小泉秀人の時事ネタ経済学
【小泉秀人の時事ネタ経済学】造船が教える「供給の時間差」、供給・契約・返済の3つの時計でAI投資を読む
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小泉 秀人
一橋大学イノベーション研究センター専任講師
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2026.10.24(土)
「コアウィーブ・ショック」はリーマン前夜の再来か(写真:ロイター/アフロ)
この連載で、AIブームをバブルにする条件は技術の真贋ではなく、本物の技術への期待、緩んだ融資規律、本当のコストが見えるまでの時間差の3点セットだという議論*1を紹介した。10月、米国のAI向けクラウド企業コアウィーブ(CoreWeave)の株価と社債が急落し、日本の証券会社のレポートにも「リーマン前夜」の再来かという問いが登場した*2。本稿は、この問いに少し遠回りをしながら回答してみたい。1931年にオランダの若い経済学者が見つけた、船の話から始めよう。
◎【AIブームの“請求書”】ハイパースケーラー「空前の好業績」の死角…データセンターは高速陳腐化、巨額調達の代償
GPUは足りないのに、なぜ売られたのか
CoreWeaveは、NVIDIAのGPUを大量に買い、その計算能力をMicrosoftやOpenAIに貸している会社である。いわばAI時代の「貸しビル業」だ。
その株価は10月21日の報道時点で月初から29%下がり、社債の利回りは15%前後まで跳ね上がった*3。社債の倒産に備える保険の料率は、5年以内に倒産する確率を6割超とみなす水準に達した*4。市場価格からの逆算であって、実際の倒産確率ではないが、尋常な数字ではない。
不安は1社にとどまらなかった。Oracleやソフトバンクグループの社債保険料も跳ね上がった*5。IMF(国際通貨基金)は10月13日、AI投資の失速による資産価格の調整を、世界の金融システムを揺るがしうる「顕著なリスク」に挙げている*6。
◎AI相場はいつまで持つのか、AI相場を支える巨額投資にIMFが警鐘、日本の株式市場と家計にも迫る「逆資産効果」
ここで奇妙なことに気づく。GPUは、今も足りていないのである。1年契約でNVIDIA「H100」を借りる料金は、昨年10月に1時間1.70ドルまで下がった後、今年3月には2.35ドルまで戻した*7。NVIDIAの財務責任者は、少なくとも2028年1月期の終わりまで供給が需要に追いつかないと述べている*7。需要は本物で、設備は足りず、貸出料は崩れていない。
それなのに、なぜ信用市場が先に悲鳴を上げたのか。