米経済に関税の影響が表れ始める中で、ウォール街のストラテジストらは経済がスタグフレーションに傾きつつあると警鐘を鳴らしている。
投資家の多くは今のところ、そうした警告にあまり反応を示していないが、インフレが高止まりし経済成長が鈍化する局面が迫っていることを示唆するデータが出始めているとストラテジストは指摘する。
ドルを除けば、市場にスタグフレーションへの警戒感が広がる兆しはまだない。米株市場ではS&P500種株価指数が今年に入って複数回最高値を更新し、米国債指数も2020年以来の好調なパフォーマンスを示している。一方、ドルは主要通貨バスケットに対して8%下落した。
市場ではインフレが抑制されているとの見方が強く、トレーダーらは今年中に米連邦準備制度理事会(FRB)が2回利下げを行うとの予想に賭けている。最初の利下げは早ければ来月にも実施されるとの見方が広がっている。1日発表された雇用統計が労働市場の減速を示したことが利下げ期待をさらに高めた。
しかしストラテジストは、トランプ米大統領による大規模な関税が7日に発効したことで、利下げの見通しが崩れる可能性があると警告する。コスト上昇分が消費者や企業に転嫁されれば、インフレ圧力が強まる恐れがあるためだ。
アポロ・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は7日のリポートで「市場は明らかに利下げを織り込んでいるが、インフレ上振れリスクは大きい」と述べ、「結論として、スタグフレーションというテーマが重みを増している」と分析した。
米雇用統計発表を受けて米国債は2023年終盤以来の大幅な上昇となったが、その後は勢いを失い今週はほぼ横ばい。10年債利回りは4.22%前後で推移している。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、TDセキュリティーズ、ブラウン・ブラザーズのストラテジストもスロック氏と同様の警告を発している。
BNYメロンのマクロストラテジスト、ジェフリー・ユー氏は「関税政策はまだ流動的だが、最終的に成長を抑えインフレを押し上げるスタグフレーション的な影響を及ぼすだろう」と述べ、「今まさに、そうした事態が進行しているように見える」と指摘した。
インフレ率はなおFRBの目標を上回る水準にとどまっており、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.7%上昇だった。7月のCPIは12日に発表される予定で、エコノミストの予想中央値は前年同月比2.8%上昇となっている。

WATCH: President Donald Trump’s sweeping new tariffs officially took hold Thursday after months of chaotic threats and reversals. Bill Faries reports.
Source: Bloomberg
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのストラテジストは4日のリポートで「インフレ率は目標を上回ったまま高止まりしている」と指摘し、FRBが年内に利下げを行わないとの従来の見通しを維持した。起ころうとしているのは「リセッション(景気後退)ではなくスタグフレーションだ」と強調した。
原題:Stagflation Concerns Ripple Through Wall Street as Tariffs Hit(抜粋)
