グーグル・クラウド・ジャパンは7月31日、AIによるコードセキュリティを強化する「Google AI Threat Defense」(AITD)の国内提供を発表した。6社がローンチパートナーとして参加する。
AITDは、5月にグローバルで発表された新たなセキュリティソリューションとなる。クラウドセキュリティのWiz、脅威対策のMandiant、セキュリティ運用支援の「SecOps」、AIエージェントの「Gemini」に、パブリックプレビューの「CodeMender」を加えて構成されている。ローンチパートナーは、国内がNEC、富士通、日立製作所、日本を含むグローバルがNTTデータ、Accenture、Deloitteとなっている。グーグル・クラウド・ジャパンとローンチパートナーは、2026年末を期限にAITDを用いた無償のセキュリティアセスメントサービスを提供する。

「Google AI Threat Defense」の概要
同日の発表会に登壇した代表の三上智子氏は、AITDがGoogleのサービスやユーザーを保護する広範かつ長年にわたる実績に基づいて提供されるものと説明した。グローバルでの発表後すぐに国内企業の最高情報セキュリティ責任者(CISO)を対象にしたクローズドセミナーを開催して多大な反響があったとし、すでに国内メガバンクの3行がAITDの評価に着手していると述べた。
Google Cloud セキュリティおよびMandiantの最高技術責任者(CTO)を務めるSteve Ledzian氏は、AIとサイバーセキュリティを巡る情勢が目まぐるしく変化していると指摘する。特に4月のAnthropicによる「Claude Mythos Preview」の公開により、フロンティアモデルがサイバーセキュリティのあり方を大きく変え、脆弱(ぜいじゃく)性検出数の激増や、修正プログラムの開発や適用などの運用、AI悪用による攻撃シナリオの高度化への備えといったセキュリティ運用面でさまざまな課題が浮上した。
各種調査から、2026年の脆弱性検出数がAIの使用などにより2020年比で約3倍に増加しており、一方では脆弱性の発見からサイバー攻撃での悪用までの猶予期間が2020年の平均1.3年から2026年はわずか1.3日まで短縮されているという。

脆弱性検出数が増加し、悪用までの期間は短縮している
Ledzian氏は、こうした変化に直面しながらも、Googleがセキュリティ強化を最優先に、その運用性の向上に取り組んでいると説明。同氏によれば、例えば脆弱性報告への報奨金の支払総額が2010年以降で合計8160万ドル(約131億円)、2025年だけで1710万ドル(約27億円)に上った。2023年には脆弱性対策を高度化するためのフレームワーク「Project Naptime」の開発(公開は2024年7月)に着手し、セキュリティ運用へのAI活用を進め、2025年10月にAIエージェントによる脆弱性の検出、検証、修復を自動化するCodeMenderを発表。米国時間7月22日にCodeMenderのパブリックプレビューが開始され、今回のAITDの提供に至った。
グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 カスタマー エンジニアリング統括の渕野大輔氏は、同社がAI活用型セキュリティ防御で得た知見として、(1)サイバー攻撃者はソフトウェアプログラムの脆弱性だけを標的にしているわけではないこと、(2)AIエージェントを利用した防御では言語モデル以上にハーネスやコストが重要であること、(3)AIで検出された脆弱性の全てに対処せず優先順位付けで対応すること――の3つを挙げた。
これらに基づき今回のAITDでは、セキュリティ運用において、アタックサーフェス(攻撃対象領域)の縮小化、AIエージェントによる効果的な脆弱性対策、優先度の高いセキュリティ問題の修復、迅速な脅威の検知と対応を提供するとしている。

「CodeMender」の特徴
パブリックプレビューが開始されたCodeMenderは、「Gemini Enterprise Agent Platform」上で提供され、ハーネスにより保護されたコードセキュリティエージェントとして動作する。当初に選択可能なモデルは「Gemini 3 Flash」「Gemini 3.5 Flash」「Gemini 3.1 Pro」の3種類になる。将来は、より高性能なGeminiのモデルや、同社製以外のモデルも選択可能にする予定だとし、目的や費用対効果に応じたモデルを選べるようにするという。
なお渕野氏は、サイバーセキュリティ領域での最新版フロンティアモデルの使用が常時最適であるわけではないとも主張した。最新版フロンティアモデルが一般的に最高性能を有するとしても非常に高額なトークンコストを伴い、サイバーセキュリティでの利用ではより安価な純最新モデルでも同等性能の効果を得たり、より安価モデルを効果的に活用したりする選択肢もあるとした。
発表会では、IDC Japan リサーチマネージャーの山下頼行氏がゲストとして解説講演を行い、同社が企業のセキュリティ担当者など500人を対象として3月に実施した調査結果などを紹介。AI生成コードの脆弱性を懸念する回答者が全体では17.6%だが、従業員1000人以上の企業では23.6%に上り、セキュリティ運用における端末やサーバーの隔離、アカウント無効化、アラートの優先順位付け判断といった作業でのAIによる自動化を「許容できない」との回答者が50%前後を占めている現実があるという。
IDCの分析では、フロンティアモデルのセキュリティ活用が始まった5月以降、MicrosoftとGoogleのパッチ提供数が著しく増加している。同社はこの変化を「パッチの波」と呼んでいるそうだが、山下氏は「あおることは望ましくないが、個人的には『津波』と言えるほどの状況と感じている」とコメント。従来の脆弱性管理手法が通用しなくなる恐れがあり、AIによる自動化や効率化を検討する必要性を提起した。

IDCは、フロンティアモデルによる脆弱性検出と修正パッチの急増ぶりを「パッチの波」と表現
またベンダー側に、ユーザーに信頼されるAIが必須だとし、(1)自動化の根拠を説明可能、(2)人間とAIの役割分担、(3)AIの実績開示――の3つの要素を設計に取り入れたAIソリューションを提供すべきだと提言している。

(左から)グーグル・クラウド・ジャパン 代表の三上智子氏、IDC Japan リサーチマネージャーの山下頼行氏、Google Cloud セキュリティおよびMandiant CTOのSteve Ledzian氏、グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 カスタマー エンジニアリング統括の渕野大輔氏
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