Microsoft IQとは? AIエージェントが必要とする理由は? マイクロソフトの担当幹部が解説(アスキー) – Yahoo!ニュース

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写真:アスキー(アスキー)

 Microsoft IQとはどんなものであり、AIエージェントの生産性向上をどのように支援するのか。ウラグ氏が解説した。

AIエージェントの生産性向上のために必要な「コンテキスト」

 Microsoft IQは、昨年11月に開催された「Microsoft Ignite」で発表され、今年6月の「Microsoft Build」で一般提供が開始された、AIエージェント向けのナレッジベースである。「Microsoft Foundry(旧Azure AI Foundry)」「Microsoft 365 Copilot」「Copilot Studio」「GitHub Copilot」といったマイクロソフトのエージェント基盤、あるいはサードパーティのエージェント基盤からAPI経由でアクセスし、コンテキストを得ることができる。

 Microsoft IQの発想の原点となっているのは、「AIエージェントを、従業員と同様に信頼でき、生産性の高い存在にするにはどうすればいいのか?」という問いだ。

 さまざまなAI企業によるモデルの性能向上競争は現在も続いているが、いくらモデルが高度化しても、それだけでは従業員と同じように生産性の高い業務ができるようにはならない。なぜならAIは、その業務の背景知識、すなわちコンテキストを知らないからだ。ウラグ氏は、“新入社員のオンボーディング”のようなものだと説明する。

 「会社に新たな従業員を迎え入れたときには、自社の状況や業務背景を説明するはずだ。たとえば、自社のビジネス戦略や収益の段階、サプライチェーンの状況、このチームでは誰がマネージャーか、誰と誰が協働しているのかといった、幅広いコンテキストを教える必要がある」

 これと同じように、業務の前提となる「自社独自のコンテキスト」をエージェントにも教えなければ、いくら高度なモデルであっても業務上で適切な判断や処理ができないというわけだ。

 「すべての従業員が知っておくべきことは、一緒に働くすべてのエージェントも知っておくべきだ。そして、それこそがMicrosoft IQが実現していることである」

Microsoft IQを構成する「4つのIQ」:自社固有の組織、ビジネス状況、ルール

 Microsoft IQは、4つの異なるIQで構成されている。これら4つのIQは、それぞれ異なる種類のコンテキストをエージェントに提供する。ウラグ氏の説明を抜粋しよう。

■Work IQ:従業員がどのように働いているのか
 Microsoft 365の利用状況やドキュメントをMicrosoft 365 Copilotが分析することで、誰が誰と協働しているか、誰が誰に報告しているか、どのような議論が行われているか、どのようなドキュメントが作成されているかといったコンテキストを、API経由でエージェントに提供する。分析対象はOfficeドキュメント、OutlookメールやTeamsチャットなどの内容だ。

■Fabric IQ:ビジネスがどのように運営されているのか
 社内に分散するビジネスデータ資産をMicrosoft Fabricの「OneLake(統合データレイク)」に一元化し、セマンティックモデルとして提供することで、エージェントがビジネスの具体的な状況を把握できるようにする。Azure上のデータだけでなく、AWSやGoogle Cloud上のデータ、DatabricksやSnowflake、Oracle、Teradataなどのデータ基盤上にあるデータも統合することができる。

■Foundry IQ:エージェントがどのようにナレッジを引き出すか
 たとえばプロジェクト報告書、作業手順書、技術マニュアル、ケーススタディ、規制に関する文書などから、自社独自のナレッジベースを構築し、エージェントに提供する。これにより、エージェントは組織の仕組みやルール、自社特有のものを把握できる。

■Web IQ:現実世界の情報にどのようにつながるか
 特定のWebサイトから取得した情報をナレッジベースに組み込むことができる。これにより、エージェントはインターネット上の最新データに基づく推論処理を実行できる。

 これら4つのIQが組み合わさることで、Microsoft IQは「AIプラットフォームに加わる新たなレイヤー」になると、ウラグ氏は語る。

 「(このレイヤーは)企業固有のコンテキストをエージェントが活用できるインテリジェンスに変換し、大規模な意思決定やアクションをサポートするものになる」

 ここで重要なポイントは、導入する企業ごとに異なるMicrosoft IQが形成されることだ。ウラグ氏は“Your IQ(あなたの会社のIQ)”という表現で、この点を強調した。

 「4つのIQはマイクロソフトの製品群によって実現されるが、重要なのはお客さまのIQ、つまり“Your IQ”は、お客さま企業自身の知的財産であるという点だ。これにより、それぞれのお客さまに独自の価値が生まれ、エージェントが強力な成果を発揮できるようになる」

 なお、Microsoft IQは従量課金モデルで提供されるが、そのコストは割安で済むと語る。たとえばWork IQの場合、顧客自身でMicrosoft 365のAPIから情報を吸い上げてクエリをかけるよりも、あらかじめクリーニングされたデータが使えるWork IQのほうが、コスト効率が良いという。

 また、エージェントのトークンコストについても、Microsoft IQであらかじめ整理されたコンテキストをモデルに提供することになるため、処理効率が上がりコスト削減が可能になると話した。

自社固有のIQは重要な知的財産、ガバナンスやセキュリティも必要

 Microsoft IQは、外部のエージェントにコンテキストを提供する単一のプラットフォームとして構成されている。前述したとおり、マイクロソフト製エージェント、サードパーティ製エージェントのいずれも、Microsoft IQにAPI接続すればコンテキストを得ることができる。

 もうひとつ、プラットフォーム化のメリットとしては「ガバナンス」がある。エージェントに対して柔軟にナレッジを提供しつつも、“自社独自の知的財産”が漏洩しないように管理し、保護しなければならない。さらに、エージェントごとに必要最小限のアクセス権限を与えるよう、管理できることも重要だ。

 この点についてウラグ氏は、Microsoft IQではガバナンスと権限管理の機能が最初からプラットフォームに組み込まれているため、知的財産をきちんと保護しつつ、エージェントの迅速な展開が可能になると説明する。

 Microsoft IQの活用事例として、SCSKにおけるユースケースが紹介された。

 SCSKでは、Microsoft FabricとFabric IQを利用してビジネスデータを統合プラットフォームにまとめ、会社全体のビジネスパフォーマンスをタイムリーに把握できるようにして、迅速な意思決定につなげている。

 「従来は、そうしたビジネスデータが週次報告書、月次報告書、スプレッドシートなどいくつものデータソースに分散していた。そのため、たとえばビジネスパフォーマンスの変化の原因を理解するためには、複数の報告書やシステムを手作業で参照し、分析する手間がかかっていた」

 さらに、Fabric IQを通じてAIがビジネスデータを参照することで、新たに発生しそうな問題やその原因も早期に特定できるようになったという。これまでは、パフォーマンス低下の兆候を検出するまでに数日かかっていたものが、翌営業日には検出でき、原因分析の作業も「50%軽減された」と説明した。

 なおウラグ氏は、ユースケースのデモも披露した。Microsoft Fabricに蓄積された顧客データを用いて、Microsoft 365 CopilotのCoworkエージェントが離反リスクの高いプレミアム顧客を分析し、離反リスクの高い(対応を優先すべき)顧客をピックアップする、といったデモだ。

 「Coworkでは、設定スイッチひとつでFabric IQと接続できる。OneLakeに統合された顧客データを分析し、対応の優先度や指標の数値、出典なども整理する。離反防止のアクションを提案する資料も、数分程度で準備ができる」