米国防総省は、軍による同社の人工知能(AI)ツールの利用制限を求めたことへの報復として、Anthropicを違法に罰している可能性がある──米カリフォルニア州連邦地裁判事‌のリタ・リンは3月24日(米国時間)の審理でそう述べた。

国防総省が同社をサプライチェーンリスクに指定したことについて、リンは「Anthropicを弱体化させようとする試みのように見える」と指摘した。「(国防総省は)この契約紛争を公にしようとしたことに対して、Anthropicを罰しているように見える。もしそうであれば、憲法修正第1条に違反する可能性がある」

Anthropicは、トランプ政権が同社を安全保障上のリスクに指定したのは違法な報復にあたるとして、2件の連邦訴訟を提起している。同社は、自社AIの軍事利用に制限を設けるよう求めた後に、この指定を受けた。24日の審理はサンフランシスコで開かれた訴訟に関するものだ。

Anthropicは、この指定の仮差し止めを求めている。同社はこの措置によって、慎重な姿勢を強めている一部の顧客をつなぎ止められることを期待している。リンが仮差し止めを認めるには、最終的にAnthropicが勝訴する可能性が高いと判断する必要がある。判断は数日以内に示される見込みだ。

判事、指定には「懸念がある」と指摘

この争いは、AIが軍でどのように活用されつつあるのか、またシリコンバレー企業が自ら開発した技術の運用をめぐって政府にどこまで従うべきかという、より広範な議論を呼び起こしている。

国防総省は現在、自らを「戦争省(Department of War)」と称しているが、AnthropicのAIツールは重要な局面で期待通りに機能しない恐れがあると判断し、適切な手続きを踏んだと主張している。また、Anthropicが国家安全保障にもたらすとする脅威評価について、裁判所が再判断すべきではないと求めている。

トランプ政権側の弁護士エリック・ハミルトンは審理でこう述べた。「懸念は、Anthropicが単に問題提起や反論を行うだけでなく、『国防総省のやり方には問題がある』としてソフトウェアに手を加え、国防総省が期待する形で動作しないようにすることだ」

リンは、Anthropicが国防総省にとって適切なベンダーかどうかを判断するのは自分ではなく、国防長官ピート・ヘグセスの役割だとした。一方で、単に政府契約を打ち切る以上の措置を講じたことが法的に許されるかどうかを判断するのは、自分の役割だと話した。

またリンは、政府請負業者によるAnthropicのAI「Claude」の利用を広く制限する今回の指定や関連指示について、「国家安全保障上の懸念に見合った内容になっているようには見えない」とし、「懸念がある(troubling)」との認識を示した。

ヘグセスに請負業者の利用禁止権限はない

先月、政府との対立が激化するなかで、ヘグセスはXに「即時発効として、米軍と取引する請負業者、サプライヤー、パートナーはいかなる商業活動においてもAnthropicと関係をもってはならない」と投稿した。

しかしハミルトンは24日、国防総省と無関係の業務においては、軍事請負業者によるAnthropicの利用を禁止する法的権限はヘグセスにはないと認めた。リンに投稿の理由を問われると、「わからない」と答えた。

リンはさらに、国防総省がAnthropicのツール利用から移行するにあたり、より穏当な手段を検討したのかどうかを問いただした。リンは、サプライチェーンリスク指定は通常、外国の敵対国やテロ組織などに対して用いられる強力な措置だと指摘した。