
「そういえば、太宰さんはどちらのお生まれでしたか?」と、ある若手騎手から唐突に出身を尋ねられた話を、太宰啓介が苦笑交じりに明かしてくれた。
古くからの関係者に言わせれば、太宰の父、義人が麻布獣医科大学(現麻布大学)卒という異例のキャリアから騎手となり、その後は調教師としても活躍した人物だったというのは、一般常識のようなもの。自身がバリバリの二世騎手であることなど、改めて説明する必要すらなく47歳まで生きてきたのだ。
しかし言われてみれば、太宰義人が栗東トレセンで厩舎を構えていたのはほぼ20年も前の話(2007年に61歳の若さで逝去)。啓介自身もいつの間にかデビュー29年目のベテランになっている。かつて太宰厩舎でスタッフとして働いていた人たちもいまや片手で数えるほどしか残っていないのだから、20歳ソコソコの若い騎手の質問が他意のない素直な興味だったことも理解しなければいけない。
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