日本マイクロソフトは7月27日、「Microsoft 365 Copilot」の最新情報に関する説明会を開催した。
説明会に登壇した、同社 業務執行役員 モダンワークプレイス GTM 本部 本部長の山田恭平氏は冒頭で、日本におけるAI利用の伸び率が世界平均に対して約3倍に達していると説明した。この背景として「AIモデルの能力向上、日本語対応スキルの品質向上、AIエコシステムの広がり、そして複雑で専門的なタスクに対応可能になったこと」を挙げる。
IDCの調査によると、グローバルでは2028年までに13億のAIエージェントが展開されると予測されている。国内においても、日経225構成企業の87%がAIエージェントを何らかの業務で活用しており、その活用企業のうち100%が社内で市民開発したカスタムAIエージェントを自社業務に合わせて運用しているという。
一方、Microsoftが発表した調査「Microsoft 2025 Work Trend Index」によると、82%のリーダーが「今年はAI戦略やオペレーションを見直す重要な年」と捉えており、53%が「生産性を高めるために既存オペレーションを組織レベルで再設計する必要がある」と回答した。また、「Microsoft 2026 Work Trend Index」では、日本の労働者の66%(グローバル:65%)が「今すぐAIに適応しないと取り残される」と危機感を募らせている。
しかし、日本の回答者の30%(グローバル:45%)が「仕事のやり方を変えるより現在の目標を守る方が安全だ」と感じており、AIを用いて仕事を再設計することが会社から評価されていると感じている割合はわずか8%(グローバル:13%)にとどまる。多くの従業員が、業務をAI向けに刷新しても評価につながらないと感じているのが現状だ。
こうした調査結果から、山田氏は「AI活用の本質的な課題はツールの有無ではなく、組織がAIを生かせる設計になっているかどうかにある」と指摘する。同調査では、AI導入の成果を左右する要因のうち「組織要因」が67%を占め、「個人要因(32%)」に対して2倍以上の大きな影響力を持つことが判明している。
同社では、組織がAI活用を成功させるためのロードマップとして「フロンティア組織」への道のりを提示している。フェーズ1「人とアシスタント」では、Copilotを開いて質問し、助言を得る。フェーズ2「人とエージェント」では、エージェントをチームメートとして迎え、プロセス自体をCopilotに任せる。フェーズ3「人が主導、エージェントが実行」では、人間が監督となり、エージェント同士を連携させて自律的に業務を進める。

フロンティア組織への道のり(提供:マイクロソフト)
これらに対応するため、Copilotでは役割に応じた機能を展開している。自然言語でシンプルなタスクをこなす「Copilot Chat」、複数ステップの作業を並列かつ自律的に実行する「Copilot Cowork」、そしてユーザーの業務プロセスを学習し、ウェブブラウザー操作や経費精算などを常時バックグラウンドで自動実行する「Microsoft Scout」だ。
さらに、AIにビジネスの文脈(コンテキスト)を正しく理解させる仕組みとして「Microsoft IQ」を提供している。同サービスは、メールや会議などの文脈を読み取る「Work IQ」、企業内の構造化データ基盤を整備する「Fabric IQ」、適切なデータソースへ自動案内する「Foundry IQ」、そしてウェブ上の公開情報を参照する「Web IQ」の4つのツール群で構成され、ユーザーごとに最適化された回答を導き出す。
説明会では、Copilotが実際の業務プロセスにどう組み込まれるかのデモンストレーションを行った。
例えば、イベントのまとめ記事を作成する業務では、担当者の従来通りの業務フローをもとにCopilot Chatがタスクを自動でリストアップする。さらに、Copilot Chatにプロンプトの作成を依頼し、生成されたプロンプトをCopilot Coworkに入力。「打ち合わせ内容からのリサーチ、レビュー会議の設定、情報収集メモの作成、記事のドラフトと想定問答(FAQ)の作成」といった複数のタスクを一括で依頼すると、Copilot Coworkはこれらを自動でタスク分解し、並列処理で各種ファイルを生成していく。出力結果には、イベントの狙いや目的の確認から、記事の構成案、記事のドラフト、FAQ、レビューの観点までが含まれる。
さらに、Copilot Coworkには専門的な業務手順や複雑な作業ステップを記述した「Skill.md」を組み込むことが可能だ。「Excel」や「Word」で成果物を作成する際にこのスキルを呼び出すことで、ユーザー固有の書式や定型フォーマットに沿ったアウトプットを再現できる。

Cowork、Scoutが組み込まれた業務プロセス(提供:マイクロソフト)
また、日本マイクロソフトが自社の業務にAIを先行導入する「カスタマーゼロ」の取り組みも公開された。AIエージェント「ASK PPSE」は、組織内の技術ナレッジを資産化する目的で開発された。技術営業部門では顧客からの技術的な問い合わせが多く、その都度過去の資料を参照して回答を作成していたため、特定個人への依存度が課題だったという。
ASK PPSEはこの課題を解決するために構築され、過去のQ&A、社内ナレッジ、公式ドキュメント、ベストプラクティスといった信頼性の高い情報を集約している。ユーザーがチャット上で質問すると、集約されたデータベースをもとに最適な回答が出力される。
仮にAIエージェントだけで解決できない複雑な問い合わせが発生した場合は、人間の担当者へ引き継ぐエスカレーションフローが作動する。担当者が対応した回答内容はデータベースへ自動的に蓄積されるため、利用を重ねるごとにナレッジが拡充され、AIエージェントの回答精度が向上する仕組みとなっている。