島津 翔=シリコンバレー支局

2026.03.27

出典:日経クロステック、2026年1月26日
 
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 米Google(グーグル)傘下のGoogle DeepMind(グーグル・ディープマインド、以下GDM)の存在感が、フィジカルAI(人工知能)でも大きくなっている。韓国・Hyundai Motor(現代自動車)グループにヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)を操るAIモデルを提供。認識・判断・制御を丸ごと担う「VLA(Vision-Language-Action)モデル」が強みで、実用化はすぐそこだ。物理的なデバイスを動かす「フィジカルAI」でも、一気に主役に躍り出る可能性が出てきた。

CES 2026で現代自動車が発表したヒューマノイド「Atlas」

CES 2026で現代自動車が発表したヒューマノイド「Atlas」

(写真:現代自動車)

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 「さあ、いよいよ研究所の外に連れ出す時が来た」。舞台袖に置かれたヒューマノイドが機敏に立ち上がって歩き出すと、会場でその日一番大きな歓声が上がった。

 2026年1月5日、現代自動車は世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」に先立って記者会見を開き、2028年までに年間約3万台のヒューマノイドを生産し同社の工場などで採用すると発表。傘下の米Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が開発したヒューマノイド「Atlas」の試作機を初めて公開した。

 可動するのは56カ所で、そのほとんどが360度回転する「完全回転関節」だ。カメラで周囲360度を常時監視する。指と手のひらに触覚センサーを搭載し、細かい作業も可能だという。最大約50kgを持ち上げることができ、マイナス20度〜40度の環境で動作する。水洗いも可能だ。長く稼働させるために自動的にバッテリーを交換する機能も持つ。

 2028年には現代自動車の米国工場で実際に稼働させる計画だ。部品の仕分けや棚からの取り出しの工程から導入し、2030年までに部品の組み立ても担うようになる。米ジョージア州にある電気自動車(EV)の新工場「Hyundai Motor Group Metaplant America(HMGMA)」で試験的に導入し、検証していく。

大部分のタスクは「1日で学習可能」

 会見で見せたのは試作機で、スタッフが近くで操縦してAtlasに様々な作業をさせた。一方、実際に工場などで使う製品版は、AIによる操作で完全に自律的に動くという。ボストン・ダイナミクスでAtlasのゼネラルマネジャーを務めるザカリー・ジャコウスキー副社長は会見で、「ほとんどのタスクは、1日以内のトレーニングで可能になる」と説明した。

CES 2026の展示ブースでは、人による操縦ではなく、Atlasの自律的な動作を試験的に公開した

CES 2026の展示ブースでは、人による操縦ではなく、Atlasの自律的な動作を試験的に公開した

(写真:日経クロステック)

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 目立つのはロボットの本体だが、「黒子」として自律的な動作を可能にする「脳」の役割を担うのはAIだ。Atlasには、GDMが開発したロボット向け基盤モデル「Gemini Robotics」が利用されている。記者会見当日、ボストン・ダイナミクスはGDMとの提携を発表。数カ月以内にAtlasとGemini Roboticsを統合する共同研究を開始する。

 両社の提携のインパクトは大きい。米調査会社、ARC Advisory Group(アーク・アドバイザリー・グループ)のアナリスト、パトリック・アーノルド氏は「この協業は、次世代ロボットの『頭脳』を巡る競争において極めて重要な一歩だ」とみる。

 ロボットなどを制御するフィジカルAIに、市場の期待は高まっている。米Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)は、2050年までに世界で10億台以上のヒューマノイドが稼働すると予測する。

 現在は、実際にどのような用途でヒューマノイドが有効に利用できるかを各社が検討している段階だ。「(現代自動車グループと組むことで)自動車に焦点を当てているのは、現実的な出発点だろう。自動車業界は歴史的にロボット導入をリードしており、従来の固定式ロボットでは難しい作業における労働力不足の解消につながる可能性がある」(アーノルド氏)

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