Microsoft AI部門の最高経営責任者(CEO)を務めるMustafa Suleyman氏は、AIによって今後10年間に自動化される仕事は全体の約5%にとどまるとする研究者の予測をXで紹介した。この発言について、米ITメディアのWindows Latestが10月7日に報じている。
同氏は2026年2月、ホワイトカラー業務の大半が12~18か月以内にAIで自動化される可能性に言及しており、今回紹介した予測との違いが注目される。
同氏はノーベル賞受賞者でMIT教授のDaron Acemoglu氏による予測を紹介。今後10年間でAIによって自動化される人間の仕事は全体の約5%にとどまるとの見方を示した。その後も教授の主張を要約し、雇用喪失の懸念は「誇張されている」と指摘した。
以前は「12~18か月で業務の大半が自動化」と発言
Suleyman氏は2月、Financial Timesの取材で、法律家、会計士、プロジェクトマネージャー、マーケティング担当者など、コンピューターを使って仕事をする職種について「今後12~18カ月以内」に業務の大半がAIによって完全自動化される可能性があると述べた。この予測の期限は2027年2月から8月に当たる。
6月にはThe Vergeのポッドキャスト「Decoder」で発言の意味を説明し、対象は「仕事」そのものではなく「作業」であり、AIによって業務を短時間で処理できるようになると説明した。
そして今回、Microsoft AIが発行する雑誌「The Humanist Review」の創刊号に掲載されたAcemoglu氏のエッセイを紹介した。同氏は約2年前、米国経済における仕事の約20%を占める比較的単純な事務・認知タスクがAIによって自動化可能になる一方、実際に10年間で自動化されるのはその約4分の1、仕事全体の約5%にとどまると予測していた。エッセイでは、この推計について改めて説明している。
2月の発言がAIによる業務の自動化の可能性に言及したものであるのに対し、今回紹介した予測では、技術的に自動化できるタスクと、実際に企業がAIを導入して自動化するタスクを区別している。両者は必ずしも矛盾するものではなく、AIの技術的な能力だけでなく、企業への導入速度も雇用への影響を左右することがうかがえる。
AIによる雇用への影響、各社の予測には隔たり
Anthropicの最高経営責任者(CEO)を務めるDario Amodei氏は1月、AIは5年以内に初級レベルのホワイトカラー職の50%を奪うと予測した。一方、同社の6月のレポートでは、調査対象となったClaudeユーザーの10%が今後12カ月以内に失職する可能性が高いと回答した。また、3分の1以上が、12カ月以内にAIが自身の業務の大半、またはほぼすべてをこなせるようになると予想している。
GoogleもAIの利用実態に関する調査結果を公表している。同社の調査では、一般職におけるAIの利用率は21%で、タスクの完全自動化は10%未満だった。ただし、これらは現時点でのAIの利用状況を示したものであり、将来の雇用への影響を直接予測したものではない。
OpenAIもAIによる雇用への影響について分析している。同社は、職業そのものが一律に置き換わるのではなく、職業を構成する個々のタスクがAIによって自動化される可能性に着目している(参考資料:「AI による雇用の変化のモデル化 | OpenAI」)。
AIは人間の代替ではなく能力の補完に活用すべき
Acemoglu氏の見解は、AIによる雇用への影響を楽観視する内容を含むが、それだけではない。現在の方向性が続けば、AIは格差を拡大し、大規模な雇用減少を招く一方、生産性向上という期待された効果を十分に生まない可能性があると警告する。問題への対応として、AIを人間の代替ではなく、人間の能力を補完する方向で開発する必要があるとしている。
具体例として、同氏は教育現場で目指すべき導入の方向性を示した。AIを教師の代替にするのではなく、生徒が苦手とする教科や課題の特定、教師が授業を小グループに分けて対応できるようにする利用法を提案した。実際に同氏の研究チームは、そのための試作物を開発し、評価を進めているという。
杉山貴章 すぎやまたかあき
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