Geekbench 7が登場、旧スコアとは直接比較できず AI・マルチコア評価を刷新 | 財経新聞

Primate Labsは2026年7月23日、クロスプラットフォーム対応ベンチマークソフトの最新版「Geekbench 7」をリリースした。約3年半ぶりの大規模な刷新となり、測定基準やワークロードが根本から変更されたため、旧バージョンであるGeekbench 6のスコアとは直接比較できない。ハードウェアが変化したのではなく、測定方法が変わったためだ。ハードウェアの購入者やレビュアー、IT担当者は、今後参照するベンチマークスコアがどのバージョンで測定されたものかを確認する必要がある。

■スコアの直接比較が不可能に、新ベースラインを採用

Geekbench 7はWindows、macOS、Linux、Android、iOS向けに提供されており、個人利用は引き続き無料である。通常99ドル(約1万6200円、1ドル=164円換算)のPro版は、8月6日まで20%オフの79ドル(約1万3000円)で販売されている。

Geekbench 7における最も重要な注意点は、Geekbench 6のスコアと直接比較できないことだ。Macworldの比較テストでも確認されたように、同じApple M5搭載MacBook Airであっても、Geekbench 6ではシングルコアスコアが約4,164だったのに対し、Geekbench 7では約3,608となる。AppleInsiderが指摘するように、Geekbenchのスコアは、それを測定したバージョンの枠内でしか意味を持たない。Geekbench 7は処理が高速化されたテストではなく、Geekbench 6とは異なるテストなのである。

スコアが低下するのは、ハードウェアの性能が落ちたからではない。Hardware Bustersの記録によれば、Geekbench 7では基準となるリファレンスマシンが、Geekbench 6のIntel Core i7-12700搭載Dell Precision 3460から、AMD Ryzen 7 7700搭載Lenovo Legionに変更された。Geekbench 7では、この新しいリファレンスマシンの性能を2,500ポイントとしている。したがって、5,000ポイントはリファレンスマシンのちょうど2倍の性能を意味する。

AMD Ryzen 7 7700はCore i7-12700より高性能なため、新しいリファレンスでは絶対的な性能基準が引き上げられている。さらに、AppleInsiderが説明しているように、2026年の利用実態に合わせてデータセットも大型化・複雑化した。このため、同じハードウェアでもGeekbench 7ではGeekbench 6よりスコアが低く出る傾向にある。レビュアーやメディアは新たなベースラインをゼロから確立する必要があり、移行期間中の適切なハードウェア評価では、両方のバージョンを並行して実行する必要がある。

■マルチコア評価の適正化

Geekbench 7では、マルチコアの評価方法が大きく見直された。以前のバージョンでは、実際のアプリケーションがマルチスレッドの恩恵を受けるかどうかにかかわらず、ほぼすべてのサブテストが利用可能な全CPUコアを使って並列実行されていた。Primate Labsは、この設計がデバイスについて有用な情報を示さないままスコアを歪めていたと認めている。

新バージョンでは、モデルとなった実際のアプリケーションがマルチスレッド対応である場合に限り、ワークロードがマルチスレッドモードで実行される。例えば、ウェブブラウザはシングルスレッド、または少数のスレッドを使うプロセスとして動作するため、HTML5ブラウザテストはマルチコアテストから完全に除外された。これにより、実際には多数のコアを利用できないワークロードで、プロセッサがコア数の多さだけを評価されることがなくなる。レイトレーシングや物理シミュレーション、動画エンコードなど、真に並列処理が生きるタスクに優れたプロセッサの強みが、マルチコアスコアにより正確に反映されるようになる。

アナリスト企業Signal65による現行ノートPC向け4プラットフォームの独立テストでは、この変更が競争環境を測定可能な形で変えていることが確認された。Signal65のクロスプラットフォームテストによると、シングルコアでは4つのプラットフォームすべてでGeekbench 6よりGeekbench 7のスコアが低下した。これは新しいベースラインと、より負荷の高いデータセットの両方によるものだ。低下幅は一律ではなく、QualcommのSnapdragon X2 EliteとAppleのM5が約14~15%低下したのに対し、IntelのPanther LakeプロセッサとAMDのRyzen AI 9の低下は約9~10%にとどまった。

