、技術的な出力がそれに見合っているかは現時点で問われ続けている。
今回のハイブリッド戦略が機能するかどうかは、派生オープンソース版の性能次第だ。フル版と大差のあるモデルであれば、開発者コミュニティからの信頼は得られない。研究者が「これがMetaのオープンAIだ」と認識できる水準を派生版が保てるかが、戦略の成否を決める。
競合との差が縮まるか広がるかは、Avocado本体の完成度にかかっている。2026年後半の公開が実現した際、そのモデルがGPT-4o・Gemini Ultra・Claude Opus 4クラスと実質的に競合できるかどうか——その答え次第で、Metaが「オープンソース」という言葉の定義を業界に書き換えるプレーヤーになれるかが決まる。
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