元日本銀行理事の早川英男氏は、トランプ関税を巡る日米交渉が決着して経済・物価を巡る不確実性が後退すれば、日銀は最速で10月にも追加利上げを行う可能性があるとの見解を示した。

  早川氏は14日のインタビューで、先行きも物価が2%程度で推移することが見込まれる中、「物価にフォーカスするなら、日銀は早めに利上げした方がいい」と指摘。米関税は市場の想定ほど日本経済に「影響しない可能性がある」とした上で、追加利上げは「霧が晴れれば年内にあってもおかしくない。10月でもいい」と語った。

Former Bank of Japan Executive Director and Senior Executive Fellow at Fujitsu Research Institute Hideo Hawakawa Interview

元日本銀行理事の早川英男氏

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  しかし、足元までの物価は強めで推移しているものの、米関税政策を受けて「景気の先行きが不確実な中で、物価だけで今利上げするのは厳しい状況だ」ともみている。追加利上げ後に景気が失速すれば、日銀のせいで景気が悪くなったとの批判が必ず出るとし、「植田和男総裁は何度も経験しているだけに、それは避けたいだろう」と述べた。

  トランプ米大統領は7日、日本からの輸入品に25%の関税を賦課すると発表した。発効日は8月1日とし、交渉のための猶予期間が与えられた。早川氏はトランプ関税の日米交渉が決着すれば、日銀が追加利上げを検討する環境が整うとの見方だ。

  複数の関係者によると、米関税政策を巡って先行き不確実性が高い状況が続く中、日銀は30、31日の金融政策決定会合で0.5%程度の政策金利の維持を決める見通し。新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しは、コメを中心とした食料品価格の上昇を反映し、2025年度の上方修正を検討する見込みだ。

物価見通し

  早川氏は、コアCPIの見通しについて、25年度が控えめに見て前年比2.5%-2.6%、26年度が1.8%-1.9%に上方修正されると予想。26年度は市場の早期利上げ観測を高めないためにも、2%に達しない水準になると見込む。前回の5月1日に公表した展望リポートでは、それぞれ2.2%上昇、1.7%上昇だった。

  不確実性が引き続き高い中で経済見通しはこれまでの想定を踏襲せざるを得ないとする一方、「はっきりしているのは物価の上振れだ」と指摘。足元の物価動向は、コメ以外の品目も上昇しているとし、労働力不足に伴う賃金上昇の価格転嫁が進んでいるとみている。

  日銀は、経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き利上げで金融緩和の調整を行う方針を示している。関係者によると、新たな展望リポートでも、政策判断で重視している「基調的な物価上昇率」が、27年度までの見通し期間の後半に2%程度で推移するとのシナリオを維持する見通しだ。

  3年以上も日銀目標の2%を上回る消費者物価の上昇が続く中で、植田総裁が基調的な物価は2%に達していないと繰り返していることは「根拠が不明」と早川氏は指摘。その上で、帰属家賃や公共料金など動きの鈍いグループを重視しているのではないかとし、「それは基調ではなく、護送船団方式だ」と語った。