一方、マルチコアスコアは異なる結果を示した。Signal65のアナリスト、Ken Addison氏の調査によると、真の並列処理に最適化された12個の高性能コアを持つSnapdragon X2 Eliteは、マルチコアスコアがGeekbench 6の19,764からGeekbench 7の22,871へと約16%上昇した。AMDのRyzen AI 9は約4%上昇し、AppleのM5とIntelのCore Ultra X9はほぼ横ばいだった。Addison氏は、実際には存在しない並列性を評価するのではなく、実際の並列ワークロードに各コアがどの程度貢献するかを評価するようマルチコアテストが再設計された結果だとみている。

■メディア、ゲーム、AIワークロードの刷新

Geekbench 7では、抽象的な計算ストレステストが、2026年の具体的なアプリケーションに結び付いたワークロードに置き換えられた。

CPUテストには、現在のコミュニケーションやコンテンツ制作におけるデバイスの使われ方を反映した3つの新しいメディアワークロードが追加された。「ビデオエンコーダー」テストでは、同じビットレートで高い圧縮効率を持つロイヤリティーフリーのオープン規格「AV1」を使って、画面共有映像を圧縮する。AV1はZoomやTeamsなどのビデオ会議プラットフォームで採用が進められている。「オーディオエンコーダー」テストでは、ボイスレコーダーやポッドキャストアプリを想定してOpusコーデックを使用する。

最も負荷が高い「ビデオデコーダー」ワークロードでは、映像と音声を同時にデコードしながら、OpenAIの音声認識モデル「Whisper」を実行してライブキャプションを生成する。1回のベンチマークで、動画デコードとニューラルネットワークによる推論を組み合わせた負荷を測定するテストである。

また、新しい「ゲーム物理」ワークロードでは、主要な商用ゲームタイトルで採用されているオープンソースのマルチスレッド物理ライブラリ「Jolt Physics」を使用しており、ゲームに関連する計算性能を直接測定できるようになった。写真編集テストには、より複雑な処理が追加された。「フォトライブラリ」ワークロードは、JPEG XL形式とDNG形式にも対応する。

GPUベンチマークでは、従来型のグラフィックスレンダリングの比重を下げ、現在のGPU用途を特徴付けるコンピュートタスクを重視している。機械学習ワークロードには、リアルタイムの顔追跡とビデオフィルターの適用、AIによる画像のアップスケーリング、ビデオ会議用の背景ぼかしが含まれる。それぞれ、ソーシャルメディアのARエフェクト、コンテンツ制作ソフトの超解像機能、バーチャル背景ツールなどの処理をモデル化している。画像編集関連では、RAW画像の処理、LUTを使った動画のカラーグレーディング、パストレーシング、流体シミュレーションも追加された。

■NVIDIA CUDAへの対応

NVIDIA製GPUのユーザーにとって最も実用的な追加要素は、CUDAコンピュートAPIのサポートだ。これまでGeekbenchのGPUベンチマークにはCUDAが含まれていなかったが、今回、OpenCL、Vulkan、Metalと並んでサポート対象となった。

NVIDIA製GPUを利用するプロフェッショナル向けアプリやAIアプリの多くは、OpenCLやVulkanではなくCUDAに依存している。この追加により、GeekbenchのGPUテストは、実際のワークロードにおけるNVIDIAハードウェアの使われ方に、より近いものとなった。Geekbench 6でOpenCLを使ってNVIDIA製GPUを測定していたユーザーは、Geekbench 7でCUDAに切り替えると、スコアが大きく変わる可能性がある。

■バッテリー駆動時のアーキテクチャ間格差

Signal65のテストでは、ノートPC購入者にとって実用上特に重要な結果も明らかになった。バッテリー駆動時におけるArmとx86のアーキテクチャ間の違いが、従来よりも明確にGeekbench 7のスコアに表れたのだ。

Snapdragon X2 EliteとApple M5というArmベースのシステムでは、電源接続時とバッテリー駆動時で性能差がほとんどなく、変動は増減いずれの方向でも1~2%にとどまった。対照的にx86システムでは、IntelのCore Ultra X9がバッテリー駆動時にシングルコア性能を約16%落とし、AMDのRyzen AI 9は約23%低下した。コンセントから離れて頻繁に作業するユーザーにとって、この性能の一貫性の差は、電源接続時のピーク性能以上に重要になる可能性がある。

