集会は拍手喝采なのに「トランプ離れ」が止まらない…支持率31%の大統領がプーチンに頼ってまで欲しいもの | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

山岡 鉄秀

ジャーナリスト、情報戦略アナリスト

中間選挙を前に、トランプ大統領の支持率が31%と低迷している。ジャーナリストの山岡鉄秀さんは「トランプは中間選挙に勝つため、ロシアへの経済的圧力や中国への抑止力といった長期の国家戦略まで捻じ曲げようとしている。しかし、それらが短期の選挙戦術として効いているかは疑わしい」という――。


2026年10月17日、米南部ケンタッキー州での選挙集会で、手を振るトランプ米大統領

写真提供=ロイター/共同通信社

2026年10月17日、米南部ケンタッキー州での選挙集会で、手を振るトランプ米大統領



ガソリン高騰批判への無茶苦茶な反論

「ロサンゼルスを壊滅させればいい。サンディエゴを壊滅させればいい」


“Let them take out Los Angeles. Let them take out San Diego.”


2026年10月5日、ネブラスカ州の集会でドナルド・トランプ米大統領が放った言葉である。


米国大統領が、自国の都市を敵に破壊させればいいと言う。前後関係を確認すると、イラン戦争によるガソリン価格の上昇を批判する人々への、反語的な反論だと分かる。


「俺がイランを攻撃したことに文句を言うのか。ならば、イランの核ミサイルでロサンゼルスやサンディエゴが破壊されてもいいのか」


国家の安全のためなら、ガソリン高など小さな代償だというわけだ。


だが、イランが米本土に届く核ミサイルを実戦配備していたという証拠は確認されていない。トランプは、現に発生している戦争の経済的負担を、起きてもいない最悪の事態と比べて正当化している。これは政策説明ではない。聴衆の恐怖心に訴える政治的レトリックである。当然、カリフォルニア州の政治家たちは強く反発した。


「アメリカ湾」の次は「トランプ海」

最近のトランプは、こうした耳を疑う発言を次々と繰り返している。


トランプは2025年、メキシコ湾を「アメリカ湾(Gulf of America)」に改称する大統領令を発した。2026年8月には、米国とカナダが共有するオンタリオ湖を「アメリカ湖(Lake America)」に改める大統領令に署名した。カナダや国際社会がそれに従う義務はない。


それでも満足しなかったらしい。10月10日、テネシー州の集会では、大西洋か太平洋を「トランプ海(Trump Ocean)」と呼ぶ案まで口にした。冗談交じりとはいえ、現職大統領が自分の名を大洋に冠するという発想は尋常ではない。


10月5日のネブラスカ州での演説では、こんな発言も飛び出した。


「最近の芝刈り機を始動させるには、MIT(マサチューセッツ工科大学)で成績上位の学生でなければならない」


そして、複雑な仕組みは自分が撤廃したと胸を張り、芝刈り機を始動させるしぐさを披露した。会場は拍手と歓声に包まれた。


背景には農業機械の修理をめぐる規制緩和がある。だが、機械を修理する権利と、始動操作の複雑さは別の問題だ。そもそも今の芝刈り機には、ボタン一つで動く製品も珍しくない。


一見、支離滅裂である。しかし、単なる混乱として片づけるべきではない。一連の言動を読み解く鍵がある。11月3日の米国中間選挙だ。