Samsung Electronicsのデバイスエクスペリエンス(DX)部門が、Google Cloudの企業向け人工知能(AI)プラットフォーム「Gemini Enterprise」を全世界の従業員を対象に導入する。これは1カ月前のOpenAI「ChatGPT Enterprise」導入発表に続く決定で、Samsung Electronicsがグローバル2大AI企業のプラットフォームを同時に業務環境に適用する異例の動きを見せることになった。
Google Cloudは13日、Samsung Electronicsとの戦略的協力を拡大し、韓国を含むグローバルDX部門の従業員にGemini Enterpriseを提供すると公式発表した。Google Cloudは今回の契約が韓国国内のエンタープライズ向けエージェンティックAI導入事例の中で過去最大規模だと強調した。これに先立ち、OpenAIも先月22日、Samsung Electronicsの韓国国内全従業員とDX部門の全世界の従業員を対象に、ChatGPT Enterpriseおよび開発・業務自動化ツール「Codex」を供給すると発表し、自社最大規模のエンタープライズ契約だと明らかにしていた。
両社のパートナーシップの中核目標は、単純な質疑応答型チャットボットの導入を超え、Samsung Electronicsの従業員誰もが直接AIエージェントを制作し活用できる、全社的なAI大衆化を実現することだ。このため、Samsung Electronics DX部門は業務要件に合わせた二重構造アーキテクチャを導入した。
第一段階は、「Gemini Enterprise App」を対話型コラボレーション空間として提供することだ。従業員は複数の社内システムに分散した資料や知識データをリアルタイムで検索し、総合できるようになる。独立型チャットボットではなく、社内データと業務システムを連結する統合業務インターフェースとして活用する方式だ。
第二段階は、複雑な企業ワークフローを自律的に管理するカスタマイズされたマルチステップAIエージェントを導入することだ。Samsung Electronicsはこれを支えるデータ環境と運営体系を構築していく予定だ。特に開発人材だけでなく、人事、マーケティングなど現場部門の担当者もローコード・ノーコード(Low-code/No-code)方式で、各自の業務に最適化されたカスタムエージェントを直接構築できるよう支援する。例えば、従業員のオンボーディングと教育、社内規定の確認、コンプライアンス点検など、反復的な業務に特化したエージェントを設計できる。開発組織には、多様なAIモデルを活用してカスタムエージェントを設計し、拡張・管理できるフレームワークが提供される。
セキュリティとデータ主権の側面でも強化された措置が適用された。Gemini Enterpriseは、Samsung Electronics DX部門専用のGoogle Cloudテナント(Tenant)環境に直接展開される。これは企業データとAIベースの業務フローを、外部環境と完全に分離された統制領域内で管理するよう設計された構造だ。機密情報の外部流出を遮断し、Samsung Electronicsがデータアクセス権限と自動化ワークフローに対する完全な管理権限を維持できる。
ルース・ポラットGoogle Cloudコリア社長は「エージェンティック時代の真の業務革新は、単純な生産性ツールを超え、深みのある運営インテリジェンスの段階へ進んでこそ可能になる」と述べ、「Gemini Enterpriseは、Samsung Electronicsの従業員が真のエンタープライズAIへと踏み出す出発点であり、組織の多様なニーズに合わせてグローバル規模のビジネス革新を加速する安全な基盤となるだろう」と語った。
今回の契約が業界で注目される理由は、Samsung ElectronicsがGoogleとOpenAIという競争関係にある2大AI企業の代表的な企業向けプラットフォームを同時に導入する構造を整えたことにある。両社製品の具体的な適用業務領域と運営方式は公開されていないが、供給対象が相当部分重なることから、Samsung Electronicsは特定のAI事業者に業務環境全体を依存するのではなく、複数のプラットフォームを並行するマルチベンダー戦略を採ったものと解釈される。
グローバルAI企業が相次いでSamsung Electronicsとの契約規模を強調する背景には、Samsung Electronicsというリファレンスが持つ象徴性が大きく作用している。Samsung Electronicsは韓国を代表する製造・技術企業であり、全世界に事業所を置くグローバル企業として、外資系ソフトウェアベンダーが国内外市場攻略のために優先的に確保しようとする最優先顧客企業に挙げられる。特に企業向けソフトウェア市場では、顧客企業が実際に製品を使用していても、具体的な導入事実や活用事例を外部に公開できないケースが多い。Samsung Electronicsの名前を前面に掲げ、共同で契約を発表できること自体が、ベンダーにとっては後続顧客の確保と市場信頼度向上のための中核資産になるという説明だ。
ある外資系ソフトウェア業界関係者は「Samsung Electronicsは、すべてのベンダーが最優先級のリファレンスサイトとして考慮する企業だ」とし、「実際の顧客であっても活用事例を対外的に知らせることは容易ではないが、共同発表が可能であることは、今後の市場拡張の側面でも意味が大きい」と述べた。これにより、今後の競争の焦点は単純な契約規模を超え、実際の従業員活用率と生産性向上、そして業務用AIエージェントの拡散成果へと移っていく見通しだ。