その方法の一つが、アンソロピックのアカウントを数千個も作成し、Claudeに対して狙いを絞った質問を大量に浴びせるというものだ。ライバルはその方法で得た回答を収集し、自社のAIモデルに同様のタスクの実行方法を学習させている。
そうした「蒸留」目的のアカウントや質問であっても、それらはすべてアンソロピックに収益をもたらす。だが、彼らは実質的に、同社の技術をコピーするために利用しているだけなのだ。
アンソロピックは、中国のAI企業がこうした行為に及んでいると繰り返し非難しており、その取り締まりを強化してきた。そして最近、同社はその取り組みが成果を上げていると説明している。
それによって、異例の問題が生じた。アンソロピックが自社技術を守ることに成功したせいで、皮肉にも(投資家に)報告される売上成長が減速している可能性があるのだ。
逆に言えば、2026年前半における同社の驚異的な成長の一部は、競合他社が対価を払って自社モデルをコピーしていたことで、人為的にかさ上げされていたのではないか、という疑問も浮上する。足元の減速のうち、どの程度がこの取り締まりの影響なのかは明らかではない。
実際、アンソロピックは先週、蒸留による売上高は今後さらに減少する見通しだと投資家に伝えた、とジ・インフォメーションは報じている。
テック業界において、こうした事例は今回が初めてではない。
ツイッター(Twitter)が上場した際、投資家は同社のユーザー数の伸びを注視していた。しかし、アカウントのなかには実在の人間ではなくボットによるものが交じっていたため、投資家が同社の健全性を判断する指標が分かりにくくなってしまったのだ。
ツイッターは規制当局への提出書類で、偽アカウントや自動化されたアカウントの推計値を開示し、投資家がその成長を見極めるためのより多くの材料を提供した。その結果、ユーザー数の増加を示す数値は下方修正されたのだ。
アンソロピックも同様の課題に直面するかもしれない。同社は現在、企業評価額が1兆5000億ドル(237兆円)以上になる可能性があるIPOの準備を進めている。
重要なのは、蒸留に伴う売り上げが減ったからといって、アンソロピックの事業そのものの弱体化を意味するとは限らない点だ。単に、同社の技術に便乗しようと対価を払う競合が減っただけという見方もできる。
もちろん、競争の激化などほかの要因が成長を鈍らせている可能性もある。
だが、投資家は、真の顧客による需要とAIをコピーしようとする企業からの売上を明確に分けて判断する必要があるだろう。
顧客を失うことが、必ずしも悪い結果を招くとは限らないのだ。
筆者は10月14日、この件についてアンソロピックに問い合わせたが、記事執筆時点までに回答はなかった。

流出したアンソロピックのIPO目論見書が浮き彫りにした「驚愕の数字」と巨額投資のツケ…識者はどこに注目したのか | Business Insider Japan