記事のポイント
OpenAIはWebサイトに送客せず、ChatGPT内でブランドのAIエージェントと直接会話を始める新たな広告フォーマットを試行中で、ウェイフェアなどが実証実験に参加している
見込み客の選別や新たな顧客接点の創出という利点がある一方、現状ではROIの低さや自社Webサイトでユーザーデータを収集できない点などが懸念材料として存在する
Googleの検索やSNSのスクロールに続く新たな会話型広告の確立をめざしており、既存チャネルのコスト高に直面する広告主にとって有力な選択肢となる可能性がある
OpenAIの描くChatGPT広告は、ブラウザーのタブを開くものではなく、ブランドと消費者の「会話を開く」ものであるようだ。
OpenAIは一部のクライアントを対象に新しいタイプのAIネイティブ広告を試験導入した。チャットボットアプリならではのフォーマットで、広告をクリックすると、ユーザーを広告主のWebサイトに遷移させる代わりに、AIエージェントとの会話がスタートする。
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Digidayはこのフォーマットを動画で確認した。新機軸の柱は、出稿企業が広告内に自分たちの用意したビジネスエージェントを設置できる点にある。ユーザーが「チャットで質問」などのCTA(行動喚起)ボタンをクリックすると、ChatGPT内に設置されたブランド仕様のチャット画面に移動し、そこでブランド側のAIエージェントとやり取りできる。
これはOpenAIが構想する「AIネイティブ広告」の初期バージョンで、消費者とAIアシスタントの会話を前提に設計された広告だ。AI回答の末尾に表示される基本的なテキスト広告はChatGPTの無料プランとGoプランですでに導入済みだが、AIネイティブ広告はこれとは一線を画するもので、いわば広告そのものが会話の入り口となる。
実証実験に参加するウェイフェアと先行事例の共通点
9月8日にサンフランシスコで開催された米金融大手ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)主催の「コミュナコピア+テクノロジーカンファレンス(Communacopia + Technology Conference)」で、OpenAIの最高財務責任者(CFO)を務めるサラ・フライアー氏はChatGPTの回答の下部に表示される広告について、「基本的な出発点」にすぎないと述べている。そして、よりAIネイティブな広告がどのようなフォーマットになるのか、「初期的な形」はすでに見えはじめているという。
「AIの真骨頂ともいうべき広告形式が本格的に出てくるのはこれからだ」とフライヤー氏は語った。
ChatGPTの会話型フォーマットにアクセスできる「一部広告主」の数は不明だが、Digidayは広告のスクリーンショットでウェイフェア(Wayfair)の参加を確認しており、同社もこれを認めている。
ウェイフェアでペイドメディア部門の責任者を務めるモーガン・ブラウン氏はこう話す。「たしかに、ウェイフェアはOpenAIの『スポンサードエージェント』実証実験に参加している。顧客ができるだけ多くの情報に基づき、間違いのない意思決定を行うにあたり、会話型コマースがどう貢献できるのか、検証したいと思っている。ショッピング体験の改善につながる新たなテクノロジーがあれば、必ず試してみる。今回の実証実験もAIネイティブなコマースにどう取り組むべきかについて、新たな知見を与えてくれるだろう。現在は限られた規模での試験運用で、正確な商品情報を提供すること、広告であることを告知すること、人間のオペレーターやカスタマーサービスへの引継ぎを確保することなど、必要な安全措置は講じている」。
うまくいけば、Webサイトへの送客にとどまらず、消費者との接点やコミュニケーションに新たな道が開かれるかもしれない。
「ユーザーをワッツアップ(WhatsApp)に誘導するメタ広告に似ている」と、アキュラキャスト(Accuracast)のグループCEOを務めるファルハド・ディヴェチャ氏は指摘する。「それは見込み客とのコミュニケーションを開始する窓口であり、これを起点にカスタマーサービスや営業担当者に引き継ぐべき確度の高い見込み客を選別したり、購入ページに遷移させたりできる」。
ChatGPT広告の開始から7カ月 将来有望も実績は未知数
新たなフォーマットが投入される一方、ChatGPTの広告プラットフォームとしての評価はいまひとつ定まらない。ChatGPT広告を利用している広告主に話を聞くと、皆「期待はできるが、メディアプランにおける役割について確たる結論を出すのは時期尚早だ」と口をそろえる。この状況が変わるまで、あるいは相応のリターンが確保できるまでは、ChatGPT広告への投資は比較的小規模、かつ追加予算や実験的な予算の範囲内にとどまらざるを得ない。
「OpenAIが広告商品の拡充に注力するのは理にかなっている」と、ジーノグループ(Zeno Gourp)でペイドメディア担当シニアバイスプレジデントを務めるシャムスル・チョードリー氏は話す。「広告主から見れば、ChatGPTはもっとも注目すべき最新のプラットフォームだが、その反面、費用対効果(ROI)は十分な水準に達していないのが実情だ」。
OpenAIが提案する会話型の広告フォーマットが、プラットフォーム内で完結するショッピング体験を実現できるなら、ROIの問題を改善する一手となるかもしれない。一方で、疑問も生じる。特に小売業にとって、潜在顧客を自社のサイトに送らず、ChatGPT内に引き留めておくことに果たしてメリットはあるのだろうか。
チョードリー氏はこう話す。「小売業は自社のWebサイトを通じてユーザーデータを収集したいと考えている。しかし、商品の発見や購入はいまやどこで起きてもおかしくない。消費者の注目と予算をめぐり、競争しなければならないことも理解している」。
タイミングも重要だ。年末商戦を間近に控え、広告主は1年でもっとも重要な四半期に向けて備えを進めている。多くの広告主がGoogleやメタなどで広告コストの上昇とリターンの横ばいに直面するなか、「シームレスなAIエージェント体験を提供できれば、広告費の一部を別のチャネルに移し替えたい広告主にとって、ChatGPT広告の新フォーマットは有力な受け皿となるかもしれない」とチョードリー氏は述べている。
まさに、「そこが最大のハードルだ」と同氏は指摘する。
主要な広告プラットフォームにはそれぞれ象徴的な広告フォーマットがあり、それらはまた、ひとつの時代を代表する広告形態でもあった。Googleはユーザーの検索行動と広告オークションを結びつけ、検索連動型広告を確立した。FacebookにはSNSのスクロール行動を収益化するニュースフィード広告がある。TikTokのインフィード動画広告はコンテンツと広告の境界を限りなく曖昧にするものとなった。OpenAIも同様に、自らを象徴する広告フォーマットを模索している。スクロールでも検索でもなく、「会話」に適したフォーマット。今回導入されたAIエージェント間のチャットはその初期的な試みのひとつなのかもしれない。
OpenAIはDigidayのコメント要請に回答しなかった。
[原文:OpenAI’s next ChatGPT ad format: click to chat, not to site]
Krystal Scanlon(翻訳:英じゅんこ、編集:京岡栄作)