Innovative Tech
公開
2026年10月16日 12時00分
著者

山下(Seamless)
[ITmedia]
Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米Microsoftに所属する研究者らが発表した論文「Adoption and Impact of Command-Line AI Coding Agents: A Study of Microsoft’s Early 2026 Rollout of Claude Code and GitHub Copilot CLI」は、社内の数万人のソフトウェアエンジニアを対象に、コマンドライン上で動くAIコーディングツール(Anthropicの「Claude Code」やGitHubの「Copilot CLI」)の利用状況と、それが生産性に与える影響について調査した研究報告だ。
調査期間は2026年1月5日から4月29日までの4カ月。分析の結果、エンジニアが新しいAIツールを最初に試すきっかけは、職場の人間関係にあることが分かった。日常的にコードをチェックし合う同僚や、直属の上司がツールを使っていると、自分も使い始める確率が高まる。
具体的には、2つ上の上長(上司の上司)を同じくする同僚の4分の1以上が直近2週間に使っていた場合では、ツールを試すオッズが最大で216%も跳ね上がった。直属の上司が使っていれば82%、普段コードレビューを交わす相手の4分の1以上が使っていればオッズが54%上がった。
一方で、ツールを試用で終わらせず継続して使い続けるかどうかは、本人の普段のコーディング活動量に関連していることが明らかになった。日頃からたくさんのコードを書き、頻繁にプルリクエストを出している多忙なエンジニアほど、AIの恩恵を実感してツールを定着させる傾向が強かった。

過去14日間における周囲(レビュー相手、上司の上司を同じくする同僚、直属の上司)のCopilot CLI使用状況が、自身の初回利用(青丸)と継続利用(オレンジの四角)のオッズに与える変化を示したグラフ
ただし、以前から別の開発画面で既存のAIツールを使っていた層は、新しいツールを試しはするものの、使い慣れた元の環境のほうがいいと感じるのか、定着しにくいという結果も出ている。
実際の仕事の成果となる生産性への影響については、AIツールを導入初週に利用していたエンジニアは、使わなかった場合と比べて、完了させた仕事(マージされたプルリクエスト)の数が平均して24%も増加した。

導入初週にツールを使ったエンジニアの1日あたりマージ済みプルリクエスト数
この効果は、導入直後のテンションが上がっている時期だけの一時的なものではなく、調査が行われた4カ月間にわたって安定して持続していた。
利用したツール別に見ると、Claude Code利用者の生産性向上が11.4%だったのに対し、Copilot CLI利用者は24.9%と差がついた。

ツールを使わなかった週と比べて、それぞれのツールを使った週にプルリクエスト数がどれだけ増えたかを示したグラフ。Claude Code(緑)が約11%増、Copilot CLI(橙)が約25%増
Source and Image Credits: Murphy-Hill, Emerson, Jenna Butler, and Alexandra Savelieva. “Adoption and Impact of Command-Line AI Coding Agents: A Study of Microsoft’s Early 2026 Rollout of Claude Code and GitHub Copilot CLI.” arXiv preprint arXiv:2607.01418 (2026).
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この連載の記事をもっと見る
この記事の著者

山下(Seamless)
関連記事