ただし、26年に紹介されるものは、あくまでデモンストレーションに留まるだろう。ミスがあれば誰かの家を物理的に破壊しかねない技術を販売するには、さらなるテストが必要だ。
Ⅲ. バブルの崩壊と大規模レイオフ
25年は、中国のDeepSeekが「高性能なAIシステムをつくるのに大量の最先端GPUは必要ない」ということを世界に示すことで幕が開けた。これにより、チップの売上が激減するとの懸念から一時的な株価暴落が起きたが、その懸念は現実のものとはならなかった。
だが26年は、より大きな、そしてまたしても一時的な下落局面を再び迎える可能性がある。大手AI企業は、急成長期を経て、成功した投資を倍増させ、苦戦しているベンチャー事業を整理するために、経営の再調整を迫られる可能性がある。そして、その動きはテック評論家から、AIデータセンターや研究者への過剰投資の兆候とみなされるだろう。
OpenAIの従業員数は、同社データによると、過去2年間で5倍の約4,500人に膨れ上がった。同社はグーグルとの競争だけでなく、多くの課題に取り組んでおり、Broadcomと共同で独自チップを設計するなど、多くの新たな分野にも進出しているため、人員増は正当なものとみなされるかもしれない。だが現在、最適なポジションに最適な人材が配置されているのだろうか。新たに加わった経営陣が別の見解をもてば、設立10周年を迎えたOpenAIは26年、初の大規模レイオフを実施する可能性がある。そうなれば、ほかのAI研究所もOpenAIに倣って組織再編に動く可能性がある。
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OpenAIの広報担当者、ジェイソン・デュトロムは、「ChatGPTは広く普及しているかもしれませんが、わたしたちはまだ比較的小規模なチームです。26年も引き続き採用を続け、人々に愛される製品を開発していくことを楽しみにしています」と述べている。
一方、AIブームに沸く株式市場が冷え込む前に、ピーク時の評価額から利益を得ようと新規株式公開(IPO)を試みる企業も現れるだろう。IPOの見通しを調査するアナリストたちは、チャットサービスのDiscord、決済サービスのStripe、クラウドプラットフォームのDatabricksなど、常に噂される企業を筆頭に、26年には多くのIPOを予想している。
とはいえ、IPOの準備は容易ではなく、ウォール街の強気ムードを活かすタイミングを見極めるのはさらに困難だ。そして、その切望される「チャンス」を逃した企業が、さらなる人員削減の波に加わることになるかもしれない。
Ⅳ. AIが従業員の作業をすべて習得する
企業は何年も前から、従業員の不適切な行動を監視するために従業員のコンピューターに「ボスウェア(従業員監視ソフト)」を導入してきた。だが、わたしが懸念しているのは、来年にも現実となりそうな新たな事態だ。それは、AIエージェントを訓練して一部の作業を自動化するために、従業員のあらゆる作業を記録する監視ソフトウェアの登場だ。
例えば、カスタマーサービスの問い合わせ対応など、手作業を減らす「エージェント型AI」はすでに普及しつつある。これらのツールは通常、コンピューターが人工的に生成したデータや、作業シミュレーションを行うために雇われた作業員の活動を監視して得られたデータで訓練される。
だが、企業がより複雑な業務や、単純ではあるが手順の多いタスクを自動化しようとすれば、それぞれの職場環境に特化した訓練データが必要になる。そこで登場するのが、ユーザーのクリック、スクロール、タイピングといった一挙手一投足を残さず吸い上げるソフトウェアだ。労働者の権利を守る活動家で、雇用テックに詳しいウィルネイダ・ネグロンは、「それを可能にする技術はすでに存在しており、現実になりつつあります」と指摘する。
