AnthropicのClaude Mythos Previewがポスト量子暗号の強度を半分に減らす攻撃手法を発見 – GIGAZINE

2026年07月29日 11時26分
AI


ソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性を発見する能力が極めて高いAIモデル「Claude Mythos Preview」が、2つの暗号化アルゴリズムに欠陥を見つけたことが分かりました。

Discovering cryptographic weaknesses with Claude \ Anthropic
https://www.anthropic.com/research/discovering-cryptographic-weaknesses


暗号化アルゴリズムは現代社会の重要な基盤要素であり、「ウェブサイトの本物証明」や「秘匿データの暗号化」など多種多様な用途で使われています。暗号化アルゴリズムの弱点が見つかると、当該アルゴリズムに依存する電子メールやインターネットバンキングといった重要なサービスの安全性が脅かされることになります。AnthropicはClaude Mythos Previewを用いて複数の暗号化アルゴリズムを精査し、2種類のアルゴリズムに存在する欠陥を発見しました。

Claude Mythos Previewは、こうした暗号化アルゴリズムに欠陥を見つけています。

1つ目は「HAWK」と呼ばれるデジタル署名方式に対する攻撃です。2022年、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)が量子コンピュータに対して安全性を維持できる暗号システムを公募し、候補に残ったのがこのHAWKでした。HAWKは専門家による2年間にわたる審査を通過していましたが、Claude Mythos Previewはわずか60時間の作業で既存の攻撃方法をさらに改良し、実質的に鍵の強度を半分に減らしたとのことです。

攻撃手法の発見プロセス全体にかかったAPIコストの見積もりはおよそ10万ドル(約1600万円)。複数のAIエージェントが協力して作業して発見しました。調査の過程では、2つのAIエージェントが同じアイデアを検討し、片方は実現不可能だとして早々に却下したものの、もう片方が有効活用する方法を見出したため、この2体は互いにメッセージのやり取りを続け、最終的に両者とも有効な攻撃手法を発見したそうです。


2つ目は2001年にNISTによって採用され、他のどの暗号アルゴリズムよりも精査を受けてきたとされる暗号化アルゴリズム「AES」に関するものです。Claude Mythos Previewは検証用に構築されたAESの弱いバージョンの解読手法を改良し、攻撃速度を200倍から800倍に向上させました。

当初Claude Mythos Previewは「AESの暗号解読を改良することは不可能だ」と主張して取り組もうとしなかったそうですが、Anthropicの研究者が複数回にわたり「既存の手法を上回るものを見つけることこそが本来の目的だ」「目標は優れた研究者に匹敵するほど高度に知的なモデルを持つことだ」といった「励ましのメッセージ」を送ったところ、洗練された手法を生み出したとのことです。


Anthropicは「念のため申し添えると、これら2つの成果はいずれも現在のシステムに影響を及ぼすものではなく、この結果によって実運用中のソフトウェアが変更を迫られることはない。HAWKはあくまでポスト量子暗号の候補段階であり、実際には導入されておらず、AESは弱いバージョンに対するもので完全版の暗号を破るものではない」と指摘しました。

Anthropicはまた、暗号学のコミュニティがこれまで常に審査の恩恵を受けてきたことに言及し、その審査の一端を大規模言語モデルがになうようになるとも述べました。