長野県に本社を置くハナマルキ。撮影:松本和大
1918年に設立し、味噌や塩こうじなどを製造する老舗メーカー・ハナマルキ。同社でレシピ開発を担当する社員が、約400件のレシピ資料を生成AIで検索できる仕組みを自ら作った。
ハナマルキでは、全社へ「Gemini」の定着に向け、利用規定の整備や社内研修、経営層からの発信などを重ねてきた。Google Workspaceのライセンスを持つ社員のうち、Gemini利用率は86%に達しているという。
ただ、現場からこうした活用が生まれた背景には、AI施策だけでは説明できない土台があった。社員が自ら業務の課題を探して改善効果を時間で測る、工場発の改善文化だ。
7月に開催された「Google Cloud Next Tokyo」で、ハナマルキはGeminiの社内活用を広げてきた取り組みを紹介した。同社情報システム部長の森香織氏に、レシピ検索が生まれた経緯と、その背景にある文化を聞いた。

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条件から検索できなかった約400件のレシピ
ハナマルキの森香織氏。撮影:松本和大
ハナマルキは、スーパーなどで販売する家庭用商品に加え、ファミリーレストランや弁当・給食事業者などに業務用の味噌や塩こうじも販売している。
営業担当者は、商品とともに具体的な使い方やレシピも提案する。
「例えば、液体塩こうじを使った照り焼きと、使っていない照り焼きを2つ持って行きます。『これくらいお肉が柔らかくなります』『こんなレシピはどうですか』と営業が提案するんです」(森氏)
約400件のレシピは、こうした営業提案を支える資料だ。
しかし、資料が増えるほど、必要なものを探すのは難しくなる。「鶏肉を使ったレシピ」「豚肉を使ったレシピ」といった条件から過去の資料を引ける状態にはなっていなかった。
そこでレシピ開発を担当する社員が、グーグルのAIツール「Gemini Notebook(旧:NotebookLM)」が使えないかと考えた。PDFなどの資料を登録すると、その内容について質問したり、複数の資料を横断して情報を探したりできるツールだ。
問題は、ハナマルキが当時利用していた環境では、PDFファイルの数が登録件数の上限を超えていたことだ。すべてをそのままGemini Notebookに読み込ませることはできず、PDFへのリンクを1つのスプレッドシートにまとめて登録した。
ところが、検索しても目的のレシピは出てこなかった。読み込ませたスプレッドシートに書かれている文字は検索できても、そこに並んだリンクの先にあるPDFの中身までは読んでくれなかったからだ。
レシピの転記作業を「Google Apps Script」で自動化
Google Apps Script(GAS)を使って転記作業を自動化した。撮影:松本和大
レシピ開発の担当者が次に考えたのは、PDFの中身であるレシピの文章そのものを、スプレッドシートへ移す方法だった。
レシピ1件当たりの文章量は多くなく、「鶏肉を切る」「調味料を加える」といった手順が中心だ。ただし、対象は約400件ある。人の手で一つずつコピー&ペーストするのは現実的ではない。
そこで担当者は、PDF内の文章をスプレッドシートへ集約する作業を「Google Apps Script(GAS)」で自動化した。
きっかけは、森氏との会話だった。
「私が『GASというものがある』と伝えたら興味を持ったようです。自分で調べて『こんなものができました』と、いきなり持ってきたんです」(森氏)
完成した検索の仕組みは社内で共有され、食材などのキーワードから必要なレシピを探せるようになったという。
レシピ情報をスプレッドシートへ集約する仕組みのイメージ。撮影:松本和大
森氏自身も、以前はGASを学ぼうと分厚い解説書を買ったものの、内容を理解できずに挫折した経験がある。今は、実現したい処理をGeminiに伝え、コードを書かせている。
「私だけではなく、各部署のIT部門ではない人たちが、自分たちでGASを使うようになっています」(森氏)
ただ、レシピ検索の仕組みが生まれたのは、Gemini NotebookやGASという手段があったからだけではない。レシピ開発の担当者は当時、社内の業務効率化プロジェクトに参加し、改善できる業務を探していた。
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工場で続けてきた「5秒を3秒にする」改善文化