■今後のハードウェア評価への影響

Geekbenchは長年、異なるプロセッサアーキテクチャを比較できるクロスプラットフォームの標準的なベンチマークとして重視されてきた。Primate Labsが過去に、IntelのBinary Optimization Toolをスコアの信頼性に対する脅威として警告したほどである。Geekbench 7では、マルチコアスコアを得るために、モデルとなる実際のワークロードにも並列処理の根拠が必要になったため、この種のベンチマーク対策によるスコア操作への耐性が高まっている。

新しいマルチコア評価手法、新しいリファレンスプロセッサ、より負荷の高いデータセットが組み合わさることで、Geekbench 7はCPUおよびGPUの競争環境を従来とは大きく異なる形で描き出すことになる。シングルスレッド性能に優れたプロセッサはその優位性を維持する一方、実際の並列性にかかわらず、すべてのワークロードでスレッド数の多さに依存していたプロセッサは、より実態に即したマルチコア評価を受けることになる。真に並列処理が可能なコアを多く持ち、バッテリー駆動時にも安定した性能を発揮するアーキテクチャを備えたArmベースのチップが、新しいスコアリングモデルから最も恩恵を受けるとみられる。

今後、Geekbenchを使用するすべてのハードウェアレビューは、測定に使ったバージョンを明記する必要がある。異なるバージョンのスコアを混在させた比較は、別々のものを比較することになる。2026年7月23日より前に公開されたレビューのGeekbenchスコアに基づいて購入を検討する場合は、その数値がGeekbench 6とGeekbench 7のどちらで測定されたものかを確認する必要がある。

■注目ポイントQ&A ●Geekbench 6とGeekbench 7のスコアは直接比較できますか?

いいえ。Primate Labsは、両バージョンの結果を直接比較すべきではないと明言しています。ワークロード、データセット、マルチコアの評価手法、基準となるリファレンスプロセッサが異なるため、Geekbench 7のスコアは、別のGeekbench 7のスコアとの間でのみ意味のある比較ができます。2026年7月23日より前に公開されたレビューや比較はGeekbench 6の測定値であり、同じハードウェアを新バージョンで測定するとスコアが低くなる場合があります。これはハードウェアが変化したためではなく、ベンチマーク自体が変わったためです。

●Geekbench 7でハードウェアのスコアがGeekbench 6より低くなるのはなぜですか?

評価手法に関する2つの理由があります。第一に、2,500ポイントの基準となるリファレンスプロセッサがIntel Core i7-12700から、より高速なAMD Ryzen 7 7700に変更され、すべてのスコアに対する性能基準が引き上げられました。第二に、2026年のワークロードで扱われる、より大きく複雑なファイルを反映するため、ベンチマーク全体のデータセットが拡張されました。ハードウェアが遅くなったわけではなく、より高速なリファレンスマシンを基準として、より負荷の高いテストで測定されているためです。

●Geekbench 7の新しいマルチコア評価手法で最も恩恵を受けるCPUアーキテクチャは何ですか?

Signal65がQualcomm Snapdragon X2 Elite、Intel Core Ultra X9、AMD Ryzen AI 9、Apple M5の各プラットフォームを比較した初期の独立テストでは、真に並列処理が可能なコアを多く持つチップが最も恩恵を受けることが示されました。Geekbench 7では、モデルとなった実際のアプリケーションがマルチスレッド対応の場合に限り、ワークロードをマルチスレッドモードで実行するためです。12個の高性能コアを持つSnapdragon X2 Eliteは、Geekbench 6からGeekbench 7への移行でマルチコアスコアが約16%上昇しました。一方、Apple M5は大半のサブテストでシングルコア性能の首位を維持しました。

●Geekbench 7はNVIDIAのCUDAベンチマークに対応していますか?

はい。Geekbench 7では、新たにCUDAサポートが追加されました。従来、NVIDIA製GPUのユーザーが利用できたのはOpenCL、Vulkan、またはMac上のMetalでしたが、Geekbench 7ではCUDAもOpenCL、Vulkan、Metalと並ぶ対応APIとなりました。CUDAはNVIDIA製GPUを利用する多くのAIアプリやプロフェッショナル向けアプリで使われているため、それらの用途におけるGPU性能をより適切に反映できます。CUDAで得られるスコアは、Geekbench 6で記録したOpenCLのスコアと大きく異なる可能性があります。

元記事: Geekbench 7 Arrives: Old CPU Scores No Longer Count, AI Workloads Now Measured