広瀬すず(22)は、邦画界を代表する女優・吉永小百合(76)を相手に、全くひるむことのない芝居を見せている。主人公は舞台となる「まほろば診療所」に在宅医として仲間入り。広瀬はここでしっかり者の看護師を演じている。初共演の受け止め方がユニークだ。
「雲の上の人すぎて。ざっくりとしか知らなかったので。プレッシャーより、うれしいというポジティブな感情しかなくて。まさか、ご一緒できるとも思っていなかった」。吉永は「怒り」(16年)を見た5年前から広瀬を記憶していた。「まだ10代で難しい役をやりこなしていた。今回、松坂(桃李)さんとすずちゃんの青春物語も見てほしい」。ほのかなロマンスが描かれている点にも注目だ。
「太陽のような存在で」。今作の成島出監督は撮影前、2人にそう告げていた。映画は限られた余命を生きる人たちが続く。対して、この2人は未来に向かうまぶしい光。2人がラーメンを食べながら、胸の内を明かすシーンからも監督の意図は見て取れる。演者の感情を抑制。一挙一動に細かな指示が出された。
「切ないからといって、演じる自分たちが切なくしすぎるのは、ちょっと違うんだと学びました」。広瀬にとって大きな発見だった。淡々としたやり取りが、逆に見る者に内面の動きを伝える上で効果を生んだ。この難しい要求は、若手俳優の筆頭格である2人だったからこそ、できたともいえる。
偶然にも、吉永とは14歳でデビューという点で共通している。広瀬は是枝裕和氏、李相日氏ら名匠に早くから才能を見いだされ、映画女優の階段を駆け上がってきた。今年デビューから9年。時代こそ違うが、吉永はそのころ、すでに70本を超える映画に出演している。今回、特に衝撃を受けたのは、撮影現場での一体感を生む雰囲気。これが作品の行方を大きく左右する、ということだった。
「出演者だけでなく、関わるスタッフ一人に至るまで『吉永さんのために』と現場は愛と尊敬であふれていた。ものすごいこと。でもこれは吉永さんが、これまで積み重ねてこられた結果なんですよね」。公開を目前に控え、改めて思うという。「現場の雰囲気を変える吸引力にも似た空気。私はその空気の“波”に乗っかって演じ終えることができたと思っています」(浦本 将樹)=おわり=
◆広瀬 すず(ひろせ・すず)1998年6月19日、静岡県生まれ。22歳。姉は女優の広瀬アリス。2012年、「Seventeen」の専属モデルに。15年、映画「海街diary」で報知映画賞、日本アカデミー賞など新人賞を総なめ。同年に「学校のカイダン」(日テレ系)でドラマ初主演。16年、映画「ちはやふる」シリーズで単独初主演。18年、NHK紅白歌合戦で紅組司会。19年、NHK連続テレビ小説「なつぞら」のヒロインに。現在放送中の日テレ系「ネメシス」(日曜・後10時半)で櫻井翔とダブル主演。特技はバスケットボール。身長159センチ、血液型AB。