Meta、AIエージェント向けモデル「Muse Wonder」「Muse Wonder Full」を発表 ——会話の情報を引き継ぎ、長時間の開発作業にも対応

Metaは2026年10月12日、AIモデル「Muse Wonder」と「Muse Wonder Full」を発表した。日常生活や仕事での作業を支援するAIエージェント向けのモデルで、コーディングや専門文書の理解などの用途を想定している。過去の会話から必要な情報を取り出し、難しい作業でも試行錯誤しながら取り組み続けられるという。

Muse WonderはAPIでも提供⁠、FullはMuse Codeの上位プラン向け

Muse Wonderは発表当日からMeta Model APIとMuse Codeで利用できる。Muse Codeは、ターミナルで複数のエージェントを使って開発を進めるツール。シリーズで最も高い能力を持つとMetaが位置付けるMuse Wonder Fullも、同日からMuse Codeで利用できる。製品ページによると、Fullの利用対象はPower UsageまたはMaximum Usageプランの契約者に限られる。

一方、2026年9月に発表した個人向けAIエージェントサービスのMuseには、Muse Wonderを今後導入し、契約者から順次展開する予定としている。

100万トークンの文脈に対応⁠、過去の会話を生かして作業を続ける

両モデルはテキスト、画像、動画、音声を入力として扱い、テキストを出力する。モデルカードによると、一度に扱える文脈の長さを表すコンテキスト長は、推論時に100万トークン。トークンは、文章などを処理する際のデータ単位にあたる。

Metaは、法律、金融、健康といった専門分野の知識を活用する用途も想定している。具体例として、賃貸契約の理解や金融・健康情報の整理を挙げている。

また、両モデルは会話をまたいで重要な情報を引き継ぎ、現在の作業で必要になったときに取り出せるという。Metaは、この記憶能力をActive Memoryと呼んでいる。

Metaの社内評価であるMemoryBenchでは、6万4000〜10万トークンの会話から、重要な情報を正しく取り出せるかを測っている。会話には、無関係な話題や、それまでの内容と矛盾する情報、更新された情報を交える。回答はLLMが採点基準に沿って評価する。

この評価で、Muse Wonderは85.6、Muse Wonder Fullは85.5を記録した。比較対象のGPT-6 Astraは81.4、Claude Fable 5.1は79.0、Claude Opus 5.5は81.5で、両モデルともこれらを上回った。

また、両モデルは作業が行き詰まったり、新しい情報が加わったりしても、別の進め方を試しながら作業を続けられるという。Metaは、この能力をActive Focusと呼んでいる。必要に応じて利用者へ質問し、重要な操作の前に確認する振る舞いも含まれる。

コーディング評価の比較と利用上の注意

Metaは、こうした記憶と作業継続の能力を組み合わせる用途として、ソフトウェア開発を挙げている。要件を踏まえながらコードの変更、テスト、修正を繰り返す長時間の作業を想定している。

モデルカードには、他社モデルを含む評価結果と測定方法が掲載されている。以下に、コーディング関連の3つの評価結果を示す[1]。Terminal-Bench 4.0-AAはターミナル環境での課題、DeepSWE v1.1は既存リポジトリでの長時間の開発、SWE-Marathonはさらに長期間のプロジェクトを扱う。

モデル
Terminal-Bench 4.0-AA
DeepSWE v1.1
SWE-Marathon

Muse Wonder
52.0
78.8
53.1

Muse Wonder Full
57.1
79.0
57.5(xhigh)

GPT-6 Astra
59.1
74.1
42.5

Claude Fable 5.1
52.0
67.4
45.6

Claude Opus 5.5
59.6
74.2
46.3

推論設定は原則としてmaxで、Muse Wonder FullのSWE-Marathonのみxhigh。掲載値では、WonderとFullはDeepSWEとSWE-Marathonで比較対象の他社モデルを上回る一方、Terminal-BenchではFullもGPT-6 AstraとClaude Opus 5.5を下回る。

安全面では、Metaは個人情報を許可なく共有しないことや、有害な行為への協力を拒否することを目指して学習させたとしている。一方で、開発者が自身のコードの脆弱性を見つけるといった防御目的の利用には対応できるようにしたという。

利用上の注意として、Metaはモデルが誤った応答を返したり、複数の手順を踏む推論でミスをしたりする可能性もあると説明している。開発者には用途ごとの評価に加え、取り消せない操作の前に人間が確認する仕組みなど、モデルを組み込むシステム側にも保護策を設けるよう勧めている。

[1] 数値は%で、高いほどよい。Terminal-Benchは正答率、DeepSWEとSWE-Marathonは1回の試行で課題を解決できた割合(pass@1)を示す。評価主体や実行環境が異なるため、スコアの差がそのままモデル単独の性能差を表すとは限らない。詳しい評価条件はモデルカードを参照。